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世界麺未来戦略研究所

こんにちは。

大和製作所の創業者、ロッキー藤井です。

「何度教えても、同じようにできない」「店長によって、味や盛り付けが変わる」「少し慣れたら、すぐに自己流でやり始める」このような悩みを持つ経営者は、少なくありません。

しかし、本当にスタッフだけの問題でしょうか。

教える内容が、人によって違う。合格基準が、数値や見本で明確に示されていない。基本を身につける前に、「自分で考えろ」と任せてしまう。

このような状態では、優秀な人でも安定した仕事はできません。

人材育成にも、商品開発と同じように「守破離」の順序が必要です。

人材育成でも「守」を飛ばしてはいけない

前回の記事(独自商品を生む「守破離」の3段階)では、久保俊介社長の「ナポらー麺」を通して、商品開発の「守破離」をお伝えしました。

「守」は、師匠の教えを寸分違わず再現する段階。「破」は、基本を守りながら改善と改良を重ねる段階。「離」は、既存の型を超え、新しい価値を生み出す段階です。

これは、人材育成でも同じです。

入社したばかりのスタッフに、店主が「自分で考えて動いてください」と言うことがあります。

しかし、まだ店の基準を理解していない人が自分で考えて動けば、それぞれが別の方法で仕事を始めます。

麺の量が違う。スープの量が違う。盛り付けが違う。提供時間が違う。

これを「個性」と呼んではいけません。

基本を身につける前の自己流は、改善ではなく、単なるばらつきです。

最初の「守」で教えるべきこと

「守」の段階では、仕事の基準を明確にします。

例えば、一杯のラーメンをつくる場合でも、基準を決める項目は次のように多岐にわたります。

・麺の重量
・茹で時間
・スープの量
・スープの温度
・元ダレの量
・油の量
・具材の重量と位置
・注文から提供までの時間

これらを、「このくらい」「適当に」「見れば分かる」といった曖昧な言葉で教えてはいけません。

例えば、自店の基準を次のように決めたとします。

・麺の重量:150グラム
・茹で時間:2分30秒
・スープの量:300グラム
・提供時のスープ温度:85度以上
・注文から提供までの時間:6分以内

誰がつくっても、その基準を満たせるようになるまで練習します。

数値そのものは、商品や店によって異なります。大切なのは、自店の基準を決め、教える人によって内容が変わらないようにすることです。

「守」の合格を、店主の感覚だけで決めない

「だいたいできるようになったから、もう任せよう」この判断が、品質のばらつきを生みます。

「守」の段階では、合格条件を数値や見本で明確にします。

例えば、次の5項目を合格条件にします。

・10杯連続で麺の重量が基準内に収まる
・10杯連続で茹で時間が基準内に収まる
・10杯連続で見本どおりに盛り付けられる
・10杯連続で提供時間が目標内に収まる
・味と食感の確認に合格する

この5項目をすべて満たして、初めて一人で担当してもらいます。

一度成功しただけでは、再現できるとはいえません。忙しい時間帯でも、同じ品質を繰り返し再現できることが重要です。

「破」では、改善を提案させる

基本を正確に再現できるようになったスタッフは、次の「破」の段階へ進みます。

この段階では、「もっと早く提供する方法はないか」「この配置の方が動きやすいのではないか」「この盛り付けの方が、お客さまに喜ばれるのではないか」と、改善案を出してもらいます。

ただし、思いつくままに作業方法を変えてよいわけではありません。

改善するときは、一度に一つだけ変えます。

変更前の数値を記録する。一つだけ変える。一定期間試す。変更後の数値を確認する。結果が良くなれば、新しい基準にする。結果が悪くなれば、元に戻す。この順序を守ります。

「破」とは、勝手に型を壊すことではありません。

型を理解した人が、よりよい型へ改善することです。

改善するときは、味だけでなく、原価や関係者にとっての価値も確認します。

ナポらー麺では、一般的なカゴメのトマトケチャップに、より高級なカゴメのトマトソースを加えました。

高級な材料だけに偏らず、求める味と原価のバランスが取れる配合を決める。同時に、大会を主催するカゴメの商品のおいしさも伝える。こうした判断の理由まで含めて、現場で共有できる基準にすることが、マネジメントです。

「離」では、新しい仕組みを任せる

改善を繰り返し、店全体を理解した人は、「離」の段階へ進みます。

この段階では、次のような仕事を任せます。

・新商品の開発
・新人教育の仕組みづくり
・厨房レイアウトの改善
・新店舗の立ち上げ
・新しい販売方法の開発

経営者が答えを与えるのではなく、目的と判断基準を共有し、方法は本人に考えてもらいます。

しかし、誰にでも、いきなりここまで任せるわけではありません。

「守」を正確に実践できる。「破」で改善成果を出している。こうした条件を満たした人が、「離」へ進むことができます。

東京と氷見の連携でつないだ4,555杯

2022年、久保社長の「麺屋いく蔵」は、東京ラーメンフェスタへ初出店しました。

提供した商品は、ナポらー麺ではありません。「氷見イワシの富山ブラック 氷見ツの黒 2022スペシャル」でした。

麺には氷見特産のはと麦を練り込み、氷見産片口イワシをたっぷり使った出汁で、富山ブラックの濃さを残しながら、白ごはんがなくても最後まで食べられる、コクと旨みのあるマイルドな味に整えました。

全国的には、まだ無名の店でした。周囲には、有名店がひしめいていました。

ところが、2日目には行列ができ、用意していた1,150杯を17時前に完売しました。

自家製麺がなくなったとき、他店から麺100玉を借りて販売を続けるか、久保社長は迷いました。自分たちの麺には氷見のはと麦が練り込まれており、借りる麺とは違ったからです。

ラーメンデータバンクの大崎会長にも助けていただき、最終的には、自家製麺ではないことをお客さまへ正直に伝えたうえで、18時30分から提供を再開しました。

その100杯も、約20分で完売しました。

最も忙しい時間帯には、1時間に約200杯を提供しました。5日間の総提供数は、4,555杯でした。

この4,555杯は、会場にいたメンバーだけでつくった数字ではありません。

首藤店長夫妻。氷見店から応援に駆けつけた谷内店長。アルバイトリーダー。急きょ応援に来た仲間。こうした多くの人が、それぞれの役割を果たしました。

氷見に残った社員は、はと麦入りの自家製麺を毎日つくり、チャーシューとともに東京へ送り続けました。

一方、会場の冷蔵庫には容量の限界があります。

現地の売れ行きと在庫を確認しながら、氷見での製造量、出荷のタイミング、東京側の保管量を調整する必要がありました。

会場の接客と調理だけでなく、氷見での製造、出荷、在庫管理まで、離れた二つの現場が同じ基準と目的で動いたのです。

1時間に200杯とは、平均すれば18秒に一杯の割合です。もちろん、一人が18秒で一杯を完成させたわけではありません。

麺を茹でる人。スープを準備する人。盛り付ける人。トッピングを載せる人。商品を渡す人。それぞれが決められた役割を、同じ基準で正確に繰り返したから可能になったのです。

商品がおいしいだけでは、4,555杯を安定して提供できません。

おいしい商品を大勢で、速く、安定して提供する仕組みが必要です。さらに、予定外の事態が起きても守るべき品質と、お客さまに伝えるべき情報の基準が欠かせません。

人材育成の5段階

皆さまの店でも、次の順序で人を育ててください。

1.見本を見せる
完成品と正しい作業を、最初に見せます。何を目指すのかが分からなければ、練習できません。

2.数字で教える
重量、温度、時間、量、位置を明確にします。「適量」「少々」「いい感じ」という表現を減らします。

3.同じ作業を繰り返す
一度できただけで合格にせず、10回連続で基準を満たせるかを確認します。

4.一つだけ改善させる
基本を守れるようになったら、改善提案を出してもらいます。変更前後の数字を比較します。

5.成果を確認して、任せる範囲を広げる
年齢や勤務年数だけで判断しません。再現性と改善成果を見て、商品開発や新人教育を任せます。

任せ方を間違える3つの原因

人が育たない店には、よく似た原因があります。

1.教える前に任せる
「見て覚えろ」だけでは、教える人によって伝わる作業の型が異なってしまいます。

2.合格前に自由を与える
基本を再現できない状態で自由を与えると、品質にばらつきが生じます。

3.いつまでも任せない
基本を守り、改善の成果も出している人に、いつまでも決められた作業しか任せなければ、店長候補は育ちません。

人材育成では、放任も、過剰な管理も問題です。成長段階に合わせて、任せる範囲を変える必要があります。

守破離による人材評価表

スタッフ一人ひとりについて、次の項目を確認してください。

【守の段階】

・決められた材料と分量を守れる
・温度と時間を守れる
・見本どおりに盛り付けられる
・忙しい時間帯でも品質が変わらない
・指摘されたことを素直に修正できる

【破の段階】

・問題点を発見できる
・改善案を言葉と数字で説明できる
・一度に一項目だけ変えて比較できる
・改善結果を記録できる
・良い方法を他のスタッフへ教えられる

【離の段階】

・新商品を開発できる
・新しい作業の仕組みをつくれる
・人を育てられる
・店全体の利益を考えて判断できる
・店主が不在でも最終判断ができる

この評価表を使えば、「勤務年数が長いから店長にする」「真面目だから全部任せる」という曖昧な人事を減らすことができます。

世界麺未来戦略研究所 第5理論

「人材育成とは、自由に任せることではなく、任せる自由を段階的に広げることである」

「守」ができない人に、「破」を任せてはいけません。「破」を経験していない人に、「離」を求めてもいけません。

まず、正しい型を身につける。次に、その型を改善する。最後に、自分で新しい型をつくる。

経営者の役割は、いつまでもすべてを自分で決めることではありません。スタッフが今、「守」「破」「離」のどの段階にいるのかを見極め、次に進むための課題と権限を与えることです。

人が育つ店とは、最初から優秀な人を集めた店ではありません。普通の人が、一段ずつ成長できる仕組みを持った店です。

経営者への問い

あなたは、「守」の合格基準を示さないまま、スタッフへ「自分で考えて動け」と求めていないでしょうか。

大和ラーメン学校では、ラーメンづくりの技術だけでなく、誰がつくっても同じ品質を再現できる数値管理と、繁盛店を運営するための経営を学ぶことができます。

店主一人の技術を、スタッフ全員が再現できる仕組みに変えたい方は、ぜひご覧ください。

世界麺未来戦略研究所からのご提案

世界麺未来戦略研究所は、世界の成功事例、AI、商品開発、食感創造、生産性、健康、ブルーゾーン、スーパーアクティブ高齢者、海外展開、人口減少、人手不足、経営戦略を研究し、世界の麺文化を進化させることを目指しています。

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日本の麺文化は、一社だけでは進化できません。業界全体で学び、知恵を持ち寄り、未来を創ることで、日本の麺文化を世界へ広げていきたいと考えています。

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藤井 薫(ロッキー藤井)

株式会社大和製作所、株式会社讃匠を創業。
令和5年 秋の叙勲にて「旭日単光章」受章。

1948年5月、香川県坂出市生まれ。国立高松工業高等専門学校機械工学科卒業。川崎重工株式会社に入社し、航空機事業部機体設計課に配属。その後、独立し、1975年に大和製作所を創業。

過去48年以上にわたり、麺ビジネスを一筋に研究し麺ビジネスの最前線で繁盛店を指導。麺専門店の繁盛法則について全国各地で公演を行う。小型製麺機はベストセラーとなり、業界トップシェアを誇る。
「麺店の影の指南役」「行列の仕掛け人」として「カンブリア宮殿」「ありえへん∞世界」「スーパーJチャンネル」等、人気TV番組に出演するほか、メディアにも多数取り上げられる。
また、2000年4月にうどん学校、2004年1月にラーメン学校とそば学校を開校し、校長に就任。

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