この記事は2024年6月24日のロッキー藤井の情熱メルマガで配信された内容を一部修正して公開しています。

はじめに

こちらの記事では、麺ビジネスを成長させるにはオーナーの成長が必要不可欠な理由をお話しいたしました。

しかし、ビジネスオーナーは、どのくらいの成長を目指す必要があるのでしょうか?

成長には段階があり、必要なレベルは異なります。

ビジネス・オーナーは、お店の成長段階に合わせて成長しなければ、麺ビジネスとしての成長はできません。

そして、成長段階によってビジネス・オーナーに求められる仕事はまったく変わってきます。

麺ビジネスの経営者の成長の階段

経営者の成長は、ビジネスの成長段階によって重要な内容はことなります。

しかし、どの成長段階でも全然変わらない重要項目があります。

それは、次の3つです。

  1. 売上の確保
  2. 必要な資金の確保
  3. 人材の確保

そして、ビジネス・オーナーは、すべての最終的な責任から、常に逃れることが出来ないのです。

ビジネスにおける、すべての業務が、最終的にビジネス・オーナーの仕事といっても過言ではありません。

ビジネスのステージによってビジネス・オーナーの役割も変わりますが、これは蛇が脱皮したり、蝶が変態するのと同じように、常に次のステージへの移行が欠かせないのです。

そして、ビジネス・オーナーが重要視する業務内容によって、そのビジネスがどの位置にいるかが分かります。

今回は、会社の規模が「創業期」「小規模の場合」「中規模の場合」「大規模の場合」で、それぞれの場合の経営者のあり方について説明していきます。

① 創業期のあり方

文字通り、がむしゃらに働く個人経営の時代です。

ここで重要なことは、ビジネスの目的の明確化です。

創業期は、まだ売上も小さい、あるいはほとんど無く、経営者自らが夜も寝ない様にして、がむしゃらに自ら身体を動かして働いていかなければならない時期です。

この時期は事業として成立するかどうかも不透明で、企業ではなく、個人経営の時代です。

私自身も創業期は、年中無休365日、寝ない様にして働いていました。

子どもたちの授業参観等もすべて家内任せで、一切出たことはなく、子どもたちと一緒に遊んだ様な記憶もほとんどありません。

そして、徐々に従業員が増えていきますが、まだまだ経営者がオールマイテイに一人何役もこなす時代が続きます。

経営者自身が営業をし、働き続け、資金調達すべてを行わなければなりません。

このような時期は、ビジネス・オーナーがある程度若く、体力がみなぎっていないと出来ないのです。

この段階では、社員たちの教育、業務を仕組み化することは、ほぼ不可能です。

今、振り返ってみると、創業期に行ったことで、、当社がこの業界で生き残ることが出来た原因の1つになったことがあります。

それは、事業の目的を明確にしたことです。

私の場合は、香川県という地の利を生かし、小型製麺機市場に参入したことです。

さらに、小型製麺機市場でトップになると宣言したことでした。

これで、創業当時の当社の目的が明確になったのです。

これは、創業5年以内のことでした。

売上規模は1億円に届かない程度です。

極小規模の企業化 ⇒ 個人経営から徐々に企業経営 ⇒ 使命の明確化

創業当初、私は自分の専門分野を活かせば、十分にやっていけると思って起業しました。

ところが、実際のビジネスでは、仕事を獲得する事の難しさを、嫌というほど実感させられたのです。

当然、マーケテイングとか営業の知識はまったく無かったので、起業してからは失敗しながらの学びでした。

さらに、経理、財務、総務等のことも、まったく分からず、最初は家内が家庭の家計簿の延長線上で経理処理を行なっていました。

すべてが手探り状態で、そのうち、社員が徐々に増え始め、少しづつですが、会社としての初期の状態が始まります。

この時代もビジネス・オーナーは年中無休でがむしゃらな働きの連続です。

私はこの時代、年齢が30歳を超えた頃で、子供が、2人いました。

そして、常に資金繰りの心配をしながらの経営でした。

一方で製麺機の販売は、南九州から始めていました。

九州一円を新しい営業員に渡し、次に関西地区の販売を同じように行ない、新しい営業員に任せました。

創業10年後には、関東圏の営業を始めていたのです。

そして、少しづつではありますが、組織の形が出来始めたのがこの頃です。

これを麺ビジネスに当てはめれば、夜も寝ない様にして懸命に働いた結果、ビジネスとしての目途が付き始め、お客さまの数も増え、従業員の数も増え、地域にも繁盛店として、認知され始めた頃です。

しかし、まだまだ、気を抜けない状態でした。

オーナー自身が中心になり、働き続けて、徐々に部下が成長している状態です。

ここで非常に重要なことは、品質は絶対、サービス・レベル、クリンリネスも絶対ということです。

あらゆることに油断せず、絶対に力を抜かないことです。

この頃に現れる誘惑が、多店舗展開への野望です。

多くのビジネス・オーナーが、まだ十分な利益が出ていない段階なのに、2号店、3号店と出店して失敗してしまう事例があります。

ここで、重要なことは、売上ではなく、利益が一番重要なテーマであるということです。

少し繁盛すると、ビジネス・オーナーは、多店舗展開の誘惑に負けてしまい、人が育っていないのに、多店舗展開を目指す人がいます。

多店舗展開よりも重要なことは、1店舗当たりの利益です。

店舗展開を目指すには、1店舗当たりの利益が、最低200万円を超えることをお勧めします。

麺ビジネスの場合は、この時代の売上は1億円未満です。

② 小規模経営へ

今でこそ、当社の年中無休365日のメンテナンスは当たり前になりましたが、始めるのは簡単ではなかったのです。

約30年前に年中無休365日のメンテナンスを始める前、当社の社員数は、30名程度でした。

その頃、私は会社の電話を枕元に置き、朝早くからお客さまから、修理の依頼があれば、朝5時からでも車に修理道具を積み、メンテナンスに走っていました。

価値観、使命、ビジョン、目的、戦略の明確化による社内文化の構築

当社の取引先のお客さまに、その頃に日の出の勢いで伸びていたセブンイレブンの使命は「生業支援会社である」と教えられました。

それでは、当社の使命は何だろうかと深く考えた結果、当社は製麺機の製造販売会社ではなく、当社の本当の使命は麺ビジネス繁盛支援会社でなければいけないと気付いたのです。

そして、そのことを社内で、みんなを集めて言い続けていると、最初は、社長は一体、何を言い出したのだろうと、言うような目で、私を見つめていました。

そして、これを言い続けていると、私の中に1つの疑問が浮かんだのです。

当社の使命が麺ビジネス支援会社であれば、土日、祭日に忙しい麺ビジネスのお客さまへのメンテナンスは土日、祭日こそ重要だと気付いたのです。

そして、年中無休365日のメンテナンスを社員全員に呼び掛けました。

しかし、最初は社員全員が反対しました。

反対するだけではなく、何人かは、会社を去っていってしまったのです。

そのような犠牲をともないましたが、残ってくれた社員を何とか説得して、ようやく、年中無休365日のメンテナンスが産声を上げました。

すると、当社に変化が現れ始めました。

日曜日に困り果てて電話をかけてきたお客さまのところに、当社のメンテナンスが訪問し、機械が修理出来ると、下への置かぬおもてなしを受け、訪問したメンテナンス担当者も、当社が始めたことは、お客さまの助けになる素晴らしいことだと、理解してくれたのです。

そして、社内全体が熱心にメンテナンスに取り組んでくれるようになったのです。

当社はそれまで小型製麺機市場でずっと国内2位だったのですが、年中無休365日のメンテナンスを始めた結果、国内トップシェアになることが出来たのです。

このことは、社内にカスタマー・サクセスの文化を根付かせてくれたと思います。

この時、同時に始めたのが、うどん学校でした。

その後、ラーメン学校、蕎麦学校を始めたのも、全て、麺ビジネス繁盛支援会社が基礎になっています。

もし、この使命を明確にしていなかったら、あるいは明確にした後、しつこく社内で言い続けていなかったら、今の当社は無かったことでしょう。

このことを通じて、私は卓越したサービスを企業文化にすることは、時間がかかり、簡単ではないことを理解しています。

この状況を打破するには自分で売上をいち早くつくり、人材を自ら選んで採用し、ひたすら働き続けるしかないのです。

それが、この小規模段階の経営者、社長のあり方なのです。

しかし、私が企業してから、現在に至るまでの過去を振り返ってみると、一緒に苦労を共にして、ついてきてくれているスタッフ達にも、「一緒にやって良かった」「多くの人達の役に立ち、業界を変える事、引いては日本を良くする、世界を良くするお手伝いが出来た」と、言って貰える事ではないかと思っています。

小規模の段階では、一生懸命に働いて、売上をのばすことだけを考えましょう。

当社の場合、この規模は社員数、30名~40名で、売上規模は10億円未満でした。

麺ビジネスの場合は、この時代の売上は2億円前後です。

この時点までは、麺ビジネスのオーナーは、店舗でも先頭に立ち、ずっと店舗に入りっぱなしが多いのが現状です。

しかし、これから更に事業を拡大しようとすれば、現場の実務をいかに次の部下に任せられるかが課題です。

そして、ビジネス・オーナ―は徐々に現場を離れ、本来の経営者としてなすべきことに集中しなければいけなくなります。

③ 中規模の時の在り方

では、次に規模が中規模になってきたときのビジネス・オーナーのあり方を見ていきましょう。

麺ビジネスの場合は、小規模から脱却し、だいたい売上が2億円以上になると中規模と言われています。

その頃からは、小規模の頃と比べて、ビジネス・オーナーの仕事も変化していきます。

現場技術の習熟から、徐々にマネッジメントの学びが重要な要素になってきます。

つまり、ここで経営者としての脱皮が必要になります。

しかし、多くの経営者は脱皮できずに、この規模のままで一生を終える方が多いのが事実です。

次のステージへ、経営者としての新たな境地へ脱皮する

まだ完全に業務の負担がなくなりはしませんが、人材教育の成果も出てきて、幹部候補の人材も現れる時期になります。

そして、やっとマネジメントについて学ぶ時間も取れるようになります。

そのような頃になると、経理担当や採用担当を任せることができる部下たちが存在するでしょう。

そして、この頃の経営者の重要な仕事の1つが日々の経営状況を数値で理解することです。

ビジネス・オーナーは、ジェット旅客機の機長のような仕事になり、機長は常に重要な4つの計器のチェックを怠らないのです。

1つ目は機体速度、2つ目は機体の向き、3つ目は機体高度、4つ目は残燃料が重要な指標です。

麺ビジネスであれば、日々の売上の変化、日々の人件費、仕入費用、毎月の利益の増減等々です。

そして、常にデータでの経営がビジネス・オーナーの重要な仕事のひとつになります。

さらに、拡大再生産に向けての幹部の育成、社員教育、商品開発、品質レベルの強化、
サービス・レベルの強化、生産性向上、キャッシュフロー経営と片時の油断も出来ないのです。

そして、永く生き残るために避けられないのが、高い利益率とキャッシュの充実です。

⑤ 大規模の時の在り方
50年企業、100年企業を目指して

業種にもよりますが、麺ビジネスの場合は、売上10億円以上になると大規模といえるでしょう。

大規模になると、どのようなことが変化してくると思いますか。

経営者、社長のあり方はどのように変化していると思いますか。

先程の中規模までは、経営者、社長は自ら売上UPに貢献しています。

部下ができても100%任せるのではなく、自分自身も営業をしたり、採用をしたりしています。

しかし、大規模になると、いわゆる「監督」のような立ち位置に変化します。

右腕となる部下たちに仕事を任せられるようになります。

そして、コロナの時代も落ち着き、AI時代になり、ますます重要になるテーマは、デジタル化への取り組みです。

顧客ロイヤルテイの管理、メニュー管理、日々の売上管理、経営体質の管理、生産性の管理、キャッシュフロー経営の管理、従業員ロイヤルテイの管理等々、新しいテーマが次々と増えてきます。

この頃の経営者は、次の世代に向けて、創業のDNA、自身のDNAを残す仕事にも取り組みます。

要するに、次世代を担う経営者の育成です。

これは時間のかかる、経営者にとっては永遠の課題です。

さいごに

上記で、経営者、社長の規模によってのあり方の変化は説明しました。

経営の基本中の基本は、「利益を出して会社をつぶさない」ということです。

常に「利益が出るか」を考える、冷静さを忘れないことが必要です。

経営者、社長に必要な事柄とは

社長という仕事は決断の連続です。

あらゆる課題が毎日押し寄せてきます。

当社でも毎日、販売であったり、開発であったり、ありとあらゆる、さまざまな課題が波のように、押し寄せてきます。

そして、急にコロナのような災害に見舞われたり、大地震、津波が起きたり、想定外のことが次々と押し寄せます。

経営者には、さまざまな課題に対して、決断力が求められます。

それを一つ一つ処理して決断していく必要があります。

「正確でスピードのある決断力」が経営者にとって必要なのではないでしょうか。

そのような乱の時代において、経営者にとって重要なことは、それらの事象を決して災いと捉えないことです。

そうではなく、むしろ、変われるチャンスととらえることで、次の時代が大きく変化します。 

したがって、麺ビジネスの成長には、オーナーの成長が必須な理由でお話した、精神力が必要不可欠なのです。

私、スーパーポジティブ、ロッキー藤井は今日も社員とともに成長・進化し続けます。

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プレゼンター

Picture of 藤井 薫(ロッキー藤井)

藤井 薫(ロッキー藤井)

株式会社大和製作所、株式会社讃匠 代表取締役。
令和5年 秋の叙勲にて「旭日単光章」受章。

1948年5月、香川県坂出市生まれ。国立高松工業高等専門学校機械工学科卒業。川崎重工株式会社に入社し、航空機事業部機体設計課に配属。その後、独立し、1975年に大和製作所を創業。

過去48年以上にわたり、麺ビジネスを一筋に研究し麺ビジネスの最前線で繁盛店を指導。麺専門店の繁盛法則について全国各地で公演を行う。小型製麺機はベストセラーとなり、業界トップシェアを誇る。
「麺店の影の指南役」「行列の仕掛け人」として「カンブリア宮殿」「ありえへん∞世界」「スーパーJチャンネル」等、人気TV番組に出演するほか、メディアにも多数取り上げられる。
また、2000年4月にうどん学校、2004年1月にラーメン学校とそば学校を開校し、校長に就任。

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