ページコンテンツ

世界麺未来戦略研究所

おはようございます。大和製作所の創業者、ロッキー藤井です。

月曜日は、値上げしても選ばれる看板商品についてお伝えしました。

しかし、どれほど優れた商品をつくっても、店主一人だけがその価値を理解している状態では、値上げは成功しません。

値上げを決め、実施方針を示すのは経営者です。そして、値上げ後の価値をお客さまへ届けるのは、現場のスタッフです。

値上げで失敗する本当の原因

値上げをするとき、多くの店はメニュー表とレジの価格を変更します。しかし、それだけでは不十分です。

•     厨房では日によって盛り付けが違う

•     忙しくなると麺の茹で方が乱れる

•     ホールスタッフが商品の違いを説明できない

•     価格について聞かれると、「原材料費が上がったので、仕方なく値上げしました」と答えてしまう

これでは、お客さまへ伝わるのは価値ではなく、店側の事情だけです。

 

値上げ後に必要なのは、謝罪だけで説明を終えず、「何を守るための価格改定なのか」を全員が同じ言葉で伝えられることです。

現場全員で価値を伝える5つの管理法

第1の管理法 値上げの目的を一文にする

最初に、経営者が値上げの目的を明確にします。

「原材料費が上がったから」だけではいけません。

例えば、次のように、お客さまにとっての価値につながる言葉にします。

•     国産小麦100%の麺と、店内製麺による出来たてのおいしさを守るため

•     地域の生産者から仕入れる食材と、手作りの品質を守るため

•     スタッフが長く安心して働き、変わらないサービスを提供するため

 

目的が曖昧なままでは、スタッフごとに説明が変わります。

第2の管理法 品質基準を数字にする

値上げ後に最も避けなければならないのは、「高くなったのに、以前より品質が悪くなった」と思われることです。

価格を上げた直後ほど、お客さまは商品を厳しく見ます。

麺の重量、茹で時間、スープの温度、具材の量、提供時間を数値で管理し、盛り付けは写真で共有します。「多め」「少し」「適量」といった曖昧な言葉に頼らず、数字と写真で完成基準をそろえます。

第3の管理法 30秒の商品説明をつくる

スタッフ全員が、看板商品の価値を30秒以内で説明できるようにします。

説明する内容は、三つです。

  1. 他店との違い
  2. お客さまが得られる価値
  3. 店が守り続けていること

長い説明は必要ありません。例えば、「当店では、国産小麦を使って店内で製麺し、注文ごとに茹で上げています。小麦の香りと弾力を楽しんでいただくため、麺の熟成時間まで毎日管理しています」と伝えます。

これだけでも、単に「自家製麺です」と言うより、価値が伝わります。

第4の管理法 お客さまの反応を記録する

値上げ後の反応を、スタッフの感覚だけで判断してはいけません。

次の内容を、毎日記録します。

  • 価格について質問された回数
  • 否定的な意見の内容
  • 肯定的な意見の内容
  • 注文を変更したお客さまの件数と変更内容
  • 食べ残しの量や内容
  • 看板商品の注文数
  • 再来店したお客さまの反応

大切なのは、苦情を隠さないことです。苦情をスタッフ個人の失敗として扱わず、商品の価値や説明を改善するための情報として受け止めます。

第5の管理法 週1回15分だけ振り返る

長い会議は必要ありません。週に1回、15分だけ、次の3つを確認します。
• 「今週、お客さまから何を聞かれたか」
• 「説明しにくかったことは何か」
• 「品質にばらつきがなかったか」
そして、改善する項目を一つだけ決めます。
多くの項目を一度に変えると、どの変更が結果に影響したのか分からなくなります。一度に一つを改善することが大切です。

価値を生むには人材育成が必要

丸亀製麺は、新商品の開発や新しい食体験だけでなく、従業員の育成にも力を入れています。同社は、人材育成によって従業員の幸福と顧客満足を高める店舗運営を進めています。

丸亀製麺の店舗運営と人材育成について見る

商品だけを変えても、現場が変わらなければ、お客さまの体験は変わりません。

一方、米国のCAVAは、人件費への追加投資を行いながら、2026年度第1四半期に、前年同期比で客数6.8%増、既存店売上高9.7%増を記録しました。

同社は、売上増によって費用負担を吸収し、人件費への追加投資などがある中でも、店舗段階の利益率を前年同期と同じ25.1%に維持したと説明しています。

CAVAの2026年度第1四半期決算を見る

人件費は、単なる削減対象ではありません。教育によって商品価値を高め、売上と利益を生み出す投資に変えることができます。

役割ごとに責任を明確にする

  • 経営者の役割は、値上げの目的と守るべき価値を決めることです
  • 店長の役割は、その価値を基準と教育に変えることです
  • 厨房スタッフの役割は、毎回同じ品質を再現することです
  • 接客スタッフの役割は、その価値をお客さまに伝えることです

役割が曖昧な店では、「誰かが説明するだろう」「店長が確認するだろう」という状態が生まれます。全員で取り組むことと、責任者がいないことは違います。

値上げ前の朝礼で確認する5つの質問

  1. なぜ価格を変更するのか
  2. その価格で、何の品質を守るのか
  3. お客さまから聞かれたら、どう説明するのか
  4. 品質基準から外れた場合、誰に報告するのか
  5. お客さまの反応を、どこへ記録するのか

全員が同じ答えを言えなければ、まだ準備不足です。

世界麺未来戦略研究所 第11理論

「価格改定の成否は、値札を変えた日に決まらない。全員が同じ価値を再現し、同じ言葉で伝えられるかで決まる」

値上げは、経営者だけの仕事ではありません。商品、調理、接客、説明、記録、改善をつなぐ、組織全体の仕事です。

店主の頭の中にある価値を、現場全員が再現できる仕組みに変える。それが、値上げを利益につなげるマネジメントです。

経営者への問い

あなたのお店のスタッフは、値上げの理由ではなく、値上げ後も守り続ける価値を説明できるでしょうか。

大和麺学校では、製麺技術や商品開発だけでなく、品質の標準化、作業手順、店舗運営についても学ぶことができます。

経営者がいなくても品質を守れる店をつくりたい方は、ぜひご覧ください。

世界麺未来戦略研究所からのご提案

世界麺未来戦略研究所は、世界の成功事例、AI、商品開発、食感創造、生産性、健康、ブルーゾーン、スーパーアクティブ高齢者、海外展開、人口減少、人手不足、経営戦略を研究し、世界の麺文化を進化させることを目指しています。

今回の内容が少しでも皆さまの商品開発や経営の参考になりましたら、同業の経営者、料理人、お取引先、ご友人へ、このメルマガをご紹介ください。

日本の麺文化は、一社だけでは進化できません。業界全体で学び、知恵を持ち寄り、未来を創ることで、日本の麺文化を世界へ広げていきたいと考えています。

このメルマガは転載・転送を歓迎します。

一人でも多くの仲間と、新しい麺文化を創っていきたいと願っています。

この記事をお読みのみなさまへ

この記事で取り上げている内容で、ご不明点や直接お聞きしたいことなどがあれば、お気軽にお尋ねください。

後日、ご回答させて頂きます

ロッキー藤井の情熱メルマガ【毎週配信】

まずは無料のメルマガ購読からスタート

Picture of 藤井 薫(ロッキー藤井)
藤井 薫(ロッキー藤井)

株式会社大和製作所、株式会社讃匠を創業。
令和5年 秋の叙勲にて「旭日単光章」受章。

1948年5月、香川県坂出市生まれ。国立高松工業高等専門学校機械工学科卒業。川崎重工株式会社に入社し、航空機事業部機体設計課に配属。その後、独立し、1975年に大和製作所を創業。

過去48年以上にわたり、麺ビジネスを一筋に研究し麺ビジネスの最前線で繁盛店を指導。麺専門店の繁盛法則について全国各地で公演を行う。小型製麺機はベストセラーとなり、業界トップシェアを誇る。
「麺店の影の指南役」「行列の仕掛け人」として「カンブリア宮殿」「ありえへん∞世界」「スーパーJチャンネル」等、人気TV番組に出演するほか、メディアにも多数取り上げられる。
また、2000年4月にうどん学校、2004年1月にラーメン学校とそば学校を開校し、校長に就任。

関連記事

売り上げを上げ、利益を出す戦略―人手不足対策:第四章

麺ビジネスへのAI活用 小さく始めて大きく育てる|末永い繁栄のための大本

うどん、蕎麦、ラーメン店へのAI導入で、イノベーションを実現|永い繁栄のための大本

Innovationは、二つのEvolutionが交わるところから生まれる

視座と戦略の関係と重要性|戦略は視座よって決まる|視点をどのように高めるのか

世界の成功店は、店内売上だけで戦っていない ~高AUV店に必要な「商品・導線・現場管理」の考え方~

外食業の経営の再現性|なぜ設計を学ばない経営は必ず行き詰まるのか

戦略と個性の重要性|勝ち筋は無数|ただし、選べるのは一つだけ

海外での麺ビジネスの展開の長い繁栄のために戦略

海外での麺ビジネスの展開の長い繁栄のために戦略