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一品を深く磨いて選ばれる商品設計

おはようございます。大和製作所の創業者、ロッキー藤井です。

  • 「お客さまの好みに応えるため、メニューを増やしたい」
  • 「家族連れにも来てもらえるように、丼や定食も加えたい」
  • 「常連客を飽きさせないために、季節商品を次々に出したい」

このように考える店主は多いと思います。お客さまを喜ばせたいという気持ちは、間違っていません。しかし、メニューを増やせば増やすほど、本当にお客さまの満足度は高くなるのでしょうか。

品数が増えると、お客さまは選ぶのに迷います。厨房では、食材、仕込み、在庫、調理手順が増えます。一つひとつの商品へ注ぐ時間が分散し、看板商品の品質まで下がることがあります。

お客さまが店を出た後に、「あの店は、何がおいしい店だったのだろう」と、記憶に残らないことさえあります。

商品を増やすことは、価値を増やすことではありません。大切なのは、この店でしか食べられない一品を、どこまで深く磨けるかです。

選択肢が多いほど満足度が上がるとは限らない

店側は、メニューが多いほど、お客さまに親切だと考えます。ところが、お客さまの立場では、選択肢が多すぎると迷いが生まれます。

  • どれを注文すればよいのか
  • この店のおすすめは何なのか
  • 選んだ商品より、別の商品がおいしかったのではないか

このような迷いが増えると、注文するまでの時間が長くなります。

初めて来店したお客さまにとって、安心につながるのは、「この店へ来たら、まずこれを食べてください」と言える商品があることです。

看板商品が明確であれば、お客さまは選びやすくなります。店員も自信を持ってすすめることができ、店名と商品が一緒に記憶されます。

一蘭はなぜ一杯に集中するのか

国内の代表的な事例が、一蘭です。同社は公式サイトで、さまざまな麺やスープをつくる知識と技術を、とんこつラーメンのおいしさを磨くために使っていると説明しています。中心となる「天然とんこつラーメン」に、40人以上の専属職人が研究の力を注いでいます。

中心となる商品を絞ることで、研究の力も集中できるのです。

ただし、店舗などによる商品展開の違いはあります。また、一蘭はお客さまの選択肢までなくしたわけではありません。

  • 味の濃さ
  • こってり度
  • にんにく
  • ねぎ
  • チャーシュー
  • 秘伝のたれ
  • 麺のかたさ

一杯の基本は守りながら、お客さまが自分の好みに合わせられるようにしています。つまり、商品数は絞り、満足の形は増やしているのです。ここに重要な商品設計のヒントがあります。

参考:一蘭の天然とんこつラーメンと提供システム

品数ではなく一品の深さを増やす

一つの商品でも、楽しみ方を増やすことはできます。

  • 麺の量を選べる
  • 麺の食感を選べる
  • トッピングを選べる
  • 辛さを選べる
  • 食べ進めながら味を変えられる
  • 締めの商品を加えられる

商品を横へ増やすのではなく、一品を縦に深く掘るのです。

共通の食材と作業を使う形にすれば、お客さまは自分だけの一杯を楽しめ、追加注文によって客単価を高めることもできます。ただし、選択肢ごとに専用食材や作業が増えすぎないかを確認します。厨房の負担を抑えながら、満足度を高める設計が大切です。

海外でもシンプルなメニューがブランドを強くする

米国のIn-N-Out Burgerも、中心となる商品を絞り込んでいる企業です。400店舗を超えても、創業時から続くハンバーガー、フライドポテト、飲み物を中心に据えています。商品を増やすことより、新鮮な材料、品質、親切なサービス、清潔な店舗を守ることへ力を注いでいます。

この店の強さは、メニュー表の大きさではありません。何を食べられる店なのかが一目で分かり、限られた商品を繰り返し高い品質で提供することです。

お客さまは、何でもあるから来るとは限りません。「ここへ来れば、あの商品が食べられる」という明確な期待が、来店の理由になるのです。

参考:In-N-Out Burgerのメニューと経営方針

売れない商品にも見えない費用がかかっている

注文数の少ない商品でも、メニューに残すだけで費用が発生します。

  • 専用の食材を仕入れる
  • 冷蔵庫や棚の場所を使う
  • 仕込みの時間がかかる
  • スタッフへ教える必要がある
  • 賞味期限が来れば、廃棄が出る
  • 注文が入れば、作業の流れが変わる
  • メニュー表を書き換える必要もあります

一皿の原価だけを見ていては、この費用は見えません。

注文数が少なく、粗利益も小さく、専用食材と専用作業が多い商品は、売れるたびに厨房を忙しくしている可能性があります。売上をつくっているように見えて、看板商品の品質と店全体の利益を下げていることがあるのです。

すべての商品を4つに分ける

現在のメニューを、感覚ではなく数字で確認してください。

横軸を「一定期間の注文数」、縦軸を「一品当たりの粗利益額」として、商品を4つに分けます。ここでは、売価から原材料費を引いた金額を比較の目安とし、人件費やその他の管理費用は別に確認します。

1.注文数が多く一品当たりの粗利益額も大きい商品

店の中心となる商品です。さらに磨き、看板商品に育てます。

2.注文数は多いが一品当たりの粗利益額が小さい商品

人気はあります。量、価格、材料、組み合わせを見直し、利益を改善します。

3.注文数は少ないが一品当たりの粗利益額が大きい商品

見せ方やすすめ方を改善し、注文される理由をつくります。

4.注文数が少なく一品当たりの粗利益額も小さい商品

残す明確な理由がなければ、やめる候補です。

ただし、数字だけで機械的に削ってはいけません。

  • 初来店を促す商品
  • 家族客に必要な商品
  • 看板商品の価値を高める商品
  • 地域文化や店の使命を伝える商品

このような役割がある場合は、その役割まで確認します。大切なのは、「昔からあるから」「一部のお客さまが頼むから」だけで残さないことです。

メニューを減らす前に看板商品を決める

メニュー削減を、単なる経費削減にしてはいけません。先に決めるべきなのは、何を残すかです。

  • あなたのお店が、最も自信を持って提供できる商品は何でしょうか
  • お客さまが、店名と一緒に思い出す商品は何でしょうか
  • 地域の食材、店主の技術、店の使命が、最も表れている商品は何でしょうか

その一品を中心に据えます。そこから、看板商品を支える商品だけを残します。

  • 看板商品と同じ食材を使える
  • 同じ仕込みを使える
  • 同じ設備を使える
  • 看板商品の満足度を高められる

このような商品で周辺を構成すれば、厨房を複雑にせず、選ぶ楽しさをつくれます。

明日からできるメニュー改善の7段階

1. 全メニューの注文数を調べる

直近4週間の販売数を、商品ごとに確認します。季節商品や営業条件の違いにも注意してください。

2. 一品当たりの粗利益額を計算する

売価から原材料費を引き、商品ごとの粗利益額を比較します。売価と原材料費は、税込・税抜の扱いをそろえて計算します。

3. 専用食材と専用作業を確認する

その商品だけに必要な仕入れ、仕込み、保管、調理を洗い出します。

4. 看板商品との関係を確認する

看板商品を強くする商品か、集中を妨げる商品かを判断します。

5. 一度に全部やめない

候補商品を一つずつ休止し、お客さまの反応、売上、廃棄、提供時間を確認します。

6. 残した商品をさらに磨く

減らして生まれた時間を、味、食感、盛り付け、提供温度の改善に使います。

7. 選ぶ楽しさは追加でつくる

トッピング、量、辛さ、食感、締めなど、共通材料で選択肢をつくります。

メニューを減らした後に確認する数字

メニュー改善の成否は、売上だけで判断してはいけません。

次の数字を、変更前と変更後で比較してください。

  • 看板商品の注文比率
  • 客単価
  • 原価率
  • 廃棄金額
  • 仕込み時間
  • 平均提供時間
  • 新人が一人前になるまでの日数
  • お客さまの再来店率

売上が同じでも、廃棄が減り、労働時間の短縮が人件費の削減につながれば、利益を増やせます。人件費が変わらない場合でも、生まれた時間を看板商品の品質改善や接客に使えます。提供が速くなり、品質が安定すれば、満足度の向上も期待できます。メニュー整理の効果は、厨房、教育、利益、顧客満足を合わせて確かめることが大切です。

世界麺未来戦略研究所 第14理論

「商品を増やすほど店の価値が増えるのではない。一品へ集中するほど、店の価値は深くなる」

多くの店は、お客さまを失うことを恐れて、商品を増やします。しかし、すべてのお客さまに応えようとすると、誰にとっても強い店ではなくなります。

商品を絞り、技術を集中し、品質を高め、お客さまの記憶に残す。これが、看板商品をつくる順序です。

削ることが目的ではありません。本当に大切な一品へ、人、時間、食材、技術を集中することが目的です。

経営者への問い

あなたのお店で、もし一品だけ残すとすれば、何を残すでしょうか。その商品は、お客さまが店名と一緒に思い出すほど、磨かれているでしょうか。答えがすぐに出ないのであれば、メニューを増やす前に、店の中心となる一品を決める必要があります。

大和麺学校では、製麺技術だけでなく、繁盛店をつくるための商品設計、食感、味づくり、店舗経営まで学ぶことができます。

商品数を増やすのではなく、自店だけの強い看板商品をつくりたい方は、ぜひご覧ください。

世界麺未来戦略研究所からのご提案

世界麺未来戦略研究所は、世界の成功事例、AI、商品開発、食感創造、生産性、健康、ブルーゾーン、スーパーアクティブ高齢者、海外展開、人口減少、人手不足、経営戦略を研究し、世界の麺文化を進化させることを目指しています。

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藤井 薫(ロッキー藤井)

株式会社大和製作所、株式会社讃匠を創業。
令和5年 秋の叙勲にて「旭日単光章」受章。

1948年5月、香川県坂出市生まれ。国立高松工業高等専門学校機械工学科卒業。川崎重工株式会社に入社し、航空機事業部機体設計課に配属。その後、独立し、1975年に大和製作所を創業。

過去48年以上にわたり、麺ビジネスを一筋に研究し麺ビジネスの最前線で繁盛店を指導。麺専門店の繁盛法則について全国各地で公演を行う。小型製麺機はベストセラーとなり、業界トップシェアを誇る。
「麺店の影の指南役」「行列の仕掛け人」として「カンブリア宮殿」「ありえへん∞世界」「スーパーJチャンネル」等、人気TV番組に出演するほか、メディアにも多数取り上げられる。
また、2000年4月にうどん学校、2004年1月にラーメン学校とそば学校を開校し、校長に就任。

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