飲食店の新規開業者が失敗するほとんどの理由は、立地選定ミス

立地は、一度決めたら簡単には変えられないはずなのに、それでもオープンを急ぎたいなどの自分の都合、あまりにも多くの新規開業者が、麺ビジネスの立地戦略を理解せずに、開店するのはなぜなのでしょうか。筆者は実際に飲食店のオーナーにコンサルする上、多くの失敗事例と成功事例をみてきました。そして、そこには法則性があります。

製麺機販売の傍ら、新規にうどん店、そば店、ラーメン店を開業して失敗する新規開業者をたくさん見てきて、開業で失敗する人たちの数を減らすために、うどん学校を開校して20年、ラーメン学校、そば学校は17年ほど経過しました。
その間、数えきれないくらい多くの卒業生を世の中に送り出してきました。
開校した頃との違いは、新規に開業し、失敗する人たちの数は減るどころか、ますます増えているように感じるのが現状です。

最近、書いた人手不足の小冊子、スープの小冊子でも触れたように、うどんそば店、ラーメン店を開業して、1年以内の閉店が42~3%、3年以内が72~3%で、平均寿命が2.4年というのが現状で、以前より閉店数が増加し、平均寿命も短くなっています。
そして、実際に授業を行っていて感じるのは、以前よりマネッジメントの授業に興味を示し、真剣に学ぶ生徒さんの数が減少したように感じます。

要するに、新規に開業して失敗する人が非常に増えているのです。その一番大きな理由の1つが、立地選定のミスです。
立地選定のミスを起こしている主な要因は次の3つです。

  1. ライバルがたくさんいる、競争の厳しい立地を選ぶ人が多い。(ビジネスは絶対に競争をしないこと、まして、新規参入の弱者の立場なので、先輩の強者との競争は絶対に避ける)
  2. 自分のビジネス・モデルが成り立つ場所を選んでいない(自分のビジネス・モデルにとって、ターゲットとしているお客さまがいる立地を選んでいない。さらにはビジネス・モデルを明確に理解していない)
  3. うどん店、そば店、ラーメン店のようなほとんどの麺ビジネスは立地に左右されるビジネスであり、お客さまに来てもらわないと成り立たないビジネスになっているという事実を理解していない人が多い。(席数の少ない店、駐車場の足りない場所で開業する人が多い。幾らおいしくても、席数が足りずいつもいっぱいであったり、車で来なければ来られない場所であるのに、駐車場が足りないとお客さまが入りたくても、入れない場合が多い)

立地選定を分かり易く例えると「アリ地獄」です。
ウスバゲロウの幼虫のアリ地獄は、幼虫の時期を2~3年、土の中で過ごします。
アリ地獄の獲物はその名の通り、地面を歩いているアリです。アリ地獄はエサであるアリを捕まえるために、アリが歩き回る場所に巣穴を作り、円錐形の穴の中心部で、アリが落ちてくるのを待っているのです。
アリ地獄は、巣穴の位置を決めるのを命がけで決めるのです。
もし、アリが落ちて来ない場所に巣穴を掘ってしまうと、自分が餓死してしまうのです。
そして、もし、良い位置に巣穴を掘っていても、近くに先輩の大きなアリ地獄があれば、獲物のアリをかすめ取られるかもしれないのです。
そのため、アリ地獄は巣穴を掘るのは、いつも命がけで掘っているのです。

アリ地獄の巣穴は、うどんそば店、ラーメン店における店舗に当たります。
従って、うどん店、そば店、ラーメン店の新規開業者にとって、立地選定を命懸けの重要なテーマなのです。

飲食店の成功の3大要素として、商品力、サービス力、店舗力と言われています。
店舗すなわち、立地は、誤った場所で開店すると、後から取り返しがつきません。
商品力やサービスについては、開店時、少しレベルが低くても、努力をしてレベルを上げ続けていけば、何とかなるかもしれません。しかし、店舗力に含まれる立地を間違えてしまうと、後から修正が利かないのです。

出店コストで、最も大きな比重を占めるのが、店舗に関する部分です。特にコストがかかるのがキッチンの工事費と機器設備、次に内装、外装です。既に大きな投資をしているので、立地が違ったからもっと良い場所へ移動したいと思っても、容易に移転できないのです。

この部分のコストは、総投資の6~8割程度かかるのと同時に、後から修正が利かないので、最初から気を付けなければいけない部分なのです。
ところが、ほとんどの新規出店者は、この部分にエネルギーと時間を注いでおらずに、簡単に決め過ぎているように思います。
ほとんどの新規開業者が、うどん店、そば店、あるいはラーメン店を始めようと決心すると、最初に起こす行動が立地の選定です。
立地選定は、下記に記しているように、最後の最後なのです。

いろんなものが決まってから、それに相応しい立地を探すのが当たり前なのに、何も決まっていないうちに、先に立地を決めてしまって失敗する人が多いのです。
よくあるのが、当社のうどん学校、そば学校、ラーメン学校に参加した時点で、既に立地を決めている人たちが非常に多いのです。
授業を進めているうちに、今契約している立地では良い結果が得られないと気が付くことがほとんどです。

経営講義の授業の中で、その立地でもし開業すると、どのような結果が得られるか、ビジネス・モデルのシミュレーションをして見せます。すると、最初に狙った利益の確保ができないだけでなく、利益が出て満足に運営できる店舗にはならないことがほとんどです。

最近、地方からうどん学校に参加した生徒さんの例です。駐車場7台、30坪の郊外の店舗で、月間利益を80万円得たいとのことでした。しかし、実際に客単価、回転率、営業日数からシミュレーションをしてみると、毎月得られる利益は約20万円余りでした。

このように、どのようなビジネスをどのような立地で行えば、どのような売上が立ち、経費がどの位必要で、どの位利益が得られるのかは、開店する前にシミュレーションをしてみれば、簡単に分かるのです。

ほとんどの生徒さん、新規開業者は、自分のビジネス・モデルを組み立てず、利益のシミュレーションも行わずに始めるのですが、これは武器も持たずに戦場に赴いているような状態なのです。

従って、始める前から負け戦に突入しているのです。
その結果、大切な虎の子の資金と人生の大切な時間を失ってしまいます。

従って、開業する前に必要なすべての要素をキチンと理解して、正しい順序でうどん店、そば店、ラーメン店を始めると、まず大きく失敗することはないのです。しかし、残念なことにそれらのピースをそろえずに開業してしまう人たちが多いのです。
開業において失敗しないための立地選定について詳しく述べていきたいと思います。

以上の様に、うどん店、そば店、ラーメン店は、立地に大きく影響されるビジネスであるのです。ただし、最近都会を中心に成長が著しいウーバー・イーツなどのデリバリー、宅配は、立地に影響されないビジネス展開が可能です。
従って、新しいビジネスの情報を常に理解することも非常に重要です。

第一章 飲食店オーナーが起こす失敗例。飲食店開店までの正しい順序に続きます。

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プレゼンター

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藤井 薫(ロッキー藤井)

株式会社大和製作所、株式会社讃匠 代表取締役。
令和5年 秋の叙勲にて「旭日単光章」受章。

1948年5月、香川県坂出市生まれ。国立高松工業高等専門学校機械工学科卒業。川崎重工株式会社に入社し、航空機事業部機体設計課に配属。その後、独立し、1975年に大和製作所を創業。

過去48年以上にわたり、麺ビジネスを一筋に研究し麺ビジネスの最前線で繁盛店を指導。麺専門店の繁盛法則について全国各地で公演を行う。小型製麺機はベストセラーとなり、業界トップシェアを誇る。
「麺店の影の指南役」「行列の仕掛け人」として「カンブリア宮殿」「ありえへん∞世界」「スーパーJチャンネル」等、人気TV番組に出演するほか、メディアにも多数取り上げられる。
また、2000年4月にうどん学校、2004年1月にラーメン学校とそば学校を開校し、校長に就任。

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