食品衛生は、保健所からの営業停止だけでなく、お客様の信頼を得るためにも重要で

1.食品衛生

1.1 衛生とお客様に与える影響

飲食店を開店する場合には、食品衛生は避けては通れません。
害虫や害獣が発生していると食中毒の危険性がありますので、最悪の場合、保健所から営業停止を告げられる場合もあります。

もっとも、言われるから綺麗にする、というわけではありません。
汚い店舗を見て、お客様はどう感じるでしょうか?
店舗が汚ければ、当然食材や調理も衛生的にしているか怪しく感じますよね?

  • 本当に食べても平気なのだろうか?
  • お腹を壊さないだろうか?

お客様にそう思われてしまうと、間違いなく集客は悪くなります。

汚くても集客できている店舗がない訳ではありません。ただし、そういう店舗は「安くて」他の店舗よりも美味しいことや、昔からの固定客がついていたりすること、しかも同じ条件でも集客できる場合もあればできない場合もあるような特殊な条件になります。

ここは目指すべきではありません。

また、汚いことと古めかしいことは違います。たとえ古めかしい外観や内装でも手入れが行き届いていれば、お客様は安心して来店することができます。

1.2 店内全般の衛生

外観や入口、テーブル、床、等を綺麗にしておくことは容易に想像できるかと思います。

意外と見られているのは、調理場の中です。

料理をオーダーしている間、お客様は時間がありますので、店内を見渡すこともあります。ふと調理場に目をやった際に、例えば、1日分のチャーシューがカットされて常温で置かれていたり、寸胴が床に直置きにされていたりすると、衛生状態が心配になります。

常に衛生状態を維持することは中々難しいですので、たまにお客様の目線から店内を見渡してみて、不備がないかを確認することは重要です。

1.3 製麺機の衛生

自家製麺をアピールする為に、製麺機を店内でディスプレーしている方は特に気を付けなければいけません。
お客様から見える、ということ以外でも、製麺機を衛生的に取り扱うことは重要です。
製麺機の衛生度が低い場合に、2つの危険があります。1つは雑菌の繁殖です。もう1つは、害虫や害獣の発生です。

まずは、雑菌についてお話します。

麺線の保管中の腐敗防止の為に、うどんの場合は酢、ラーメンの場合はかん水を加えます。ただし、加えたからといって、腐敗しなくなる訳ではありません。つまり、製麺機のロールの隙間やカスリ、ミキサー内部に付着した生地等を放置したり、切り刃の手入れをしなかったりすると、古い生地が腐敗して製麺中に新しい生地に紛れ込むことになります。

腐敗した生地が紛れ込んでいると、熟成中に新しい生地全てが腐敗することになりかねません。

生地がだれるというだけではなく、最悪食中毒にも繋がります。

また、かん水を継ぎ足しで作り置きすることもやめた方がよいです。一般的な菌は、かん水の強アルカリ性で死にますが、好アルカリ菌というものがいて、かん水の中でも増殖する場合があります。

稀な事例ですが、衛生的に製麺しているにもかかわらず生地がだれるという相談を受けることがあります。聞き取りをして、かん水を作り置きしているということから、かん水の容器を新しいものにして作り直した上で製麺してもらうと、生地のだれがなくなりました。

次に、害虫や害獣のお話です。

菌に関しては、目で見えないことや、実際には、濡らさない限り粉ものは菌が生えにくいことから、影響を感じにくいです。
害虫や害獣は目で見えること、乾燥してようが濡れてようが食物に寄って来ることから、製麺機周辺だけではなく、店舗全体に見える形で影響がでる為、付着した生地等を清掃して取り除くという手段しかありません。

また、害獣はネズミ、害虫はゴキブリが外から侵入してきますが、もう1つ気を付けなければいけないものもあります。

粉特有の害虫として、シバンムシというものがいます。外観としては、テントウムシを小さくして茶~黒くしたような虫です。
シバンムシは、実は小麦粉の中に元々入っている場合があります。小麦粉は農作物の為、虫の卵や幼虫を完全に取り除くことは不可能です。その為、製造工程中に殺卵工程があります。この殺卵工程が不十分だと、保管中の小麦粉の中で虫が発生することになります。
外からの侵入もありますが、シバンムシが最近多いなと感じたら、一度粉メーカーに問い合わせてみた方がいいかもしれません。

2.汚れを科学的に考える

2.1 汚れる箇所

製麺機の中で、生地が残る箇所がいくつかあります。
一番はミキサーの中です。他には、ロールの隙間、カスリ、押さえロール、等、生地に負荷をかけた際に絞り出される若干の水分でべたつくことで各所に付着します。
また、ラーメン製麺時のロール表面の光沢が鈍くなってきていることも、ある意味では汚れになります。

2.2 汚れを科学的に考える

生地の汚れというのは、小麦粉の汚れです。つまり、タンパク質とデンプンの汚れです。
ラーメンの場合、かん水を加えますが、かん水を加えた時に独特の臭いがしますよね?
あの臭いは、タンパク質がかん水の強アルカリ性で溶けている臭いなのです。
つまり、タンパク質の汚れには、かん水を使うことで溶かして落とすことができるということなのです。

デンプンの場合も同様で、強アルカリ性でデンプンはα化します。α化すると糊になり、その際に水があると水に溶けます。
ミキサーは使用後にすぐに水を含ませたスポンジを入れて稼働させると、比較的簡単に汚れは取れますが、使用後に何らかの原因でしばらく放置してしまうと、上記方法でも汚れが取れにくいですよね。この時に、水に少しかん水を溶かしておくことで、タンパク質もデンプンも水に溶かしこんで簡単に汚れを取ることができるようになります。

かん水を使っていませんという場合には、重曹を溶かした水を一度沸騰させてから使うとよいでしょう。重曹は弱アルカリ性ですが、加熱することで、強アルカリ性の物質に変化します。

ミキサーだけではなく、生地が付着しているところを掃除する際に全般的に使える方法です。
水だけではなく、かん水を溶かして使用するというだけです。

次にロール表面の光沢が鈍くなっていることです。

これは、何の汚れだと思いますか?

ヒントは、ラーメン製麺時に発生するということです。また、この状態になると、ミキシング後の生地を投入している時にロール表面が滑って、うまく生地が引き込まれなくなるようになります。

答えは、水垢です。水道のシンクが白っぽくなるものと原理的には同じです。つまり、多量の金属成分を含んだかん水を入れた生地を日々ロールに通すことで、かん水の金属成分がロール表面をコーティングしてしまうのです。
ロールは、生地を引き込まないといけませんので、鏡面加工をしていません。切削加工の為、表面に小さな溝があります。
この小さな溝をかん水の金属成分が埋めることで、表面がつるつるで滑るようになり、完全に均一な膜ではない為、光沢が鈍く見えるようになります。
金属汚れですので、酸性のクエン酸を溶かした水で拭くことで簡単に除去することができます。なお、酸性で金属汚れが溶けるといっても、クエン酸では表面の数nmコーティングされた状態のものを除去するくらいしか能力がありませんので、ロール自体を溶かすようなことにはなりません。

当社のメンテナンス部でも、以前は同様の滑るようになったロールを再加工として削っておりましたが、これにはロールも外す必要があり、半日以上かかっていました。

クエン酸で拭くことを導入してからは、外す必要もない為、10分程で簡単に処置することができるようになりました。そもそも、ロールを外して当社に引き上げる必要がない為、お客様店舗でそのまま処置することができます。

かん水、クエン酸、いずれを使用する場合でも、1点だけ注意事項があります。

本来の使用環境とは全く異なるpHになる為、必ず掃除後は水拭きをして、かん水、クエン酸が残っていない状態にしなければいけません。
もし、かん水で掃除した後に十分水拭きをしなかった場合には、うどんが黄色くなってラーメンのような臭いになってしまいます。

2.3 応用

生地やかん水の汚れについてお話してきました。
アルカリ性でタンパク質を溶かし、酸性で金属を溶かします。
アルカリ性では、油を溶かす(石鹸にする)作用もありますので、調理場の油汚れにも応用することができます。
かん水は身近にあるアルカリ性のものの中では、最もアルカリが強いです。濃度次第では、清掃業者が使う業務用のアルカリ洗浄液に匹敵する程の強さがあります。

掃除をする場合には、まずは汚れの種類を見極めることが重要です。そして、汚れを溶かすものを使うことで効率的に汚れを落とすことができるようになります。

3.まとめ

当社の製麺機をご愛用頂いているお客様には、様々な方がいらっしゃいます。
まるで子供のように大事に扱って頂き、きちんと手入れされているお客様がいらっしゃる一方で、残念ながらほとんど手入れをされず、壊れて修理を頻繁に依頼されるお客様もいらっしゃいます。

当社の機械は、大事に扱って頂ければ20年経っても30年経っても現役で働き続けます。

普段忙しくお店で動き回られているお客様にとって、製麺機の手入れが負担となっていることは、大変心苦しく思います。
今後も製麺機を進化させ続けるとともに、このような清掃方法の改善についても研究を進めてまいります。

皆さまのご清栄をお祈り申し上げます。

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プレゼンター

藤井 薫(ロッキー藤井)

藤井 薫(ロッキー藤井)

株式会社大和製作所、株式会社讃匠 代表取締役。
令和5年 秋の叙勲にて「旭日単光章」受章。

1948年5月、香川県坂出市生まれ。国立高松工業高等専門学校機械工学科卒業。川崎重工株式会社に入社し、航空機事業部機体設計課に配属。その後、独立し、1975年に大和製作所を創業。

過去48年以上にわたり、麺ビジネスを一筋に研究し麺ビジネスの最前線で繁盛店を指導。麺専門店の繁盛法則について全国各地で公演を行う。小型製麺機はベストセラーとなり、業界トップシェアを誇る。
「麺店の影の指南役」「行列の仕掛け人」として「カンブリア宮殿」「ありえへん∞世界」「スーパーJチャンネル」等、人気TV番組に出演するほか、メディアにも多数取り上げられる。
また、2000年4月にうどん学校、2004年1月にラーメン学校とそば学校を開校し、校長に就任。

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