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厨房は経営の心臓部へ
かつて厨房は、表に出ない「裏方」の存在でした。
しかし現在、世界の外食産業では、厨房そのものが経営の中枢=心臓部へと進化しています。
その背景には、避けて通れない次の3つの現実があります。
1.慢性的な人手不足
2.地球温暖化による高温環境の常態化
3.洪水・停電・異常気象など自然災害リスクの増加
これら複数の課題を同時に解決する手段として、いま世界中の外食企業で再注目されているのがセントラルキッチン(中央厨房)という仕組みです。
タイで進化した、ハチバンラーメン
その代表例が、タイ・ハチバンラーメンです。
日本・北陸にルーツを持つハチバンラーメンは、現在タイ全土で約160店舗を展開する巨大ラーメンチェーンへと成長しました。
各店舗は約80席規模の大型店でありながら、その裏側では、
・麺
・スープ
・餃子
といった主要食材のすべてを、巨大セントラルキッチンで一括製造しています。
この中央厨房は、洪水リスクのない高地エリアに設置され、
・製麺ライン
・スープ・タレ・餃子の集中加工設備
・自動温度・湿度制御ラインが整備され、完全な一貫生産体制を構築。
その結果として、160店舗すべてで「同じ品質・同じ味」を安定して再現することに成功しています。
失敗から学び、進化する力
ハチバンラーメンの強さは、失敗を糧に進化してきた失敗の活かし方にあります。
実は初代セントラルキッチンは、かつてタイを襲った大洪水により浸水被害を受けました。
この経験を教訓に、同社は洪水リスクのない新エリアへ拠点を移転。
さらに、
・設備の高床化と排水ラインの再設計
・電源・冷蔵設備の二重化
・非常電源・バックアップ水槽の常設
などを徹底し、災害に強いレジリエント厨房を完成させました。
災害をきっかけに、より強く、美しく生まれ変わる
これこそが、持続可能な厨房設計の理想形であり、本質です。
高温多湿のタイで実現したこと
タイは日本以上に高温多湿な環境です。
この過酷な条件下で、ハチバンラーメンは衛生と生産効率を両立させています。
そのため、ハチバンラーメンでは次の取り組みを行っています。
具体的には、
・省エネルギー型冷却システム
・節水と効率化を重視した洗浄工程
・ゾーニングによる換気・温度管理の最適化
を導入しています。
これにより、清潔・省エネ・持続可能な厨房環境を実現。
さらに近年はSDGsへの対応として、
・廃棄物の再資源化
・環境負荷の少ない設備への更新
・作業者の安全・衛生教育の強化
にも積極的に取り組んでいます。
ハチバンラーメンのセントラルキッチンは、災害対応 × 環境対応 × 生産効率を兼ね備えた、新しい外食と厨房モデルと言えるでしょう。
セントラルキッチンが力を発揮する3つの条件
重要なのは、セントラルキッチンは導入すれば成功する装置ではないという点です。
その効果を最大化するには、次の重要な条件が欠かせません。
1. 狭いエリアでの多店舗展開(密集戦略)
配送距離が短く、鮮度・歩留り・コストを最適化できることが前提です。
タイ・ハチバンラーメン160店舗密集展開は理想的な形であり、日本で言えば、セブン‐イレブンの集中出店戦略に近い発想です。
2. メニューと調理工程の共通化
麺・スープ・タレなど、店舗間で共通化できる設計が不可欠です。
3. 勘ではなく、データで品質を再現する技術
温度・時間・加水率などを数値で管理し、職人の技を科学として「置き換える仕組み」と「再現できる基盤」が求められます。
これからの時代に求められる「5つの原則」
これからの時代、理想的なセントラルキッチンには、次の5原則を満たす必要があります。
清潔
・HACCP準拠のゾーニング設計
・動線分離と抗菌素材の活用
・完全軟水・衛生空調・抗菌床材
効率
・デジタル制御による生産時間短縮
・一人当たり生産量の最大化
・エネルギー使用量の可視化
持続可能
・廃棄物再資源化と節水設備
・低環境負荷冷媒・再生可能エネルギー
・SDGs指標の公開と管理
強靭
・洪水・地震・高温への防災設計
・二重電源・高床構造・換気ゾーニング
・BCP(事業継続計画)対応
可視化
・IoTによる温度・湿度管理
・クラウド型生産・配送システム
・AIによる稼働最適化と品質予測
まとめ
これからの外食産業において、厨房は経営戦略そのものであり、企業の持続可能性を左右する心臓部です。
ハチバンラーメンの事例が示すように、厨房を「企業競争力の源泉」へと進化させた企業だけが、不確実な時代を生き残っていきます。
これからの外食経営において、厨房をどう設計するか=企業の未来をどう設計するか。
その視点が、ますます重要になっていくでしょう。