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仕込み・在庫・教育を軽くするメニュー管理

おはようございます。大和製作所の創業者、ロッキー藤井です。

  • 「毎日、朝早くから仕込みをしている」
  • 「営業時間が終わっても、片付けと翌日の準備が終わらない」
  • 「売上はあるのに、なぜか利益が残らない」

このような店では、スタッフの働き方だけに原因を求めてはいけません。スタッフが遅いのではなく、仕事の種類が多すぎる可能性があります。その大きな原因の一つが、増えすぎたメニューです。

商品が一つ増えると、メニュー表に一行増えるだけではありません。

  • 仕入れる材料が増える
  • 検品する材料が増える
  • 保管場所が増える
  • 仕込みが増える
  • 調理手順が増える
  • スタッフへ教える内容が増える
  • 売れ残れば、廃棄も増える

商品を一つ増やすと、その商品に関係する仕入れ、保管、調理、教育など、複数の管理作業が増えるのです。

売価から原材料費を引くだけでは本当の利益は分からない

多くの店では、商品の収益性を見る際に、「売価 − 原材料費」を粗利益の目安にします。もちろん、この数字は重要です。ただし、これは商品を比較するための簡易的な指標で、人件費などを差し引いた最終的な利益ではありません。実際の店舗では、商品を提供するために、次のような時間と費用もかかっています。

  • 仕入れの手間
  • 納品時の確認
  • 下処理と仕込み
  • 冷蔵庫や冷凍庫の場所
  • 注文が入った時の作業切り替え
  • 新人への教育
  • 器具の洗浄
  • 売れ残った材料の廃棄

この時間と費用まで含めて、初めて一品の本当の利益が見えてきます。粗利益が大きく見えても、注文が少なく、専用の食材と作業が多ければ、店全体の利益を下げることがあります。

忙しさには売上を生む忙しさと生まない忙しさがある

同じ忙しさでも、内容は二つに分かれます。一つは、お客さまへ価値を届け、売上と利益を生む仕事です。もう一つは、増えすぎた種類を維持するための仕事です。

  • 少量しか使わない食材を数える
  • ほとんど注文されない商品の仕込みをする
  • 複雑な盛り付けを覚える
  • 期限切れになった材料を捨てる
  • 注文が入るたびに、厨房の流れを変える

後者の仕事は、スタッフを忙しくしますが、お客さまの満足度や利益には十分つながりません。

経営者が減らすべきなのは、人ではありません。まず、売上を生まない忙しさです。

メニューが多いほど在庫は見えなくなる

食材の種類が増えると、在庫管理は急に難しくなります。

  • どこに何があるのか
  • いつ仕入れたのか
  • いつまで使えるのか
  • 今日、何食分必要なのか
  • 誰が発注したのか

種類が多いと、在庫量が少なく見えても、合計金額は大きくなります。冷蔵庫の奥に、少しずつ残った食材が増えていきます。発注漏れを恐れて多めに仕入れると、さらに廃棄が増えます。

廃棄が増えたとき、材料費の値上がりだけを問題にしていないでしょうか。原材料費の上昇に加えて、使い切れない材料が利益を失わせている可能性もあります。

一蘭は絞った商品を細かく管理する

一蘭は、中心となる商品を天然とんこつラーメンに絞り込む方針を示しています。ただし、店舗などによる商品展開の違いはあります。商品を絞っても、管理まで簡単に済ませているわけではありません。

  • スープの温度や濃度を確認する
  • 天候や気温、湿度などを考慮し、製麺と熟成を調整する
  • 茹で釜の温度を一定に保つ
  • 湯切りの回数を決める
  • 完成したラーメンを、最もよい状態で提供する
  • 清掃場所ごとに、1時間、4時間、12時間、1日、1週間などの周期を決める

商品を絞ったからこそ、一杯の品質と店舗管理を深く掘り下げることができます。仕事を減らして、管理を粗くしたのではありません。不要な種類を減らし、本当に重要な仕事の精度を上げているのです。

参考:一蘭の商品品質への取り組み

参考:一蘭の温度と濃度の管理

参考:一蘭の衛生管理

海外の専門店も集中によって現場を強くする

米国のRaising Cane’s(レイジング・ケインズ)は、チキンフィンガーの食事を中心に据えるレストランチェーンです。同社は中心となる商品を「ONE LOVE」と表現し、顧客、働く仲間、地域、企業文化も大切にしています。

中心となる商品が明確であれば、スタッフが習得すべき作業も整理しやすくなります。

  • 何を仕入れるのか
  • 何を正確につくるのか
  • どの品質を守るのか
  • 何をお客さまへ届けるのか

何に注意を向けるべきかがそろえば、管理の焦点も明確になります。メニューを絞ることは、単に原価を下げる方法ではありません。スタッフ全員の注意を、同じ品質へ向ける方法なのです。

参考:Raising Cane’sの中心商品と経営方針

商品が増えるほど新人が覚える仕事も増える

新人が覚えることは、レシピだけではありません。

  • 材料の場所
  • 仕込みの順序
  • 使用する器具
  • 加熱時間
  • 盛り付け
  • 提供する器
  • アレルギーへの対応
  • 片付けと洗浄

商品が増えるたびに、これらを覚える必要があります。教える側も、人によって説明が変わります。新人は、何が正しいのか分からなくなります。覚える内容が多すぎると、看板商品の基本まで曖昧になります。

そして、ミスが起きると、本人の能力や注意力の問題にされます。しかし、本当の原因は、店が一度に覚えさせる仕事を増やしすぎたことかもしれません。人を早く育てたいなら、教育方法を変える前に、教える仕事の種類を減らすことです。

メニューごとの管理原価を確認する

ここでいう「管理原価」は、原材料費だけでは見えない作業時間や保管、教育、廃棄などの負担を指します。すべての商品について、次の7項目を確認してください。

1. 専用食材はいくつあるか

他の商品に使えない食材が多いほど、廃棄の危険が高まります。

2. 仕込みに何分かかるか

1日当たりの時間だけでなく、1週間、1カ月の合計時間を出します。

3. 保管場所をどれだけ使うか

冷蔵、冷凍、常温のどこを、どれだけ占有しているかを確認します。

4. 1週間に何食売れるか

売れる回数が少なければ、一食当たりの管理負担は大きくなります。

5. 廃棄金額はいくらか

商品別に、使い切れずに捨てた材料を記録します。

6. 提供に何分かかるか

その商品が入った時、他の注文を遅らせていないかも確認します。

7. 教育に何時間かかるか

新人が一人で正しくつくれるまでの時間を記録します。

この7項目を確認すると、売価と原材料費だけでは見えなかった負担が分かります。

やめる商品を店主の感情だけで決めない

メニューを減らすとき、店主は迷います。「昔から出している」「常連のお客さまが頼むかもしれない」「せっかく開発したのだから、やめるのは惜しい」。

しかし、過去にかけた時間は、これから残す理由にはなりません。

判断するときは、次の4つを確認します。

  • 売れているか
  • 利益を生んでいるか
  • 看板商品の価値を高めているか
  • 店の使命を伝えているか

どれにも当てはまらなければ、休止する候補です。

完全に削除する前に、2〜4週間、提供を休止してみます。これは初期判断の目安です。季節や営業条件、常連客の来店間隔も踏まえて確認します。

  • お客さまから、どれだけ要望があるか
  • 売上と客単価はどう変わるか
  • 仕込み時間と廃棄はどれだけ減るか
  • 看板商品の注文は増えるか

数字を見てから、最終判断を行います。

減らして生まれた時間を何に使うか

メニューを減らしても、その時間を別の不要な仕事で埋めてはいけません。生まれた時間は、お客さまの価値へ戻します。

  • 看板商品の味を確認する
  • 麺の状態を確認する
  • スープの温度を測る
  • 盛り付けを整える
  • 提供時間を短くする
  • 店内を清潔にする
  • お客さまの反応を聞く
  • スタッフを教育する

減らした結果、品質が上がらなければ、本当の改善にはなりません。仕事を減らす目的は、楽をすることではありません。重要な仕事へ集中することです。

明日からできるメニュー管理の7段階

1. 全商品の販売数を4週間記録する

感覚ではなく、注文数を数字で把握します。

2. 専用食材に印を付ける

一品にしか使わない食材を、すべて洗い出します。

3. 仕込み時間を測る

商品ごとの下処理、仕込み、注文後の調理、片付けにかかる時間を分けて計測します。

4. 商品別の廃棄を記録する

何を、いくら、なぜ捨てたのかを毎日残します。

5. 教育項目を数える

新人が覚える手順を商品ごとに書き出します。

6. 一品ずつ休止テストをする

売上、利益、提供時間、お客さまの反応を比較します。

7. 減らした時間を品質改善へ振り向ける

看板商品の味、食感、温度、盛り付け、提供速度を高めます。

改善前後で確認する数字

メニュー整理を行った後は、次の数字を比較してください。

  • 食材の種類
  • 在庫金額
  • 廃棄金額
  • 1日の仕込み時間
  • 平均提供時間
  • 時間当たりの提供数
  • 新人の教育時間
  • 看板商品の注文比率
  • 原価率
  • 営業利益

売上が少し下がっても、廃棄や実際の人件費が減ることで、利益が増える場合があります。在庫の適正化は、保管の負担や廃棄リスクを減らし、資金繰りの改善にもつながります。ただし、在庫金額が減っただけで、その分が利益になるわけではありません。

経営者が見るべきなのは、メニューの数でも、売上だけでもありません。限られた人と時間で、どれだけ高い価値と利益を生み出せたかです。

世界麺未来戦略研究所 第15理論

「人が忙しいのではない。管理する種類が多すぎると、店が忙しくなる」

忙しさを解決するために、さらに人を増やす。人を増やすと、教育と管理が増える。その前に、不要な仕事を減らす必要があります。

商品を絞り、食材を共通化し、仕込みを減らす。教育する内容を整理し、廃棄を減らす。そして、生まれた時間を品質向上へ使う。これが、厨房の負担を軽くしながら利益を高める管理です。

経営者への問い

あなたのお店で、最も注文数が少ない商品は何でしょうか。その商品を維持するために、1週間で何時間を使い、いくらの在庫と廃棄が発生しているでしょうか。

もし答えられないのであれば、その商品の本当の収益性は、まだ分かっていません。まず一品を選び、販売数、仕込み時間、専用食材、廃棄を記録してください。一品の数字が見えると、店全体の見えない忙しさも見え始めます。

大和製作所では、自家製麺の技術だけでなく、商品設計、厨房動線、生産性向上、店舗運営についても実践的な支援を行っています。

忙しさを人の頑張りで補うのではなく、仕事の仕組みから改善したい方は、ぜひご相談ください。

世界麺未来戦略研究所からのご提案

世界麺未来戦略研究所は、世界の成功事例、AI、商品開発、食感創造、生産性、健康、ブルーゾーン、スーパーアクティブ高齢者、海外展開、人口減少、人手不足、経営戦略を研究し、世界の麺文化を進化させることを目指しています。

今回の内容が少しでも皆さまの商品開発や経営の参考になりましたら、同業の経営者、料理人、お取引先、ご友人へ、このメルマガをご紹介ください。

日本の麺文化は、一社だけでは進化できません。業界全体で学び、知恵を持ち寄り、未来を創ることで、日本の麺文化を世界へ広げていきたいと考えています。

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藤井 薫(ロッキー藤井)

株式会社大和製作所、株式会社讃匠を創業。
令和5年 秋の叙勲にて「旭日単光章」受章。

1948年5月、香川県坂出市生まれ。国立高松工業高等専門学校機械工学科卒業。川崎重工株式会社に入社し、航空機事業部機体設計課に配属。その後、独立し、1975年に大和製作所を創業。

過去48年以上にわたり、麺ビジネスを一筋に研究し麺ビジネスの最前線で繁盛店を指導。麺専門店の繁盛法則について全国各地で公演を行う。小型製麺機はベストセラーとなり、業界トップシェアを誇る。
「麺店の影の指南役」「行列の仕掛け人」として「カンブリア宮殿」「ありえへん∞世界」「スーパーJチャンネル」等、人気TV番組に出演するほか、メディアにも多数取り上げられる。
また、2000年4月にうどん学校、2004年1月にラーメン学校とそば学校を開校し、校長に就任。

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