人に任せる時代から仕組みで支える時代へ|AIも活用する仕込みゼロ&教育ゼロ厨房革命

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【繁盛麺店への道】Vol.3

先週は、お店の運営に対するAIの活用の話をしましたが、今週は厨房関連です。
但し、厨房にはソフト面以上にハード面の要素を多いので、ハードとソフトとの融合が重要な課題です。
これからの外食ビジネス、麺ビジネスにおいて避けて通れないのが、AIの強味を活かした人とAIとの組み合わせのバランスです。

特に、先週の様に、お店の運営面においては、AIの活躍する場面は既にたくさんあります。しかし、今後は、運営面だけでなく、厨房においてのAIの活用が非常に重要課題になります。飲食ビジネスにおいては、お客さまと接するホールは最高レベルのサービス産業であり、厨房部分はトヨタのジャストインタイムの工場と同じような、注文をいかに早く、正確に調理をして提供するかが問われている製造工場なのです。

日本の自動車産業或いは、製造業は先に製造部門のIT化、ロボット化を進めて、世界に先駆けて非常に成功してきたのです。その製造部門が次に目指しているのが、販売部門、間接部門のIT化で、これもだいぶ進化しています。そうすれば、飲食ビジネスは、今後の大きな課題として、いかにキッチンの自動化、省力化が次の時代の大きな課題になっており、最近、カンブリアで取り上げられた事例は、調理ロボットメーカーのTech Magic (https://techmagic.co.jp/)です。

この会社では、主に炒め物の調理を自動で行なう機械類の製造販売しているのですが、販売方法は売り切りではなく、全てサブスクで、時代の最先端企業です。これはたまたま炒め物の自動調理器ですが、炒め物の自動調理器は、中国企業も参入していて、今後はこのジャンルの競争が厳しくなることが想定されています。

麺ビジネスのキッチンにおいて、最も負荷の大きな作業は麺の茹で作業です。特にうどんの様に太い麺は茹で時間が10分以上と長く、水洗いしたり、その後、冷水で締めたり等の作業が複雑なので、これの自動化が特に要求されます。

うどん店ビジネス、麺ビジネスの厨房は茹で釜のような熱量の大きい廃熱機器が多いので、作業者の環境負荷が大きく、これを一挙に解決する機器が現在の麺ビジネス業界で問われています。

この解決に最も近い距離にあるのが、AIによる解決で、単なる茹で作業だけでなく、厨房全体のトータルとしての環境負荷の軽減も重要な要素になります。今週、私が提言したいのが、これからも麺ビジネスの未来においての非常に重要なテーマである、キッチン・オートメーションです。

はじめに:その“職人依存”が、経営の足かせかもしれない

・「店主がいないと仕込みができない」
・「新人は戦力になるまで1か月以上かかる」
・「ピーク時にオペレーションが崩壊する」
そんな“厨房ブラックボックス化”に悩んでいませんか?
本号では、麺ビジネスが最終的な目指す方向として、AIの力で「誰でもできる厨房」へ変える方法をご紹介します。ただし、そんなに遠い未来の話ではなく、少なくとも10年~5年以内に達成出来ていないと、これからの厳しい外食全体に競争の中で生き残るチャンスが減少すると思います。

1. なぜ今、厨房の“自動化と標準化”が求められるのか?

背景課題

項目 課題
人手不足 正社員はもちろん、パート・アルバイトも採用難
教育負荷 麺の扱いや出汁の調整など、習得に時間がかかる
品質のバラつき 同じ商品でも人によって味が違う → クレーム原因に
時間ロス 仕込み・オーダーミス・手順混乱による非効率

「職人の技」から「誰でも同じ結果が出せる」厨房へ転換することが急務です。これには、厨房機器の開発、改善、改良も必要になってきます。同時に、企業ごとにメニューも違うので、企業ごとの取組みが重要になってきます。これからは、出来合いの標準機器の購入ではなく、自社向けのカスタマイズがAIの時代には重要になります。従って、厨房内作業の研究が麺ビジネスの重要な要素になってきます。

2. “AI厨房”とは?――人に頼らず、結果を安定させる仕組み

AI厨房の3つの中核コンセプト

項目 内容
① 視える化 作業手順を動画・画像で提示。新人でも同じ動きが可能
② 考える化 材料・注文数・時間帯に応じてAIが段取り最適化
③ 指示する化 厨房ディスプレイで「次にやるべき作業」がリアルタイムに表示される

「マニュアルを読む前に、“やることが分かる”」厨房へ、上記のAI厨房の3つの中核コンセプトの①~③の見える化、考える化、支持する化の全ては、現在の技術で全て可能なものばかりです。少し、人手とエネルギーはかかりますが、これをやれば、間違いなく麺ビジネスの成功への近道です。

3. AI厨房の実装イメージ(活用ステップ)

【Step 1】「仕込みゼロ」の導入

• 讃匠などの高品質業務用麺・スープを活用
• 出汁や麺の茹で時間を「秒単位」で統一設定
• AIが仕入量・在庫を自動予測し、前日に“明日の段取り表”を生成

比較的経験の浅いスタッフでも、対応出来る様になります。私が先日、東京出張の折に、以前から気になっていたAI化が進んでいる飲食業の事例として、以前紹介した「クリスプ・サラダ・ワークス」に行ってきました。そこで気になったのが、盛付の状態でした。メニュー表の画像と実際に提供されたサラダの盛付のレベルが非常に低かったのです。私はそこで感じたのは、スタッフの盛付レベルのチェックが行われていない事実でした。お客さまに渡す前の盛付された料理の画像を毎回撮影し、それを保管してチェックすることにより、担当者による盛付レベルの差がなくなると思いました。幾らAIを活用しても、最終的に人間が仕上げる場合は、そのレベルをチェック出来る仕組みが必要なことが良く分かりました。

【Step 2】厨房オペレーションのAIナビ化

システム 内容
デジタル調理アシスト 注文状況をもとに、「今、誰が何をするべきか」をリアルタイムで表示
スタッフ登録連携 新人かベテランかで指示の詳細を自動調整
ミス防止 麺種・トッピング・温冷など、注文ごとのチェックリスト付き指示

「オーダー混乱・盛り付けミス・入れ忘れ」を大幅に削減、ステップ2もステップ1同様に、キチンと出来ているかどうかのチェックの仕組は絶対に必要で、もし、出来ていない場合は、やり直し等の指示は必要です。これらがAI化する場合の必須事項で、そうでないとレベルが守れないのです。

【Step 3】教育ゼロ・即戦力化の実現

• タブレットで作業ごとの「3秒動画」表示
• 出勤初日から“1人前の動き”が可能
• 全作業のログがAIに記録 → フィードバックや評価も自動化

研修期間3日 → 30分に短縮した実例も!これらも非常に重要な課題です。

“業務用麺 × AI厨房”の相乗効果

讃匠では、業務用うどんが最近、人手不足のあおりで非常に伸びています。3月に開業した広島駅ビル6階の太閤うどんでは、駅ビルで厨房が狭く、自家製麺用の製麺機が置けなかったので、今回初めて、業務用の讃匠の冷凍生うどんを採用しました。最初は、自家製麺に負けないうどんが出来るのかと半信半疑だったのですが、実際にスタートしてみると、品質面は自家製麺には絶対に負けていないし、自家製麺ではこれだけの量がこなせなかったと言われています。

• 人のスキルに依存しない → 店長がいなくても店が回る!
• 短時間・少人数で運営可能 → 人件費30%削減!
• ピーク時でも品質が安定 → クレーム・ストレスが激減!

“人の感覚”から“仕組み”へ。厨房の再設計を。

厨房は長らく「職人の世界」でした。
しかし今は、「誰がやっても、同じ味とスピード」が求められる時代です。

そのためには、人に任せるのではなく、“仕組みが人を支える”厨房が必要です。
AIは、職人技を「標準化し、継承する道具」として、強い味方になります。厨房のAI化は業界全体の重要な課題で、日本の麺ビジネスが世界で勝ち残るには、重要な課題になってきます。

次回Vol.3では、「LINEとAIで常連を“濃いファン”に育てる!感情マーケティングの時代」
~“あなたのために用意しました”と言える店になる方法~
をお届けします

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藤井 薫(ロッキー藤井)

株式会社大和製作所、株式会社讃匠を創業。
令和5年 秋の叙勲にて「旭日単光章」受章。

1948年5月、香川県坂出市生まれ。国立高松工業高等専門学校機械工学科卒業。川崎重工株式会社に入社し、航空機事業部機体設計課に配属。その後、独立し、1975年に大和製作所を創業。

過去48年以上にわたり、麺ビジネスを一筋に研究し麺ビジネスの最前線で繁盛店を指導。麺専門店の繁盛法則について全国各地で公演を行う。小型製麺機はベストセラーとなり、業界トップシェアを誇る。
「麺店の影の指南役」「行列の仕掛け人」として「カンブリア宮殿」「ありえへん∞世界」「スーパーJチャンネル」等、人気TV番組に出演するほか、メディアにも多数取り上げられる。
また、2000年4月にうどん学校、2004年1月にラーメン学校とそば学校を開校し、校長に就任。

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