製麺機の中古を扱う当たっての注意点について 車を買うのと同じく、出来る限り安く済ませたい。そんな想いをラーメン屋の経営者なら誰しもが持つものです。 今回は中古製麺機のメリット・デメリットを考えてみようと思います。

製麺機を購入して、自家製麺に挑戦したい。オリジナルの麺でオリジナルのメニューを提供したい。お土産用の麺も販売したい。ラーメン店、うどん店を経営する人が一度は思うことだと思います。製麺機を導入した方が、1食当たりのコストも随分と削減可能です。しかし、実際に導入しようと思うと機能的に良い製麺機は値段が貼るものが多い。車を買うのと同じく、できる限り安く済ませたい。そんな想いをラーメン屋の経営者なら誰しもが持つものです。今回は中古製麺機のメリット・デメリットを考えてみようと思います。

※本記事では、オークションや転売などで購入したメーカー保証の無い製麺機を中古製麺機として記載しています。

1. 中古で製麺機を購入するリスク

(1)中古はメンテナンスや部品供給が受けられない。

購入してから初めて知るユーザーも多いと思いますが、中古を購入しても機械部品供給をメーカーから受けられる可能性は極めて低いと言っていいでしょう。メンテナンスサービスも受けられる事はまず出来ないと思って良いでしょう。自動車と同じ感覚で中古を購入して「悪い部分だけ直せばいい」と考える方が多いようですが、メーカーからすれば機械の状況を改めて全て把握して「絶対に大丈夫。安全」と言えるようにしなければならないと法律(製造物責任法)で決まっています。ですので部品だけ渡して「あとはよろしくおねがいします。」とは言えないのです。

(2)中古は改造をされている可能性もある。

上述しておりますが、中古機械はメンテナンス状況やこれまでのユーザの使用状況が一切分かりません。分からないということは万全の状態でない可能性が高いです。また、素人の安易な考えでおかしな改造を施されている可能性も考えられます。そうなると怪我や事故のリスクが高くなります。機械メーカーが最も大切にするのは「お客様の安全」です。安全でない機械を動かすことはお勧めできません。

(3)中古は思ったほど安くない。

基本的に中古の機械は安い印象があると思います。しかし、ほとんどの場合は新品の機械と中古の金額はそんなに変わらない事が多いです。なぜかと言うと、中古の機械は市場にそんなに出回っていません。ですので売り手としても極力新品に近い金額での販売を検討します。半額近く安ければかなりお得ですが、そんな事はまずあり得ません。メーカーによっては新品やオーバーホールを購入した方がお得です。メーカーのノウハウや資料を無料で提供してくれる会社もありますので、値段が変わらない場合はオーバーホール品を待って見て下さい。ただし、人気の機械は1年待ちなんて事もありますのでご注意ください。

(4)製麺機の法定償却・耐用年数は10年。

基本的に高価な製麺機はメンテナンスさえしていれば20年近くもちます。手入れをしていれば20年近くもつものを、経緯不明のものを購入すれば、購入後する直ぐに壊れるリスクを高めるだけです。また新品だとリースでの導入も可能ですが、中古だとリースは出来きません。中古を探す場合は、メーカー保証が付いている中古にしましょう。その場合は分割支払いが適用できることもあります。

(5)使用方法や安全性の事前説明、取扱説明書が無い。

製麺機は、「お客様の安全」のために、様々な安全装置を備え付けています。しかし、どれだけ多くの安全装置があっても、中古機は正規購入に比べて、事前説明が不十分なため、安全装置で守られている箇所、使用者が気をつける箇所が分からないまま使い続けているケースがあります。中古の場合は、メーカーによる事前説明が無く、取扱説明書も紛失しているケースが多いため、製麺機の安全性について十分に理解しないまま使い続けることになり、非常に危険です。

2. 事例:中古製麺機で起こってしまった事故

古い中古製麺機による手の巻き込み事故

平成15年に作られた製麺機を中古購入した方のケースです。製麺機でうどんを作っているときに、生地が圧延ロールに吸い込まれたため、とっさに生地を手にとって引っ張ろうとしました。圧延ロールで挟み込まれている生地に手を突っ込んだため、自身の手も圧延ロールに挟み込まれ、指先が潰れてしまったということです。現在は、この製麺機の圧延ロールには手が入らないような仕組みになっていますが、法定償却・耐用年数を超えた古い製麺機でであったため、安全性の仕組みが十分ではありませんでした。

このケースでは、

  • 安全装置が十分でない古い製麺機を導入してしまった
  • 中古機のため、製麺機の安全装置などの情報が得られていなかった
  • 使用者が製麺機の安全性について十分に理解できていなかった

といった事故要因があげられます。

同様の事故は、「安全装置を外した改造機を購入した」というケースでも起こっています。

メーカー保証の無い中古製麺機を導入する場合、価格の安さと引き換えに、このような安全面での事故のリスクが高まると考えてよいでしょう。

3. もし仮に中古を買ってしまった場合

もし相場的に安い製麺機を見つけてしまい、先に中古の製麺機を買ってしまった場合はメーカーに相談してメンテナンスやオーバーホールを受ける事をお勧めします。また製麺機メーカーが主催する学校などに参加して事情を説明しましょう。製麺機を事前学習なしに扱うことは、自動車の無免許運転に限りなく近い行為だと認識した方が良いでしょう。最悪の場合、大事故にも繋がります。さらに有名企業が主催する麺学校に参加すれば、自家製麺のノウハウを教えてもらう事ができるでしょう。経営環境は皆それぞれ違います。データを持っている企業からトータル的に経営がプラスになる事を教えてもらいましょう。

4. それでも中古を検討する場合

どのメーカーもオーバーホール品は若干安いので、どの企業の機械もかなり人気です。そのため、市場に出るとすぐに売り切れる事が多いです。また、市場に出る前にメーカーの営業担当者が過去に中古機のお問合せのあった方に紹介することもあるため、まずは各メーカーに相談してみても良いでしょう。

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プレゼンター

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藤井 薫(ロッキー藤井)

株式会社大和製作所、株式会社讃匠 代表取締役。
令和5年 秋の叙勲にて「旭日単光章」受章。

1948年5月、香川県坂出市生まれ。国立高松工業高等専門学校機械工学科卒業。川崎重工株式会社に入社し、航空機事業部機体設計課に配属。その後、独立し、1975年に大和製作所を創業。

過去48年以上にわたり、麺ビジネスを一筋に研究し麺ビジネスの最前線で繁盛店を指導。麺専門店の繁盛法則について全国各地で公演を行う。小型製麺機はベストセラーとなり、業界トップシェアを誇る。
「麺店の影の指南役」「行列の仕掛け人」として「カンブリア宮殿」「ありえへん∞世界」「スーパーJチャンネル」等、人気TV番組に出演するほか、メディアにも多数取り上げられる。
また、2000年4月にうどん学校、2004年1月にラーメン学校とそば学校を開校し、校長に就任。

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