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限られた資金と人材を制約条件へ集中する経営戦略

おはようございます。大和製作所の創業者、ロッキー藤井です。

売上を増やしたい。生産能力を上げたい。お客さまの待ち時間を短くしたい。

そのために、人を増やす。設備を買う。広告を増やす。メニューを増やす。経営者は、問題が大きいほど、多くの場所へ同時に手を打とうとします。しかし、資金、人材、時間を全体へ薄く配ると、どの問題も十分には解決できません。

まず見るべきなのは、すべての場所ではありません。全体の流れを止めている、最も重要な一か所です。

11月4日号では、大和製作所がTOCを導入し、設備も人も増やさず、3か月で生産能力を2倍にした経験をお伝えしました。

今回お伝えしたいのは、その先にある経営戦略です。制約条件を見つけるだけでは、まだ足りません。限られた経営資源を、そこへ集中できるか。そして、制約でない場所への投資を、あえて後回しにできるか。

戦略とは、何をするかを決めることです。同時に、今は何をしないかを決めることでもあります。

利益を生まない投資は改善の順番が間違っている

設備投資そのものが悪いのではありません。採用することが悪いのでもありません。問題は、全体の成果を制限している場所を確認せずに、投資を決めることです。

例えば、郊外型うどん店で駐車場が満車になり、多くの車が入店を諦めているのに、客席だけを20席増やしたとします。駐車できる台数が変わらなければ、増やした客席までお客さまは到達できません。

また、麺の茹で工程が1時間に60食しか処理できない店で、客席を増やしても、厨房から出せる一杯が60食のままなら、売上は期待したほど増えません。むしろ、待つお客さま、催促、片付け、清掃が増え、現場はさらに混乱します。

反対に、空席が多い店が大型の茹で釜を導入しても、来店客数が制約なら、その設備は十分に使われません。

売上を止めているものが駐車場なのか、集客なのか、席数なのか、茹で釜なのか、盛り付けなのか、会計なのか。制約によって、最初に使うべき1円、最初に使うべき1時間は変わります。

正しい投資とは、高性能な設備を買うことではありません。今の制約を動かし、店全体の成果を増やす投資です。

大和製作所が先に買ったのは設備ではなく考え方だった

大和製作所で徹夜作業が続いていた時、新しい機械を買い、人を増やす方法もありました。しかし、私が選んだのは、ゴールドラット博士のTOCを学び、仕事の流れそのものを変えることでした。イスラエルへ2度足を運び、ゴールドラット・コンサルティングから直接指導を受けました。

費用は、目玉が飛び出るほど高額でした。けれども、その投資は、新しい設備を1台増やすための投資ではありません。すでに持っているすべての設備と人材を、最大限に生かすための投資でした。結果として、同じ設備、同じ人員のまま、3か月で生産能力は2倍になりました。

もし、制約を見つけずに機械を増やしていたら、別の工程に仕掛品がたまり、工場全体の完成数は増えなかったかもしれません。人を増やしていたら、教育と管理の負担だけが増えていたかもしれません。

私たちが必要としていたのは、能力の追加ではありませんでした。すでにある能力を塞いでいたものを、取り除くことだったのです。

戦略は制約条件から逆算する

制約条件が分かると、経営の優先順位が変わります。

  • 制約が集客であれば、商品価値、店頭表示、口コミ、再来店へ時間と資金を使います
  • 制約が茹で釜であれば、麺の茹で時間、投入量、湯温回復、釜前の準備を改善します
  • 制約が盛り付けであれば、具材の配置、器、作業順序、役割分担を見直します
  • 制約が会計であれば、注文方法、決済方法、レジの位置を改善します
  • 制約が店長の判断であれば、基準を数字にし、スタッフへ権限を移します
  • 制約が資金であれば、在庫、売掛金、回収条件、不要資産を見直します

すべての問題を同時に解決する必要はありません。今、全体を止めている一つを解決すれば、ほかの問題の重要度まで変わります。だから、年間計画を固定したまま実行するだけでは足りません。制約が移るたびに、投資の優先順位も変える必要があります。

トヨタは限られた資源から流れをつくった

国内の代表例が、トヨタ生産方式です。トヨタの公式資料では、創業期の日本で、資金も資源も限られる中、豊田喜一郎氏が、必要なものを、必要な時に、必要な量だけ供給するJust-in-Timeを提唱したと説明されています。

大量の在庫を持ち、各工程を勝手に動かすのではありません。後工程が必要とするものに合わせ、前工程を動かします。流れを止める異常が起きれば、見えるようにし、原因を取り除きます。

これは、すべての設備を最大速度で動かす考え方ではありません。お客さまへ届く完成品の流れに合わせ、必要な場所へ資源を集中する考え方です。限られた資金と資源しかなかったからこそ、在庫と過剰生産に逃げず、流れを磨き上げたのです。

中小企業や麺店も、大企業より資源が少ないことを弱みと考える必要はありません。資源が少ないからこそ、どこへ集中するかを明確にできます。

サウスウエスト航空は選択を絞って能力を高めた

海外では、米国のサウスウエスト航空が、集中戦略の分かりやすい例です。同社の年次報告書では、低コスト戦略の重要な要素として、ボーイング737シリーズへの集中と路線構造を挙げています。

機種を絞れば、操縦士や整備士の教育、部品在庫、整備手順、機材運用を共通化しやすくなります。さらに同社は、航空機の折り返し時間を短縮し、機材の利用時間を増やす取り組みを進めています。航空会社にとって、飛行機は地上に止まっている間、売上を生みません。だから、機種、運用、折り返し工程をばらばらに考えず、機材が飛んで価値を生む時間を増やす方向へ集中します。

何でもそろえるのではなく、選択肢を絞ることで、教育、整備、運用の流れを強くする。この考え方は、麺店のメニュー、食材、調理設備にも、そのまま当てはまります。売上を増やすために種類を増やすのではなく、制約工程を通過しやすい商品へ集中する方が、店全体の成果を高める場合があります。

郊外型うどん店で最初に疑うべき制約は駐車場

特に郊外型うどん店では、厨房や客席より先に、駐車場が売上の上限を決めていることが多くあります。郊外のお客さまは、その多くが車で来店します。どれほどおいしいうどんを用意し、店内に空席があり、厨房に余力があっても、車を止められなければ入店できません。

駐車場が満車なら、お客さまは道路で長く待てません。一度通り過ぎ、そのまま別の店へ向かいます。この失った売上は、レジの数字には現れません。店内に入らなかったため、経営者は、何人のお客さまを失ったのかさえ分からないのです。

そのため、郊外型店舗では、客席数だけでなく、駐車可能台数、平均乗車人数、駐車時間、ピーク時の満車時間を測る必要があります。

例えば、駐車場が20台分あり、平均駐車時間が30分なら、理論上は1時間に40台が入れ替わります。1台当たりの平均来店人数が1.5人なら、受け入れられるのは1時間に約60人です。実際には、入出庫の重なり、従業員の車、長時間滞在、駐車しにくい区画などで、能力はさらに下がります。

車での来店が前提なら、厨房が1時間に100食つくれても、駐車場から60人しか受け入れられなければ、来店数はそこで止まります。

駐車場は、単なる付帯設備ではありません。郊外型うどん店では、お客さまが商品へ到達するための最初の生産工程なのです。

麺店で確認する6つの制約

麺店では、次の6つのどこかが、成長を止めていることが多くあります。

1. 駐車場の制約

特に郊外型店舗では、満車で入れない車、従業員車両の占有、出入りの難しさまで確認します。

2. 需要の制約

席も厨房も空いているのに注文が少なければ、問題は生産能力ではありません。看板商品と集客です。

3. 席の制約

行列があり、厨房には余力があるのに席が空かなければ、滞在時間、注文方法、持ち帰り、客席構成を見直します。

4. 厨房設備と作業工程の制約

茹で釜、フライヤー、スープ、盛り付けのどこで注文が止まっているかを測ります。

5. 人の制約

店長や熟練者に判断が集中し、その人がいなければ営業が止まる状態です。

6. 経営者の制約

新商品、採用、発注、値決め、クレーム対応まで、すべて経営者の判断待ちになっている状態です。

どの制約かによって、打つ手はまったく違います。だから、ほかの店の成功策を、そのまま真似ても成果が出ないことがあるのです。

売上だけでなく制約時間当たりの稼ぎで判断する

経営者は、売上が増える案に引かれます。しかし、売上が増えても、制約工程の負担が増え、残業、廃棄、作り直しが増えれば、利益は残りません。

新商品を一品増やすときは、制約工程の1分を、どれだけの稼ぎに変えるかを確認します。例えば、盛り付け工程が制約なら、盛り付けに5分かかる低粗利商品より、2分で提供できる高粗利商品を優先する方が、店全体の稼ぎは増えます。

TOCでは、売上から真の変動費を引いた金額を「スループット」と呼びます。麺店なら、まず売価から、その1食を売らなければ発生しない食材費などを引きます。それを制約工程で使う時間で割り、1分当たりの稼ぎを比べるのです。人件費や家賃などを引いた最終利益とは区別します。

この数字を見ると、売れているのに店全体を遅くしている商品と、流れを止めずに利益を生む商品が分かります。戦略商品とは、話題になる商品だけではありません。店の制約を有効に使い、全体の利益を増やす商品です。

採用と設備購入の前に確認する質問

採用前に確認する2つのこと

  1. その人は制約工程の能力を直接増やすのか
  2. 制約工程の人から、ほかの人でもできる仕事を外せないか

設備購入前に確認する4つのこと

  1. その設備は現在の制約を改善するのか
  2. 既存設備の段取り、停止、待ち時間を減らせないか
  3. 設備を入れた後、次の制約はどこへ移るのか
  4. その次の制約まで含めて、利益は増えるのか

広告費を増やす場合も同じです。厨房がすでに限界なら、集客だけを増やすと、待ち時間と不満を増やします。投資額の大小よりも、改善する場所の正しさが重要です。

1週間でできる制約集中戦略の7段階

1. 最終成果を一つ決める

売上、利益、提供数、納期、再来店など、今週最も改善したい数字を一つ選びます。

2. 成果が止まる場所を観察する

郊外型店舗では、まず駐車場を見ます。そのうえで、注文、仕込み、茹で、盛り付け、会計、配膳のどこに待ちがあるかを確認します。

3. 制約の能力を数字にする

1時間当たり何食、何件、何台を処理できるかを測ります。

4. 追加投資なしで制約を最大限使う

探す、運ぶ、待つ、段取り、やり直しを減らします。

5. ほかの工程を制約に合わせる

前工程はつくり過ぎず、後工程は制約から出た仕事を待たせません。

6. それでも不足する時だけ投資する

採用、設備、外注、ITのうち、制約能力を最も大きく高める方法を選びます。

6. 制約が移ったかを確認する

改善後の流れを測り、新しい制約へ次の経営資源を移します。

集中投資の効果を確認する数字

  • 制約工程の1時間当たり処理数
  • 注文から提供までの時間
  • ピーク1時間の提供数
  • 制約工程の停止時間
  • 仕掛品、注文待ち、行列の数
  • ピーク時の駐車場満車時間と、入店せずに通過した車の数
  • 制約時間1分当たりの粗利益またはスループット
  • 残業時間
  • 廃棄と作り直し
  • 投資額と回収期間
  • 改善後に新しく現れた制約

売上だけを見てはいけません。同じ人、同じ設備、同じ営業時間で、流れと利益がどれだけ変わったかを確認します。

戦略会議で課題を10個並べてはいけない

会議で課題を出すと、10個、20個と増えていきます。人手不足。原価高。教育不足。集客不足。設備老朽化。メニュー過多。提供遅れ。すべて重要に見えます。しかし、すべてを重点課題にすれば、重点はなくなります。

会議で最初に決めるべきことは、「今月の制約は何か」です。次に、その制約を改善するために、誰が、何を、いつまでに行うかを決めます。それ以外の課題は、やらないのではありません。制約が移るまで、優先順位を下げるのです。全員の目が同じ一点へ向けば、小さな会社でも、大きな力を生み出せます。

世界麺未来戦略研究所

「経営資源は、平等に配るほど弱くなる。全体を止める一か所へ集中した時、会社は最も大きく動く」

資金が少ないから、成長できないのではありません。人が少ないから、生産性が上がらないのでもありません。限られた資源を、成果を止めている場所へ集中できていないことが問題です。

制約を見つける。制約を最大限に使う。全体を制約に合わせる。必要なら、そこで初めて投資する。そして、次の制約へ進む。戦略とは、この順番を守り、今はやらないことを決めることです。

経営者への問い

あなたが今、採用しようとしている1人は、本当に会社全体の制約を改善する人でしょうか。購入しようとしている設備は、現在のボトルネックを動かすでしょうか。始めようとしている新商品や広告は、店の流れと利益を増やすでしょうか。

答えが明確でなければ、投資を決める前に、現場を1時間観察してください。仕事がたまっている場所。人が待っている場所。熟練者が本来の仕事を中断している場所。そこに、次の成長を止めている制約があります。

大和製作所では、製麺機、商品開発、厨房動線、生産管理、TOCによるボトルネック改善まで、麺店と食品工場の生産性向上を支援しています。

人や設備を増やす前に、現在の力を最大限に生かしたい方は、ぜひご相談ください。

世界麺未来戦略研究所からのご提案

世界麺未来戦略研究所は、世界の成功事例、AI、商品開発、食感創造、生産性、健康、ブルーゾーン、スーパーアクティブ高齢者、海外展開、人口減少、人手不足、経営戦略を研究し、世界の麺文化を進化させることを目指しています。

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Picture of 藤井 薫(ロッキー藤井)
藤井 薫(ロッキー藤井)

株式会社大和製作所、株式会社讃匠を創業。
令和5年 秋の叙勲にて「旭日単光章」受章。

1948年5月、香川県坂出市生まれ。国立高松工業高等専門学校機械工学科卒業。川崎重工株式会社に入社し、航空機事業部機体設計課に配属。その後、独立し、1975年に大和製作所を創業。

過去48年以上にわたり、麺ビジネスを一筋に研究し麺ビジネスの最前線で繁盛店を指導。麺専門店の繁盛法則について全国各地で公演を行う。小型製麺機はベストセラーとなり、業界トップシェアを誇る。
「麺店の影の指南役」「行列の仕掛け人」として「カンブリア宮殿」「ありえへん∞世界」「スーパーJチャンネル」等、人気TV番組に出演するほか、メディアにも多数取り上げられる。
また、2000年4月にうどん学校、2004年1月にラーメン学校とそば学校を開校し、校長に就任。

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