進む自家製麺へのシフト―自家製麺はまだ始めるな!始めてから分かったのでは遅い:第一章

進む自家製麺へのシフト もし、単にうどんそば、ラーメン店を始めるのであれば、麺は自分で作らないでも製麺業から生めんとか茹で麺、冷凍麺を使うという選択肢がいくらでもある。

うどんそば、ラーメン店は何故製麺機を使うのか。もし、単にうどんそば、ラーメン店を始めるのであれば、麺は自分で作らないでも製麺業から生麺とか茹で麺、あるいは冷凍麺を使うという選択肢が幾らでもある。

讃岐うどんの本場香川県も、今から数十年前の私が小学校の頃はうどん店では自家製麺をしていなかった。今から思えば、信じられないようなことだが、うどん店は製麺業者が配達して持って来た茹で麺を温めて出汁をかけて出すのが仕事だった。

それから第1次さぬきうどんブームで手打ちでの自家製麺が盛んになり、手打ちでの自家製麺が浸透し、さらに第2次さぬきうどんブームが起き、手打ちでは麺作りの限界を感じる様になり、手打ちが手打ち式製麺機に置き換わっていったのだ。

そして、第3次讃岐うどんブームでは、香川県には最盛時には約900軒以上のうどん店があったが、ほとんど全ての店舗が自家製麺で、自店で麺を作り、ほとんどの店舗では手打ち式製麺機を使っている。一部の店舗ではまだ手打ちで麺を作っているが、その場合でも練りから全てを手作業という店はほとんどない。この様にさぬきうどんの本場香川県では、現在ほとんどのさぬきうどんの店舗が手打ち式製麺機のお世話になり、自家製麺を行っていると言える。

今から30年以上前に東京の立ち食いそば店に異変が起きる。それまで立ち食いそば店は、製麺業が持って来た茹で延びした「茹で麺」を温めて提供していた。だが「小諸そば」という、いわゆる高級な立ち食い店舗が出現して、生麺を店内で茹でて提供するのが、爆発的に広まる。すると、東京中の立ち食い店が生麺を店内で茹でる、いわゆる茹で立てを提供する店ばかりになったのだ。

そばの場合は以前から三立てと言われており、「挽き立て、打ち立て、茹でたて」が最高においしいとされている。「挽き立て」、「打ち立て」はできないけれども「茹でたて」を実行したのだが、これがブームになり、瞬く間に東京中に店舗網を張り巡らせた。すると、今まで茹で麺で営業していた立ち食いのそばうどん店も、全て生麺の茹でたてに変わってしまった。この様に立ち食いそば店でさえもこの有り様。

ラーメン店もしかり、30数年前よりラーメンブームになり、最初はスープの競争であった。が、最近ではスープの競争はほぼ一巡し、独特な麺質の競争になり、現在では自家製麺が当たり前になって来ている。さらに、自家製麺している場合でも自家製麺をアピールするために、製麺機を堂々と店内とか店前にデイスプレーするのが目立っている

以上の様に、ほんの30年間に我々うどんそば、ラーメン店業界を取り巻く環境は大きく進化を遂げ、さらにその進化が加速している。一度、おいしい物を口にした消費者は元へ戻れない。我々が消費者の食味のレベルを上げ、消費者が慣れてしまうとそれが業界のスタンダードになり、そのスタンダードに追随できない業者は当然、世の中の流れから取り残される。

うどんそば、ラーメンの様に麺類は鮮度が命だ。そばの三たての様にできたてが最高においしい。特にそばは最高のそば粉を使った、挽き立て、打ち立て、茹で立てには勝てない。うどんもやはり、打ち立て、茹で立てが最高で、ラーメンも当然、茹で立てだ。

以上の様に自家製麺がうどん、そば、ラーメンとも今後は主流になって来ると想定されるが、「なぜ自家製麺でなければならないのか」「製麺業から生麺を買って来て、店内で茹でるのでは不足なのか」を専門家の観点から述べると次の問題点が見えて来る。

うどんの場合

加水量の多いおいしいうどんほど、麺線にカットして保管するのが、大変難しい。麺線から水分が逃げて麺線同士が付着するので、それを防ぐためにたくさんの打ち粉(でんぷん)を使ったり、あるいは初めから付着しない様に加水量を少なくして製麺を行う。この様にすれば、せっかくの多加水の麺質が劣化したり、多加水でないので、おいしい麺にならなかったりする。従って、最高においしい麺を作ろうとすれば、店舗で麺打ちをするのが一番大切になっている。

そばの場合

上記で述べた通り、立ち食いそばでさえ、30年以上前から生麺を店内で茹でて提供するのが業界のスタンダードになった。そうすれば、当然今後は立ち食いでも店内で製麺するのが業界のスタンダードになることが想定される。

誰かが先に実行して成功すると、消費者がその味をスタンダードにしてしまうので、当然その方向になって来る。従って、一般的なそば店の場合はさらにレベルの高い麺質の追及が当然重要になり、自家製麺とか手打ち云々ではなく、本当においしい麺が提供できているかどうかが生き残れる条件になってくる。

ラーメンの場合

今からラーメン専門店を開く場合、ラーメン店の成功、不成功は行列ができるか、できないかで決定すると言われている。そうなってくると、スープだけを幾ら研究しても、スープだけに頼っていては限界があり、麺質も重要な要素になる。

これもうどん同様に、製麺業から提供される麺の限界がある。製麺業は麺の製造販売が仕事であるので、どうしても日持ちとコストが重要な要素だ。ラーメン店で重要とするおいしさ、茹で延びの遅さ、量目、添加剤を入れない等々については中々理解してもらえない。

第二章 製麺機についての知識不足が招く落とし穴!~選定に失敗した人々の悲劇~に続きます。

プレゼンター

藤井 薫(ロッキー藤井)

藤井 薫(ロッキー藤井)

株式会社大和製作所、株式会社讃匠 代表取締役。
令和5年 秋の叙勲にて「旭日単光章」受章。

1948年5月、香川県坂出市生まれ。国立高松工業高等専門学校機械工学科卒業。川崎重工株式会社に入社し、航空機事業部機体設計課に配属。その後、独立し、1975年に大和製作所を創業。

過去48年以上にわたり、麺ビジネスを一筋に研究し麺ビジネスの最前線で繁盛店を指導。麺専門店の繁盛法則について全国各地で公演を行う。小型製麺機はベストセラーとなり、業界トップシェアを誇る。
「麺店の影の指南役」「行列の仕掛け人」として「カンブリア宮殿」「ありえへん∞世界」「スーパーJチャンネル」等、人気TV番組に出演するほか、メディアにも多数取り上げられる。
また、2000年4月にうどん学校、2004年1月にラーメン学校とそば学校を開校し、校長に就任。

関連記事

新着記事