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引き算の経営学

先日、東京のラーメン店オーナーから相談を受けました。
「メニューを増やしたのに、売上が下がりました。」 と困惑した様子で話していました。
そこで私が提案したのは、売上を上げるためにメニューを減らすこと。
驚かれるかもしれませんが、これは経営において重要な戦略です。
メニュー数と利益率の関係性

ハーバード・ビジネス・レビューの研究結果
ハーバード・ビジネス・レビューの研究によると、店舗のメニュー数が多すぎると顧客の選択肢が増え、逆に購買をためらわせる要因になることが示されています。
つまり、選択肢が多すぎると、消費者は決断を下すのが難しくなり、結果的に売上が減少してしまうのです。
レストランの平均データ(2023年調査)
- メニュー10品以下:利益率25%
- メニュー30品:利益率15%
- メニュー50品以上:利益率8%
なぜ、メニューを増やすほど利益が減るのか?その理由は「見えないコスト」にあります。
メニュー過多の隠れたコスト
- 在庫ロス:食材の30%が廃棄に
- 調理時間:1品あたり2.5倍に増加
- 教育コスト:新人育成期間が3ヶ月→6ヶ月に
- 品質のバラつき:クレーム率が3倍に
繁盛店が実践する「引き算」

世界中の多くの繁盛店では、シンプルさが経営の成功につながっています。
例えば、アメリカの人気ハンバーガー店では、わずか4種類のバーガーしか提供していませんが、それが逆に顧客を惹きつけています。
メニューが少ないことで、どれを選んでもおいしいという信頼感を得ることができ、結果的に何度も足を運びたくなるのです。
アメリカの成功事例
In-N-Out Burger
- メニュー:バーガー3種、ポテト、ドリンクのみ
- 時給:$20(業界平均の1.5倍)
- 利益率:20%(マクドナルドの2倍)
- 顧客満足度:全米ファストフード1位
Five Guys
- メニュー:基本5種類
- 店舗数:1,700店(20年で100倍)
- 秘訣:「完璧な5品」への集中
日本の成功事例
一蘭
- メニュー:とんこつラーメン1種類のみ
- 海外展開:10カ国80店舗
- 客単価:$15-20(現地ラーメン店の2倍)
一風堂
- 基本メニュー:4種類
- 世界展開:15カ国260店舗
- IPO達成:時価総額500億円
丸亀「骨付鳥 一鶴(いっかく)」の経営戦略

当社の本拠地・宇多津町のすぐ隣、丸亀市。ここには「骨付鳥 一鶴(いっかく)」といった繁盛している店舗があります。
骨付鳥 一鶴(いっかく)
メニュー
- メニューは、「親鶏(おやどり):1,100円」、「若鶏(ひなどり):950円」、2品のみ。
結果
- 座席数:300席(全店満席)
- 回転率:1日3回転
- ビール売上:香川県1位
- 利益率:35%
一鶴が教える3つの真実
1.究極の専門化
- 2品だから、完璧を追求できる
- スタッフ全員が「骨付鳥のプロ」
2.圧倒的な効率
- 調理時間:15分で統一
- 廃棄率:ほぼゼロ
- 新人教育:3日で戦力化
3.忘れられない体験
- 「一鶴でしか食べられない味」
- リピート率:85%
- 口コミだけで行列
売上を上げるためのステップ

1. メニューの見直してテスト削減
まずは現在のメニューをよく見直し、売上や人気の観点からどの品目を残し、どれを削除するかを検討しましょう。
- 各メニューの出数を確認
- 下位から削減する候補の品を選び、メニューを少し減らしてみる
2. ターゲットの明確化
ターゲットとする顧客層を再確認しましょう。顧客が好む料理やスタイルを把握することで、より的確なメニュー構成が可能になります。
- 顧客の反応を見る
3. 削減と同時に高品質の確保
メニューを縮小した後は、残した料理の品質向上に努めましょう。顧客にとって飽きの来ない工夫や新しい味わいを提案することが、リピート率向上につながります。
- 残したメニューの品質を高める
- スタッフ教育に力を入れる
まとめ

経営の世界では、選択肢を減らすことが必ずしもリスクを伴うわけではありません。むしろ、狙った市場に特化し、徹底的に掘り下げることが成功へとつながります。
メニューの引き算を実践することで、あなたのお店も繁盛店へと変貌を遂げるかもしれません。
成功事例は世界中にあるため、一歩踏み出してみる価値は大いにあります。