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売上が落ちると、メニューを増やしたくなる

多くの飲食店で、よく起きることがあります。

売上が伸びない。
お客さまが減った。
新規客が増えない。

すると、次のような発想になりがちです。

新メニューを作ろう。
定食を増やそう。
丼を追加しよう。
サイドメニューを増やそう。

もちろん、売上を伸ばしたいという気持ちはよく分かります。
しかし私は、ここに大きな落とし穴があると思っています。

なぜなら、
メニューを増やすことは、複雑さを増やすこと
でもあるからです。

メニューが増えると、何が起きるのか

メニューが増えると、現場ではさまざまな負担が増えていきます。

  • 仕込みが増える
  • 在庫が増える
  • ロスが増える
  • 教育が難しくなる
  • オペレーションが複雑になる
  • 提供時間が長くなる
  • 品質が不安定になる

つまり、売上を増やそうとしてメニューを増やした結果、
利益を減らしてしまう
ことがあるのです。

飲食店は、売上だけで成り立っているわけではありません。
仕込み、在庫、人件費、教育、提供スピード、品質安定性。
これらすべてが利益に影響します。

実際、多くの飲食店は、売上ではなく、
複雑さとの戦い
に負けています。

だからこそ、これからの外食経営では、何を増やすか以上に、
何を減らすか
が重要になります。

世界の繁盛店は、逆をやっている

世界の成功企業を見ると、実は逆のことをしています。

メニューを増やすのではなく、メニューを絞る。

そして、

  • 品質を上げる
  • 生産性を上げる
  • 再現性を上げる
  • 提供スピードを上げる
  • ブランドを明確にする

この方向へ進んでいます。

つまり、世界の繁盛店は、足し算で強くなっているのではありません。
引き算によって、強さを際立たせているのです。

一鶴は、引き算経営の最高事例

香川県には、世界に誇れる外食企業があります。

一鶴 です。

一鶴の中心商品は、

  • おやどり
  • ひなどり

です。

極めてシンプルです。
しかし、70年以上にわたり、圧倒的な支持を受け続けています。

なぜでしょうか。

それは、メニューを増やすことよりも、
一つの商品価値を磨き続けてきたからです。

味。
焼き方。
香り。
脂。
食べ方。
ビールとの相性。
店の空気。

すべてが、骨付鳥を中心に設計されています。

つまり、一鶴は、足し算で強くなったのではありません。

引き算によって、圧倒的な個性を作った店なのです。

何をやるかを明確にする。
そして、それ以外をむやみに増やさない。
この強さは、非常に学ぶべきものがあります。

一風堂も同じである

一風堂も非常に参考になります。

一風堂は世界各国へ展開していますが、経営の中心にある商品は非常にシンプルです。

  • 白丸元味
  • 赤丸新味
  • からか麺

もちろん、限定商品や地域ごとの商品はあります。
しかし、ブランドの中心は明確です。

だから、品質が安定する。
教育しやすい。
海外展開しやすい。
オペレーションが組みやすい。
お客さまにも伝わりやすい。

結果として、一風堂は世界ブランドになりました。

ここでも重要なのは、商品数の多さではありません。

何で勝つのかが明確であることです。

世界の成功企業は「主力食材」も絞っている

さらに興味深いことがあります。

一鶴。
Nando’s。
Jollibee。

世界で成功している外食企業を見ると、共通して チキン を中心食材にしている事例が多くあります。

これは偶然ではありません。

チキンには、外食経営において大きな優位性があります。

  • 牛肉より安定供給しやすい
  • 豚肉より宗教的制約が少ない
  • 比較的価格が安定しやすい
  • 高タンパクで健康イメージがある
  • 牛肉に比べて環境負荷が低く、サステナブルな食材としても注目されている

つまり、チキンは、

  • 健康性
  • 供給安定性
  • コスト競争力
  • 宗教対応力
  • 環境適性

を兼ね備えた食材です。

世界の成功企業は、商品を絞るだけではありません。
食材も絞っています。

そして、その食材を徹底的に磨いています。

ここにも、引き算経営の本質があります。

Chipotleも同じ発想だった

アメリカの Chipotle も、同じ発想です。

Chipotleの商品数は、決して多くありません。

基本は、

  • ブリトー
  • ボウル
  • タコス
  • サラダ

です。

しかし、ここからお客さまは自分で組み合わせることができます。

肉を選ぶ。
豆を選ぶ。
ライスを選ぶ。
ソースを選ぶ。
トッピングを選ぶ。

つまり、Chipotleは、商品数は少ない。けれど、選択肢は多い。

ここが非常に重要です。

単純にメニューを増やしているのではありません。
少ない基本商品を軸に、お客さまが自分で選べる仕組みを作っているのです。

これは、現代の外食において非常に強い考え方です。

これからの競争は「選択設計」である

私は、これからの外食競争は、
メニュー数競争ではない
と思っています。

重要なのは、選択設計です。

お客さまは、100種類のメニューを求めているわけではありません。

求めているのは、自分で選んだ満足感です。

だから、麺ビジネスでも次のような設計が重要になります。

  • 麺を選ぶ
  • だしを選ぶ
  • スープを選ぶ
  • トッピングを選ぶ
  • 温かい・冷たいを選ぶ
  • 量を選ぶ
  • 食感を選ぶ

この方が、生産性も高く、満足度も高くなります。

メニューを無限に増やすのではありません。
基本構造はシンプルにする。
そのうえで、お客さまが選べる余地を作る。

これが、これからの外食に必要な選択設計です。

高AUV店舗ほどシンプルである

これまで私は、世界の高AUV企業を研究してきました。

そこで気づいたことがあります。

高AUV店舗ほど、シンプルであるということです。

なぜなら、シンプルな店は強いからです。

  • お客さまの判断が早い
  • 注文が早い
  • 提供が早い
  • 教育が早い
  • 品質が安定する
  • 回転率が上がる
  • 在庫管理がしやすい
  • ロスが減る

結果として、生産性が高まります。

シンプルであることは、単なる見た目の話ではありません。
経営の強さそのものです。

高AUV店舗は、複雑さを増やして売上を作っているのではありません。
シンプルな構造で、大きな売上を作っているのです。

麺ビジネスも同じである

これからの麺ビジネスも同じです。

うどん20種類。
蕎麦20種類。
丼20種類。
定食10種類。

このように何でも揃える時代ではありません。

重要なのは、

  • 少数精鋭の商品
  • 高い品質
  • 高い再現性
  • 高い生産性
  • 分かりやすい選択設計

です。

何でも売る店ではなく、何で勝つ店なのか。
ここを明確にすることが重要です。

麺で勝つのか。
だしで勝つのか。
食感で勝つのか。
スピードで勝つのか。
トッピングの組み合わせで勝つのか。
店外売上で勝つのか。

この軸が明確であれば、メニューはむやみに増やさなくても強くなれます。

むしろ、軸が明確な店ほど、お客さまの記憶に残ります。

大和製作所の役割

私は、大和製作所は単なる製麺機メーカーではないと思っています。

私たちの役割は、麺を作ることだけではありません。
麺ビジネスを設計することです。

そのためには、

  • 麺設計
  • 食感設計
  • だし設計
  • メニュー設計
  • オペレーション設計
  • 生産性設計
  • 選択設計

まで考える必要があります。

どの麺で勝つのか。
どの食感で記憶に残すのか。
どの商品に集中するのか。
どこを選ばせ、どこを標準化するのか。
どのように高い品質を、少ない負担で再現するのか。

ここまで考えて初めて、麺ビジネスは強くなります。

だから私は、大和製作所を
世界の食感研究所
と呼んでいます。

さいごに

皆さまのお店には、本当に必要なメニューが何品あるでしょうか。

利益を生んでいる商品は何でしょうか。
お客さまに選ばれている商品は何でしょうか。
スタッフが覚えやすいメニュー構成になっているでしょうか。
仕込みや在庫は複雑になりすぎていないでしょうか。
その商品は、お店の強みを明確に伝えているでしょうか。

ぜひ、現場のご意見をお聞かせください。

大和メルマガは、読者の皆さまと共に、
世界の麺ビジネスの未来を研究する場です。

世界の繁盛店は、足し算ではなく、引き算で強くなっています。

一鶴は、骨付鳥に集中した。
一風堂は、主力ラーメンを磨いた。
Nando’sとJollibeeは、チキンに集中した。
Chipotleは、商品数を絞りながら、選択肢を広げた。

成功企業に共通するのは、
何でもやることではなく、何に集中するかを決めていることです。

これからの麺ビジネスは、
メニュー数競争から、選択設計競争へ進む。

そして、
足し算経営から、引き算経営へ進む。

私は、そう考えています。

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Picture of 藤井 薫(ロッキー藤井)
藤井 薫(ロッキー藤井)

株式会社大和製作所、株式会社讃匠を創業。
令和5年 秋の叙勲にて「旭日単光章」受章。

1948年5月、香川県坂出市生まれ。国立高松工業高等専門学校機械工学科卒業。川崎重工株式会社に入社し、航空機事業部機体設計課に配属。その後、独立し、1975年に大和製作所を創業。

過去48年以上にわたり、麺ビジネスを一筋に研究し麺ビジネスの最前線で繁盛店を指導。麺専門店の繁盛法則について全国各地で公演を行う。小型製麺機はベストセラーとなり、業界トップシェアを誇る。
「麺店の影の指南役」「行列の仕掛け人」として「カンブリア宮殿」「ありえへん∞世界」「スーパーJチャンネル」等、人気TV番組に出演するほか、メディアにも多数取り上げられる。
また、2000年4月にうどん学校、2004年1月にラーメン学校とそば学校を開校し、校長に就任。

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