そんなある日、お客さんが「蕎麦の冷凍麺も美味しいね」と話しているのを聞いて、「あ、讃岐でも蕎麦の需要があるんだな」「よし、蕎麦で行ける。蕎麦一本で勝負しても大丈夫だ」と確信しました。こうして”香川で一番の蕎麦屋”をめざした、挑戦が始まったわけです。
うどんに慣れ親しんだ香川県の人々に、蕎麦の魅力を分かってもらう自信があったのかと聞かれれば、正直ありましたよ。全国の蕎麦粉を吟味し、納得できるものを仕入れていましたし、手打ちの腕にも自信がありました。この蕎麦なら讃岐の人たちの舌だって魅了できると確信していましたね。
そういう意味では”手打ち”蕎麦一本で勝負しようと思えば、できないこともなかったのです。ところが、自分は自己流のためか、蕎麦を打つとすごく疲れてしまうんです。疲れると仕事が雑になり、納得できる蕎麦を提供できない。そんなジレンマに襲われるようになってしまったのです。