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前回は「ラーメン・うどん・そば店の地域1番店戦略 – 独自土俵と永続コンセプト」ついてお伝えしました。今回は、その戦略を具体的に実践に移すための「価値設定」と「実践プラン」について詳しく解説します。
お客様が喜んで高価格を払う「価値設定法」

商品の価値は、価格だけで決まるものではありません。お客様が「この価格でも安い」と感じるほどの価値を提供することができれば、高価格設定は十分に可能です。価格について、最も大切なことは、喜んで来て貰える最高価格を狙うことです。
1.「松竹梅」の法則の応用
単純な価格の3段階ではなく、「価値」の3段階を提示します。「定番のA商品」「Aに特別なトッピングを加えたB商品」「Bに加えて、希少な食材を使った限定のC商品」のように設定することで、お客様は自分の価値観に合った選択肢を選ぶことができ、結果として最も価値の高い商品が選ばれることも少なくありません。
具体例で理解する「松竹梅」の法則
例えば、ラーメン店の場合:
- 梅(基本):醤油ラーメン 800円
- 竹(中級):チャーシュー麺+味玉 1,200円
- 松(最上級):特製ラーメン+高級チャーシュー+希少部位使用 1,800円
このように「価格」ではなく「価値」の段階を作ることで、お客様は自分に合った選択肢を選べ、結果的により価値の高い商品が選ばれやすくなります。
2. 価格の「理由」を分かりやすく伝える
「最高級の食材を使っているから」「手間暇かけて調理しているから」「このサービスを受けられるのは当店だけだから」など、価格の背景にある理由を丁寧に説明します。価値の根拠が明確であれば、お客様は価格に納得し、喜んで対価を支払ってくださいます。
お客様に価格の根拠を明確に説明しましょう:
- 「国産A5ランクの和牛を使用」→ なぜ高いかが分かる
- 「職人が8時間かけて仕込んだスープ」→ 手間がかかることが伝わる
- 「当店でしか味わえない秘伝のタレ」→ 特別感が生まれる
理由が明確なら、お客様は価格に納得して喜んでお支払いいただけます。
3. 比較効果で価格をお得に感じてもらう|「アンカリング効果」
最初に圧倒的な価値を持つ高価格商品(1万円のコースなど)を提示することで、次に提示される商品(3,000円のセットなど)が相対的に安く感じられる心理効果を利用します。
最初に高価格商品を見せる効果を活用:
- 最初に提示:特別コース 10,000円
- 次に提示:おすすめセット 3,000円
10,000円を先に見ることで、3,000円が「お手頃」に感じられる心理効果を利用できます。
明日から実践できる「一鶴式改革プラン」

香川県丸亀市発祥の「骨付鳥 一鶴」は、一つの商品を徹底的に磨き上げ、全国的なブランドに育て上げた好例です。その成功の根幹にある考え方を、明日から実践できるプランとしてご紹介します。
1. 「看板商品を一つだけ」決めて、徹底的に磨き上げる
まずは、自店で「これだけは絶対に負けない」という商品を一つ決めます。その商品の味、見た目、提供方法、全てにおいて、今日よりも明日、明日よりも明後日と、0.1%でも良くするための改善を毎日続けます。
参考例:
- 自店の商品から「絶対に負けない」と言える商品を1つ選ぶ
- その商品だけに集中して、毎日少しずつ改善する
具体例:
- カレー店なら「特製ビーフカレー」だけに集中
- 味、盛り付け、提供スピード、全てを0.1%ずつでも毎日改善
- 「○○といえば△△店」と言われるまで磨き上げる
2. 「マイナス」を「プラス」に変える発想
一鶴の骨付鳥は、食べにくいという側面もあります。しかし、それを「かぶりつく楽しさ」という体験価値に変えました。自店の商品やサービスの弱点や欠点だと思っていることをリストアップし、それを逆手にとって魅力に変えられないかを考えてみてください。
参考例:
- 欠点:骨付き鶏は「食べにくい」
- ↓魅力に変換↓
- 魅力:「豪快にかぶりつく楽しさ」
あなたの店でできること:
- 店の欠点や弱点を書き出す
- 「この欠点を魅力に変えるには?」と考える
- 例:狭い店→「アットホームで特別感のある空間」
3. 「五感を刺激する」演出を考える
一鶴の店舗では、スパイシーな香り、ジュージューという音、熱々の鉄皿など、五感を刺激する演出が随所にあります。
お客様が料理を待つ時間、食べる瞬間、食べ終わった後、それぞれの場面で五感を刺激するような演出ができないか、具体的なアイデアを書き出してみましょう。
一鶴が使っている五感刺激:
- 嗅覚:スパイシーな香りが店内に充満
- 聴覚:鉄皿で「ジュージュー」という音
- 視覚:熱々の鉄皿で迫力のある見た目
- 触覚:熱い鉄皿から伝わる温度感
あなたの店でできる演出例:
- 料理を待つ時間:良い香りで期待感を高める
- 提供の瞬間:音や見た目でインパクトを与える
- 食後:満足感を高める演出を考える
4. 商品の向こう側にある「本当の価値」を見つける
一鶴が販売しているのは、骨付鶏ですが、これは手段であり、一鶴ビジネスのコンセプト(ビジネスの本質)は、お客さまのストレス発散の場の提供です。
一鶴の鶏はスパイシーで塩辛く、ビールが進みます。スパイシーな骨付鶏にかぶりつき、ビールをガンガン飲めば、ストレスの発散が出来るのです。今の世の中は、ストレスのたまった人が多いので、一鶴は、お客さまのストレスの発散をして、大成功しているのです。
一鶴の本質:
- 表面:骨付き鶏を売っている
- 本質:ストレス発散の場を提供している
スパイシーな鶏にかぶりつき、ビールを飲むことで、お客様はストレスを発散できます。現代はストレス社会なので、この「発散の場」に大きな価値があるのです。
これを自分に聞いてみてください:
- お客様は何のために来店するのか?
- 商品の向こう側で、どんな気持ちになってもらいたいか?
- お客様の生活にどんな価値を提供できるか?
まとめ

重要なポイント
- 価格設定は「価値」の3段階で考える
- 価格の根拠を明確に伝える
- 一つの看板商品を徹底的に磨き上げる
- 弱点を逆手にとって魅力に変える
- 五感を刺激する演出を取り入れる
- 商品の向こうにあるビジネスの本質を理解する
地域No.1店舗への道のりは決して簡単ではありませんが、戦略的なアプローチと継続的な実践により、実現可能です。
異業種であっても、お客様に価値を提供し、喜んでいただくという商売の本質は同じです。ぜひ、これらの考え方を皆様のビジネスに置き換えて、一つでも二つでも実践してみてください。
その小さな一歩が、やがて地域で圧倒的な支持を集める「1番店」へと続く、確かな道筋となることを確信しております。