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一品への集中を選ばれるブランドへ変える

おはようございます。大和製作所の創業者、ロッキー藤井です。

  • 「近所に新しいラーメン店ができたので、うちも種類を増やそう」
  • 「家族連れを逃したくないので、丼も定食も用意しよう」
  • 「売上が足りないので、流行の商品を加えてみよう」

一つひとつには、もっともな理由があります。しかし、それを繰り返した結果、初めてのお客さまに、何を食べてほしい店なのかが伝わらなくなることがあります。

月曜日は、一品を深く磨く商品設計を、水曜日は、仕込み、在庫、教育を軽くするメニュー管理をお伝えしました。本日は、その集中を、お客さまから選ばれるブランドへつなげる方法を考えます。

店名を聞いた時に 何が浮かぶか

ブランドと聞くと、立派なロゴや、おしゃれな看板を思い浮かべる方もいるでしょう。しかし、小さな麺専門店が最初に確認すべきなのは、お客さまが店名から何を思い出すかです。

「あの店なら、あの一杯」。店名と食べたい商品が結びついているでしょうか。その一杯のどこが好きなのかまで、お客さまが話せるでしょうか。

メニューを減らして厨房が楽になっても、お客さまが来店する理由まで弱くなれば、経営の改善にはつながりません。

残す商品へ力を集中し、その価値を伝え、食べて確かめていただく。ここまでを一緒に進める必要があります。

一蘭は 商品と食べる体験を結びつける

国内の事例として、今週取り上げてきた一蘭を、ブランドの視点から見てみます。一蘭は、公式サイトで、中心となる天然とんこつラーメンに研究を集中する方針を説明しています。スープに合わせた麺と、赤い秘伝のたれを組み合わせ、一杯をつくっています。

さらに、味集中カウンター、好みを記入するオーダー用紙、替玉注文システムなど、食べる体験にも特徴があります。店舗などによる商品展開の違いはありますが、ブランドの中心に何を置いているかは明確です。

私がここから学ぶのは、看板商品を決めるだけでなく、その商品を楽しむ方法までそろえることです。

看板だけで専門性を伝えても、実際の一杯や接客が期待と違えば、次の来店にはつながりません。商品、注文、提供、食べる時間が、同じ価値を支える必要があります。

参考:一蘭の天然とんこつラーメンと独自の提供システム

海外でも 中心商品を変えずに選び方をつくる

米国のRaising Cane’s(レイジング・ケインズ)は、チキンフィンガーの食事を事業の中心に置き、それを「ONE LOVE」と表現しています。公式サイトでは、注文を受けてから調理することも説明しています。

メニューには、チキンの本数や付け合わせの異なるセット、サンドイッチなどがあります。商品名が複数あっても、中心となる食材と食べる楽しみは共通しています。

ここから私が考えるのは、集中することと、お客さまの選択肢をなくすことは、同じではないということです。麺専門店でも、看板の麺とだしを中心に据え、量やトッピング、セットで選び方をつくれます。ただし、選択を増やすたびに、専用食材や作業が増えすぎないかを確認します。

両社の成長を、商品を絞ったことだけで説明することはできません。それでも、何を届ける店なのかを明確にする実例として、小さな専門店にも学べる点があります。

参考:Raising Cane’sのブランドについて

参考:Raising Cane’sのメニュー

専門店という名前だけでは違いにならない

「ラーメン専門店」「自家製麺の店」と伝えるだけでは、近隣の同じような店と比較されます。その次に必要なのは、どのお客さまの、どんな食べたい気持ちに応えるのかを決めることです。

  • 昼休みに、待ち時間を短くして、できたてを食べたいのか
  • 休日に、地元の食材と麺の組合せを、ゆっくり楽しみたいのか
  • 毎日の昼食として、飽きずに通える一杯が欲しいのか

目的が変われば、麺、具材、価格、座席、提供時間の設計も変わります。

すべてのお客さまへ同じように応えようとするより、自店が最も力を発揮し、お客さまに喜んでいただける場面を明確にしてください。

自店の特徴を お客さまの言葉へ置き換える

私が大和製作所で取り組んできたのは、機械設計と料理の経験を結びつけ、職人の勘や経験に頼っていた技術を、数字と手順で共有できるようにすることでした。

麺専門店にも、店主には当たり前で、お客さまには知られていない強みがあります。

  • 配合を変えている理由
  • 麺の厚みを調整する理由
  • 地元の食材を使う理由
  • 茹でたてで提供するために工夫していること

それを、技術の説明だけで終わらせず、食べる方にとっての楽しみへ言い換えます。

例えば、次のように、お客さまが食べるときの楽しみまで伝わる商品説明にします。

  • 「自家製麺です」から、「魚介のだしを楽しめる、歯切れのよい細麺です」へ
  • 「地元小麦を使用」から、「噛むほどに小麦の香りを楽しめる一杯です」へ

説明した特徴が、実際に食べて分かることが大切です。伝え方だけを磨いても、料理が追いつかなければ、期待を裏切ってしまいます。

店頭から一杯まで同じ約束を届ける

中心となる価値が決まったら、お客さまが見る場所を一つずつ確認します。

  • 店頭の写真は、看板商品になっているか
  • メニューを開いて、最初に食べてほしい一品が分かるか
  • スタッフは、その特徴を短く説明できるか
  • 実際の麺、温度、盛り付けは、その説明と合っているか

SNSではこだわりの専門店を伝えながら、店頭には関係の薄い料理の写真が並んでいる。この状態では、初めてのお客さまは迷います。

すべてを同じデザインにする必要はありません。どこから知っても、同じ一杯と、その店らしい価値にたどり着けるようにします。

お客さまが紹介しやすい一文をつくる

私は麺学校の経営講義で、今来てくださっているお客さまが、新しいお客さまを連れてきてくださる店を目指そうと伝えてきました。

その出発点は、今のお客さまの満足です。紹介を頼む前に、「誰かにも食べてもらいたい」と思える一杯と時間を届ける必要があります。そして、満足したお客さまが、友人へ何と説明できるかも重要です。

「いろいろあって便利な店」より、「あの魚介だしと細麺を食べてみて」と話せる方が、食べに行く理由は具体的になります。

店側で一文を考えたら、お客さまの感想と比べてください。「この店を友人に紹介するとしたら、何と説明しますか」。自然に答えていただける言葉の中に、伝わっている価値が見えます。店主が推したい特徴と違うなら、その理由を確かめます。

紹介は、満足があれば必ず起こるものではありません。来店のきっかけを伺いながら、どの価値が人から人へ伝わったのかを確かめてください。

4週間で集中する価値を確かめる

一度に看板、価格、商品、営業時間をすべて変えると、何が結果に影響したのか分からなくなります。まず、看板商品一品と、その伝え方を対象に試します。

1. 第1週は現在地を記録する

商品別の注文数、一品当たりと商品別合計の粗利益額、仕込み時間、提供時間を確認します。お客さまにも、来店理由と印象に残った一品を伺います。すでにある直近4週間の記録も活用してください。

2. 第2週は看板商品の伝え方をそろえる

店頭、メニュー、スタッフの説明で、一番伝えたい特徴をそろえます。看板商品を知っていても注文しない理由も確認します。

3. 第3週は周辺商品を一品だけ見直す

看板商品との関係が薄く、専用食材や仕込みの負担が大きい商品を、休止候補として選びます。常連客や家族客の利用目的を損なわないか、反応を記録します。

4. 第4週は数字と感想を合わせて判断する

同じ曜日や営業条件に近い日で比較します。天候や地域行事の影響も確認し、4週間は初期判断の区切りとします。季節商品や来店頻度の低い店では、さらに確認を続けます。

注文比率だけで成功と判断しない

商品を減らすと、看板商品の注文比率は上がりやすくなります。しかし、店全体の客数が減っていれば、それだけで成功とは言えません。

看板商品の販売数、店全体の粗利益額、客数、客単価、廃棄、総労働時間、提供時間を一緒に見ます。

紹介による来店や再来店も、確認できる範囲で継続して追います。

看板商品がよく知られるようになったか。実際に注文され、満足につながったか。現場が無理なく提供できたか。この流れのどこに課題があるかを確認すれば、次に直す場所が分かります。

世界麺未来戦略研究所 第16理論

「店の中心を一品に定め、その価値を商品と体験で届け続けることが、選ばれるブランドを育てる」

月曜日に考えた、一品を深く磨く商品設計。水曜日に考えた、仕込み、在庫、教育を軽くする管理。本日は、その集中を、お客さまが思い出し、紹介できる価値へつなげました。

商品を減らしただけでは、ブランドは育ちません。生まれた時間を使って一杯を磨き、約束した品質を毎日届ける。その積み重ねが、自店を選んでいただく理由になります。

経営者への問い

あなたのお店の名前を聞いた時、お客さまは、どの一品を思い出すでしょうか。その一品を友人にすすめる時、どんな言葉を使ってくださるでしょうか。今週末、スタッフと、お客さまの言葉を集めてみてください。店主の思いと、お客さまの記憶が重なるところに、磨くべき価値があります。

大和麺学校では、製麺技術だけでなく、商品設計、食感、味づくり、店舗経営について学ぶことができます。

自店を代表する一杯を磨きたい方は、ぜひご覧ください。

世界麺未来戦略研究所からのご提案

世界麺未来戦略研究所は、世界の成功事例、AI、商品開発、食感創造、生産性、健康、ブルーゾーン、スーパーアクティブ高齢者、海外展開、人口減少、人手不足、経営戦略を研究し、世界の麺文化を進化させることを目指しています。

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日本の麺文化は、一社だけでは進化できません。業界全体で学び、知恵を持ち寄り、未来を創ることで、日本の麺文化を世界へ広げていきたいと考えています。

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Picture of 藤井 薫(ロッキー藤井)
藤井 薫(ロッキー藤井)

株式会社大和製作所、株式会社讃匠を創業。
令和5年 秋の叙勲にて「旭日単光章」受章。

1948年5月、香川県坂出市生まれ。国立高松工業高等専門学校機械工学科卒業。川崎重工株式会社に入社し、航空機事業部機体設計課に配属。その後、独立し、1975年に大和製作所を創業。

過去48年以上にわたり、麺ビジネスを一筋に研究し麺ビジネスの最前線で繁盛店を指導。麺専門店の繁盛法則について全国各地で公演を行う。小型製麺機はベストセラーとなり、業界トップシェアを誇る。
「麺店の影の指南役」「行列の仕掛け人」として「カンブリア宮殿」「ありえへん∞世界」「スーパーJチャンネル」等、人気TV番組に出演するほか、メディアにも多数取り上げられる。
また、2000年4月にうどん学校、2004年1月にラーメン学校とそば学校を開校し、校長に就任。

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