ラーメンのグローバル戦略|世界制覇の設計図|博多発のラーメンチェーンに学ぶ

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避けて通れないグローバル化の波

グローバルビジネス

現在、ラーメン業界、そして麺業界全体が直面している最大の課題は何でしょうか。それは日本の人口減少という構造的な問題です。この現実を前に、グローバル化は選択肢ではなく、生き残るための必要条件となっています。
国内市場においても、急増するインバウンド観光客への対応は避けて通れません。国内・海外を問わず、グローバル化は麺業界の未来を決定づける最重要テーマなのです。
そして、このグローバル競争を制するカギは、まさに「独自の麺による他店との差別化」にあります。スープは比較的容易に模倣されますが、本物の麺技術は簡単には真似できない—これこそが勝敗を分ける決定的な要因なのです。

世界初のラーメンのグローバル化に成功した一風堂

この真理を40年前から実践し、世界的成功を収めた店があります。博多一風堂です。
1985年の創業から40年。創業当時に開業した多くのラーメン店がすでに姿を消す中、一風堂は世界初のラーメンのグローバル化に成功し、今もなお進化し続けています。その成功の秘密は、スープはもちろんですが、何より「独自の麺技術」への徹底的なこだわりにありました。

1988年、運命的な出会い

力の源ホールディングス代表取締役会長兼Founder河原成美氏が、私の著書「なぜ、あなたの努力は報われないのか?答えは、あなたの根っ子にあった」に寄せてくださった推薦文によると、当社との出会いは1988年。河原会長が36歳、私が40歳の時でした。
当時の河原会長は、ラーメン業界に一陣の風を吹かそうと、既存のラーメン店が手掛けていないことに次々とチャレンジしていました。その一つが自家製麺です。
「当時、麺は製麺所から取るのが当たり前でした」と河原会長は振り返ります。しかし、小型製麺機を開発・販売している大和製作所の存在を知り、問い合わせをいただきました。私がすぐにお伺いしたところ、第一印象は「学者みたいな人だな」というものだったそうです。

周囲の批判を跳ね返した信念

河原会長は、当社や大和のスタッフにアドバイスをもらいながら、製麺技術を磨いていかれました。しかし、その道のりは決して平坦ではありませんでした。
当時、自家製麺に取り組む一風堂を、周りのラーメン店仲間は「馬鹿にしていた」のです。既存の常識に挑戦する姿勢は、しばしば理解されないものです。しかし、河原会長は信念を貫きました。
その結果がどうだったでしょうか。「その後、多くのラーメン店が大和の製麺機を導入して自家製麺にチャレンジし、自家薬籠中のものしていったのは周知の事実です」と河原会長自らが証言されています。

ラーメン革命の立役者

河原会長はこう評価してくださいます:「藤井さんはラーメンのいわば『革命』を影で支えた立役者なのです。自家製麺は新しいラーメン職人の姿を生み出しました。オリジナリティを重視し、次々と斬新な味を生み出していく——そんなラーメン職人のイメージは、実は藤井さんが生み出したと言っても過言ではありません」
確かに、当社の「ラーメン学校」には、ラーメン職人を目指す人々だけでなく、すでに有名店・人気店になった店主たちもこぞって学びにいらっしゃいました。新しいラーメン職人像を創造することで、業界全体のレベルアップに貢献できたのです。

技術継承と発展の物語

私が河原会長に「ラーメンスープ作りの基本的な考え方を教えて欲しい」とお願いし、香川の本社に泊まり込んで学ばせていただいたのも、今では懐かしい思い出です。その後、私はラーメン作りの研究を重ね、言語化し、マニュアル化し、「ラーメン学校」を開設しました。
これは単なる技術習得ではありませんでした。河原会長から学んだスープ作りの基本的な考え方—その「根っ子」となる部分を理解し、それを麺作りの技術と融合させ、継続的に進化させ続ける姿勢を身につけることでした。河原会長は、まさに製麺技術とスープ技術の両方の本質を理解された、真の意味でのラーメンの革命者だったのです。

NY工場で目撃した驚異的な品質管理

15年ほど前、私がニューヨークの博多一風堂店舗を訪ねた時のことです。その製麺工場で製麺の様子を見て、心の底から驚きました。

徹底された温度管理:

  • 練水の温度の精密管理
  • 小麦粉の温度の厳格管理
  • ミキシング時の温度の細かな制御
  • その他あらゆる製麺要素の数値管理

国内での品質管理であれば、まだ理解できます。しかし、NYという海外の地で、言語や文化の壁がある中で技術を伝達し、多人種のスタッフを使いながら、これほど精密な品質管理を実現していることに、本当に驚きました。

これは単なる品質管理を超えた、製麺への深い理解と愛情、そして何より「根っ子」を海外にまで移植することに成功した証拠でした。多くの企業が海外展開で品質を落とす中、一風堂は国内以上の管理レベルを、最も困難とされる海外の多人種環境で実践していたのです。

根っ子の理解がもたらす競争優位性

競争力

なぜ一風堂だけが、このような品質管理を海外で実現できたのでしょうか。その答えは「根っ子」にあります。

表面的な技術移転では失敗する 多くの企業が海外展開で失敗するのは、レシピや手順だけを移転しようとするからです。しかし本当に重要なのは、その技術の根底にある原理原則—「なぜその温度なのか」「なぜその管理が必要なのか」という本質的な理解です。

河原会長が理解していた真実:

  1. 麺質こそが差別化の核心 – スープは真似されても、独自の麺技術は容易に模倣できない
  2. 技術の本質(根っ子)の重要性 – 表面的な真似ではなく、原理からの理解
  3. 妥協なき品質追求 – 海外でも国内と同じ、いやそれ以上の管理レベル
  4. 継続的進化への姿勢 – 学び続け、改善し続ける企業文化の構築

グローバル成功の方程式

電卓

一風堂の40年間の成功から導き出される、グローバル展開の成功方程式があります:

成功方程式 = 独自技術 × 根っ子理解 × 継続的進化

  1. 独自技術(差別化要因)
    • 他店では真似できない麺技術
    • 科学的根拠に基づいた製法
    • 数値化された品質管理システム
  2. 根っ子理解(本質把握)
    • 技術の原理原則への深い理解
    • 「なぜ」を追求する学習姿勢
    • 職人的感性と科学的思考の融合
  3. 継続的進化(改善文化)
    • 現状に満足しない向上心
    • 市場変化への柔軟な対応
    • 次世代への技術継承システム

大和の根っ子が支えたグローバル展開

一風堂の成功は、決して偶然ではありません。創業50年間で培った当社の「根っ子」が、その基盤を支えていたのです。

技術的な根っ子:

  • 熟成概念の確立と普及
  • 科学的製法の体系化
  • 品質管理システムの構築

営業的な根っ子:

  • 九州時代に発見した繁盛の法則
  • お客様視点での総合的サポート
  • 継続的なパートナーシップの提供

教育的な根っ子:

  • 技術の言語化・マニュアル化
  • ラーメン学校での人材育成
  • 業界全体のレベルアップへの貢献

これらの根っ子が有機的に結合することで、単なる機械の販売を超えた、総合的な成功支援システムが完成しているのです。

現在進行中のグローバル化の波

現在、麺業界を取り巻く環境は急速に変化しています。

国内市場の構造変化:

  • 人口減少による市場縮小
  • 高齢化による消費パターンの変化
  • インバウンド観光客の急増
  • SNSによる情報拡散の加速

海外市場の拡大機会:

  • アジア圏での日本食ブーム継続
  • 欧米での健康志向とラーメンの親和性
  • 現地食材との融合による新商品開発
  • デジタル技術を活用した品質管理の進歩

インバウンド対応という新戦場

インバウンド需要

国内においても、インバウンド観光客への対応は重要な戦略テーマです。彼らが求めているのは、単なる「日本のラーメン」ではありません。「本物の日本でしか味わえない特別な体験」なのです。

この期待に応えるためには、やはり独自の麺技術による差別化が不可欠です。画一的な製麺所の麺では、特別感を演出することはできません。

インバウンド成功の要件:

  1. ストーリー性のある技術 – 製麺過程自体がエンターテインメント
  2. 視覚的なインパクト – SNS映えする独自性
  3. 味覚での驚き – 母国では体験できない食感
  4. 文化的な価値 – 日本の職人技術への敬意

海外展開を成功させる実践的ステップ

一風堂の成功事例から学ぶ、海外展開の実践的ステップをご紹介します。

Phase 1:国内での技術完成(6-12か月)

  • 独自麺技術の確立と差別化
  • 品質管理システムの構築
  • スタッフ教育システムの整備
  • 技術移転マニュアルの作成

Phase 2:技術移転システムの構築(3-6か月)

  • 現地環境に適応した製法調整
  • 現地スタッフ向け教育プログラム
  • 品質監視・管理システムの導入
  • 継続的改善メカニズムの確立

Phase 3:現地展開と品質維持(継続的)

  • 現地での製麺工場設立
  • 品質管理責任者の育成
  • 定期的な技術監査実施
  • 現地市場に応じた商品開発

競合との差別化戦略

グローバル市場では、現地競合との差別化がさらに重要になります。

差別化の階層構造:

レベル1:基本品質(参入要件)

  • 安定した味と品質
  • 現地の衛生基準への適合
  • コスト競争力の確保

レベル2:技術的優位性(競争優位)

  • 独自の製麺技術
  • 他店では真似できない食感
  • 科学的根拠に基づく品質管理

レベル3:文化的価値(ブランド構築)

  • 日本の職人技術への敬意
  • 製麺過程のストーリー性
  • 継続的な技術革新への取り組み

一風堂が40年間成功し続けているのは、このレベル3まで到達しているからです。単なる美味しいラーメン店ではなく、「日本の麺文化の代表」としてのブランドを確立しているのです。

大和製作所のグローバル対応力

当社では、一風堂での成功経験を活かし、グローバル展開を支援する包括的なシステムを構築しています。

技術支援システム:

  • 海外環境対応の製麺機カスタマイズ
  • 現地小麦粉特性分析とブレンド技術
  • 品質管理システムの導入支援
  • リモート監視システムの提供

教育支援システム:

  • 多言語対応の技術マニュアル
  • オンライン研修システム
  • 現地スタッフ向け集中トレーニング
  • 継続的なフォローアップ体制

経営支援システム:

  • 市場分析と戦略策定支援
  • 現地パートナー選定のアドバイス
  • 法規制対応のサポート
  • ブランディング戦略の提案

成功事例に学ぶ投資対効果

一風堂のような成功を収めた場合の投資対効果は、どの程度でしょうか。

定量的効果(一般的な事例):

  • 海外1店舗あたりの売上:国内の1.5-2.0倍
  • 粗利率:独自技術により10-15%向上
  • ブランド価値:プレミアム価格設定が可能
  • 展開速度:技術的差別化により加速

定性的効果:

  • 国際的ブランドとしての認知向上
  • 国内インバウンド需要への波及効果
  • メディア露出機会の増大
  • 次世代継承への意識向上

長期的効果:

  • 人口減少リスクの分散
  • 複数通貨での収益安定化
  • 技術革新へのモチベーション向上

業界での存在感・影響力拡大

今始めるべき理由

グローバル展開を検討する最適なタイミングは、まさに今です。

市場環境の追い風:

  • 円安による海外展開コストの相対的低下
  • アジア中間層の拡大と消費力向上
  • デジタル技術による品質管理の高度化
  • 国際物流システムの発達

競争環境の優位性:

  • 本格的なグローバル展開を行う日本企業はまだ少数
  • 現地での日本食ブランドへの信頼は高い
  • 一風堂の成功により、成功モデルが確立済み
  • 大和製作所の支援システムが利用可能

失敗を避けるための重要ポイント

海外展開で失敗する企業の多くは、共通した問題を抱えています。

よくある失敗パターン:

  1. 技術移転の浅さ – レシピだけのコピーでは現地適応できない
  2. 品質管理の甘さ – 現地任せで品質が低下
  3. 文化理解の不足 – 現地ニーズとの乖離
  4. 継続支援の欠如 – 初期立ち上げ後のフォロー不足

成功のための対策:

  1. 根っ子からの理解 – 技術の本質的な理解と移転
  2. システム化された管理 – 数値化・可視化された品質管理
  3. 現地パートナーとの協力 – 文化的理解と市場適応
  4. 長期的コミット – 継続的な支援と改善システム

グローバル支援

世界中のお客様から頂いた課題を解決することで得たノウハウをベースにグローバル支援を行っています

グローバル対応での特別な価値:

技術者としての側面:

  • 現地小麦粉の特性分析と最適化
  • 気候・水質条件への技術的対応
  • 現地法規制に適合した設備設計

ノウハウとしての側面:

  • 現地の味覚傾向を踏まえた食感設計
  • 文化的背景を理解した商品開発
  • 視覚的・体験的価値の創造

コンサルタントとしての側面:

  • 市場戦略と技術戦略の統合
  • 現地パートナーとの技術交流
  • 長期的な事業発展への助言

グローバル化時代の新しい成功モデル

一風堂の成功は、これからの麺業界における新しい成功モデルを示しています。

従来のモデル(国内完結型):

  • 地域密着での競争
  • 価格競争中心
  • 人口減少によるジリ貧

新しいモデル(グローバル展開型):

  • 独自技術による差別化
  • 価値競争中心
  • 複数市場でのリスク分散

この転換を成功させるには、単なる拡大志向ではなく、技術的な裏付けと継続的な進化への取り組みが不可欠です。

共に歩むグローバル成功への道

40年前、河原会長が「周りのラーメン店仲間に馬鹿にされながら」自家製麺に挑戦されたように、真のイノベーションは最初は理解されないものです。しかし、正しい技術と揺るぎない信念があれば、必ず成功への道は開けます。

一風堂の世界的成功は、決して偶然ではありません。独自の麺技術への徹底的なこだわり、品質管理への妥協なき追求、そして何より「根っ子」を理解し続ける姿勢—これらすべてが結実した結果なのです。

大和製作所が提供する価値:

  • 創業50年で培った技術的蓄積
  • 一風堂成功で実証されたシステム
  • グローバル展開への包括的支援
  • 継続的パートナーシップの提供

人口減少という避けられない現実の中で、グローバル化は生き残りのための必要条件です。そして、そのグローバル競争を制するのは、独自の麺技術による差別化なのです。

今こそ決断の時

河原会長が36歳で自家製麺に挑戦されたように、今こそあなたが決断する時です。40年後、あなたの店は残っているでしょうか。そして世界に羽ばたいているでしょうか。

その答えは、今この瞬間の決断にかかっています。

当社はあなたのグローバル挑戦を全力で支援いたします。一風堂で実証された成功のメソッドを、あなたの店でも実現しませんか。

技術と情熱、科学と芸術、そして何より「お客様への愛」と「根っ子への理解」—これらすべてを武器に、グローバル市場での成功を共に掴みましょう。

次回は、「麺質革命 – 未来を切り開く新食感の科学」をテーマに、これまでにない全く新しい麺質の追求と、その実現のための最新技術について詳しく解説します。グローバル市場でさらなる差別化を実現する、次世代麺技術の可能性に迫ります。ご期待ください。

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藤井 薫(ロッキー藤井)

株式会社大和製作所、株式会社讃匠を創業。
令和5年 秋の叙勲にて「旭日単光章」受章。

1948年5月、香川県坂出市生まれ。国立高松工業高等専門学校機械工学科卒業。川崎重工株式会社に入社し、航空機事業部機体設計課に配属。その後、独立し、1975年に大和製作所を創業。

過去48年以上にわたり、麺ビジネスを一筋に研究し麺ビジネスの最前線で繁盛店を指導。麺専門店の繁盛法則について全国各地で公演を行う。小型製麺機はベストセラーとなり、業界トップシェアを誇る。
「麺店の影の指南役」「行列の仕掛け人」として「カンブリア宮殿」「ありえへん∞世界」「スーパーJチャンネル」等、人気TV番組に出演するほか、メディアにも多数取り上げられる。
また、2000年4月にうどん学校、2004年1月にラーメン学校とそば学校を開校し、校長に就任。

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