ラーメンの本質とラーメンの歴史―大和ラーメン学校開設以来17年の積み重ねによるラーメン店店主も知らない課題解決:第二章 40年余り、この業界を見続けた製麺機メーカーの創業者であり、生のエンジニアであり、ラーメン学校の校長という立場から見た ラーメンの本質について、私独自の視点から追求してみたいと思います。

第一章 なぜ、こんなに多くの新規開業店が閉店しているのか?の続きです。

世の中には、有名なラーメンフリーク、ラーメン評論家、ラーメン研究家がいて、毎日ラーメンについて、様々な情報が発信され続けています。
今は、世界中にラーメンについての情報が氾濫し、その情報は日増しに増え続けています。
これらの情報のほとんどは、お客様目線とか、ラーメンを表舞台から取り上げているのがほとんどですが、私の場合は、ラーメン学校の校長という少し違った視点から取り上げてみたいと思います。

私は毎月3箇所(香川本社、東京支店、Singapore)のラーメン学校で生徒さん達に、ラーメン業界での勝ち残り方を教えています。
また、40年余り、この業界を見続けた製麺機メーカーの創業者であり、生粋のエンジニアであり、ラーメン学校の校長という立場から見た、ラーメンの本質について、私独自の視点から追究してみたいと思います。

なぜ、4千年の歴史のある中国の蘭州ラーメンは世界中に広まらずに、高々100年の歴史しかない日本のラーメンが世界中に広まったのか?

私はラーメンだけでなく、食べ物全般についても大変興味があり、常に何か疑問があれば、興味を持って徹底的に追究する癖があります。

私は、蘭州の友人からある時に蘭州ラーメンについての歴史の書籍を貰いました。
その中には、蘭州ラーメンは4千年前の古い遺跡跡から既に料理として存在していた事実が見つかったと記されていました。

私は、蘭州ラーメンに大変興味を持ち、その友人の誘いに乗り、2012年7月に蘭州へ行き、蘭州ラーメンの学校に入り、蘭州ラーメンの製法を学びました。
人口300万人余りの蘭州に1千店あまりある蘭州ラーメン店では、今でも完全な手延べの技法で、店頭で職人達が実演しながら手で引っ張り伸ばし、十分に延び、細くなった麺線を沸騰した大きな茹で釜に投げ込んでいます。
茹で時間は非常に短く、約20秒前後で、茹で上がった麺を1人前ずつ牛肉で作ったスープに入れ、お客様に提供しています。
このスープは基本的に、牛のブロック肉を炊き出して作ったスープで、朝完成した後、塩で味を調え、昼過ぎの営業が終わるまで、ずっと使っています。
蘭州市内にある蘭州ラーメンの店は約1千店で、お客様の最も多い店は1日の来店客数が約5千人も来ていました。

以上の様に蘭州ラーメンは4千年の歴史がありますが、麺作り、スープ作りは昔からの伝統を守り続け、麺作りは全ての職人による手延べで、どの店もやっていることはほとんど同じで、違いが見られません。

中国のラーメンと日本のラーメンの本質的な違い

そして、日清戦争後、中国から日本に渡って来た中国人によって始められた日本のラーメンは、日本の各地でそれぞれその土地の特徴を取り入れたラーメンとして開花しました。それでラーメンは地方ごとに非常にバラエティが豊かになりました。
そして、中国のラーメンと日本のラーメンの決定的な差は、元ダレの有無で、中国のラーメンでは元ダレは一切使いません。

日本のラーメンの元ダレは、日本蕎麦のかえしが変化したもので、スープベースの単調な味をうまみの強い材料を調味料に抽出したもので、ラーメンの味の方向性を明確にする役割です。
蘭州ラーメンのスープの味付けの調味料は、基本的に塩あるいは、塩と香辛料ですが、日本のラーメンの調味料は、塩、醤油、味噌と幅がはるかに広く、複雑です。
そして、中国のラーメンスープの味付けは、朝スープが完成した時に一度に味を付け、それを夕方まで使うのですが、日本の場合は、お客様の注文に合わせ、1杯ずつ、元ダレと香味油でスープの味付けをします。
従って、日本のラーメンの特徴は、元ダレとスープが合わさった瞬間の鮮烈な味を楽しむ食べ物であり、その後の時間経過とともに、刻々と味の変化を楽しめる食べ物でもあります。

日本のラーメンだけがグローバル化に成功した原因は何か?

グローバル化に成功し、世界中に広まっている有名な食べ物は、ハンバーガーとか、ピザを筆頭に、日本食では寿司が既にグローバルフードになっていると言えるでしょう。

なぜ、寿司がグローバルフードになれたかと言えば、寿司がアメリカへ渡り、西海岸でカリフォルニア・ロールができたことが、きっかけではないかと考えています。
もし、寿司が握りずしと海苔の巻き寿司だけで、それ以外のものは寿司とは言えないと言っていれば、グローバル化しなかったのではないかと思います。

同じように、ラーメンも既にグローバル化していると言えるのは、ラーメンとはこんなもので、それ以外はラーメンではないという縛りがないからではないでしょうか。
要するに、伝統をかたくなに守るだけではなく、イノベーションを起こし、何でもありの世界に行った方が世界中に広まり、グローバルフードになり易いのではと思っています。

同じような日本伝統食の麺の中で、うどんとそばがまだグローバル化していないのは、伝統にこだわり過ぎているためではないかと思います。

日本のラーメンの進化の歴史

主に第二次世界大戦後に様々なラーメン文化が日本中に広まりました。
最初の頃、日本ラーメンは現在のかけうどんのようでラーメンどんぶりにたっぷりの熱いスープを張り、茹で立ての麺を入れ、その上にトッピングを施したものでした。

そして、次にスープが少なく、濃いつけ麺(日本蕎麦で言えば、ざるそば、うどんでは、ざるうどんとか、釜揚げうどんのようなつけ麺)が誕生し、さらに、スープのない混ぜ麺(油そば)が誕生しました。
このようにラーメンの世界は、次々と進化を繰り返し、スープ濃度はますます高くなり、強いコクを求める味付けになっています。

以上の様に、日本でラーメンが始まった頃は、昔ながらの中華そばと言われるようなラーメンで、スープは濃くなく、優しい味のラーメンでしたが、時代と共に、徐々に濃く、インパクトのあるラーメンに変わりました。

スープの種類も豚骨、鶏、牛から始まり、魚介が加わり、野菜も加わり、今はフルーツさえも使われるようになり、ベジタリアンのラーメンさえできています。

これからのラーメン文化の進化の方向

今やラーメンの世界は何でもありの世界です。
しかし、本質的な部分からは離れないことが重要です。
幾らイノベーションを起こしても、基本は大切にしなければいけません。
その基本は、本質的なおいしさで、そこから外れると、寿司の世界にたくさん見られるなんちゃって寿司の様になってしまうと思います。

以下でこれからのラーメン文化を牽引する進化の方向性を提示したいと思います。

麺の材料は今まで、小麦中心でしたが、最近はグルテンフリーの影響で、米、他の穀物などが使われるようになりました。今後はさらに豆類他、様々な健康的な新素材が使われる可能性が高まります。

スープ素材も豚骨、鶏ガラ、牛骨から始まり、あらゆる魚介類の材料、野菜類、フルーツ類と幅を広げていますが、ここでも新素材が次々と導入される可能性が高いです。

元ダレは今までは、日本の調味料が中心でしたが、今後は海外の多種多様な調味料が使われるようになります。既に当社では、ベトナムのナンプラーは常時ラーメン学校で使用しています。

香味油も動物油脂、植物由来の油も幅が広がり、最近ではオリーブオイルやチアシードオイルなど、今までに使用したことのない様々な油脂が使われるようになります。

トッピングも同様で、単にチャーシューだけではなく、色々なタンパク質が活用されるようになると思います。調理方法も生もあれば、低温調理、燻製ありで、バラエテイ豊かな調理方法が活用されることでしょう。

盛り付けも、過去のラーメンをはるかに超えた盛り付けが取り入れられるようになり、ラーメンか何か分からないような麺料理も出現する可能性があります。

第三章 ラーメンスープの本質に続きます。

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プレゼンター

藤井 薫(ロッキー藤井)

藤井 薫(ロッキー藤井)

株式会社大和製作所、株式会社讃匠 代表取締役。
令和5年 秋の叙勲にて「旭日単光章」受章。

1948年5月、香川県坂出市生まれ。国立高松工業高等専門学校機械工学科卒業。川崎重工株式会社に入社し、航空機事業部機体設計課に配属。その後、独立し、1975年に大和製作所を創業。

過去48年以上にわたり、麺ビジネスを一筋に研究し麺ビジネスの最前線で繁盛店を指導。麺専門店の繁盛法則について全国各地で公演を行う。小型製麺機はベストセラーとなり、業界トップシェアを誇る。
「麺店の影の指南役」「行列の仕掛け人」として「カンブリア宮殿」「ありえへん∞世界」「スーパーJチャンネル」等、人気TV番組に出演するほか、メディアにも多数取り上げられる。
また、2000年4月にうどん学校、2004年1月にラーメン学校とそば学校を開校し、校長に就任。

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