2店舗目を出す前に1店舗目を複製できますか|多店舗化しても味と理念を失わない仕組み

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多店舗化しても味と理念を失わない仕組み

おはようございます。大和製作所の創業者、ロッキー藤井です。

1店舗目が繁盛すると、次に考えるのが2店舗目です。「この店をもう一つつくれば、売上も利益も増える」。多くの経営者は、そう考えます。

しかし、2店舗目を出した途端に、1店舗目までおかしくなることがあります。

  • 店主が二つの店を行き来する
  • 店主がいない店では、味や接客が変わる
  • スタッフからの確認が増え、店主の仕事が倍になる
  • 売上は増えたのに、利益は思ったほど残らない

場合によっては、1店舗だけだった時よりも忙しくなり、経営が不安定になります。

なぜでしょうか。1店舗目の繁盛が、店の仕組みではなく、店主個人の能力によって支えられていたからです。

2店舗目を出すということは、単に店を一つ増やすことではありません。1店舗目の経営を、別の場所で再現できるかどうかを試すことです。

2店舗目は経営の弱点を拡大する

1店舗だけであれば、店主の経験と頑張りで、多くの問題を解決できます。

  • スープの味が少し違えば、店主が修正する
  • 新人の作業が遅ければ、店主が手伝う
  • 材料が不足すれば、店主が買いに走る
  • クレームがあれば、店主が直接対応する

これでも店は営業できます。しかし、2店舗になると、店主が同時に二つの場所にいることはできません。1店舗目では小さかった問題が、2店舗目では大きな問題になります。

  • 味のばらつき
  • 発注ミス
  • 在庫不足
  • 教育の遅れ
  • 店長の判断の違い
  • 理念の形骸化

つまり、2店舗目は、1店舗目に隠れていた経営の弱点を拡大するのです。

複製するのは店ではなく経営システム

同じ内装、同じ厨房機器、同じメニュー、同じレシピ。これらをそろえるだけでは、同じ店にはなりません。

複製しなければいけないのは、店舗の外見ではなく、店舗を動かしている経営システムです。

多店舗化には、少なくとも次の6つの仕組みが必要です。

1. 商品を再現する仕組み

材料、重量、温度、時間、作業手順、完成基準を明確にします。

2. 人を育てる仕組み

誰が、何を、どの順序で教え、何ができれば合格なのかを決めます。

3. 発注と在庫を管理する仕組み

勘に頼らず、売上予測、適正在庫、発注点を数字で管理します。

4. 品質を確認する仕組み

問題が起きてから注意するのではなく、日々の確認によって異常を早く発見します。

5. 数字を共有する仕組み

売上だけでなく、原価率、人件費率、廃棄、客数、客単価、提供時間まで確認します。

6. 理念と判断基準を伝える仕組み

マニュアルに書かれていない問題が起きた時、何を優先して判断するのかを共有します。

この6つがそろって、初めて1店舗目を複製できるようになります。

世界へ広がった一風堂が守ったもの

日本の成功事例の一つが、一風堂です。一風堂は2008年、ニューヨークに進出しました。日本政策投資銀行の調査報告書では、2025年9月時点で世界16カ国・地域、307店舗へ展開した事例として紹介されています。

海外へ出ると、食文化も、商習慣も、人材も、店舗条件も異なります。日本の店をそのまま持っていくだけでは通用しません。一方で、すべてを現地に合わせてしまえば、一風堂である意味が失われます。

一風堂は、看板商品やラーメンの品質、日本の食文化を伝えるという中心部分を守りながら、地域に応じて商品や店舗のあり方を変えています。

スペインへの進出でも、定番の「白丸元味」「赤丸新味」を軸にしながら、「担々麺」や「ベジラーメン」を加え、現地市場に対応しています。

守るものと、変えるものを分ける。これが、多店舗化や海外展開に欠かせない考え方です。

参考:日本政策投資銀行の食品産業調査報告書

参考:力の源ホールディングスのスペイン出店発表

チポトレが海外展開で複製するもの

米国のメキシカンレストランチェーン、チポトレも同じです。韓国への進出にあたり、看板やレシピだけでなく、食材の調達から店舗運営までを再現する体制を整えています。

  • 食材の調達
  • 調理方法
  • スタッフ教育
  • 店舗運営

チポトレは、これらを含めて、基本となる商品と体験を現地でも一貫して届ける方針を示しています。多店舗化で本当に複製すべきものは、商品だけではありません。お客さまへ商品が届くまでの、すべての流れです。

  • どの材料を仕入れるのか
  • どのように調理するのか
  • 誰がスタッフを育てるのか
  • 品質をどのように確認するのか
  • 問題が起きた時、誰がどの基準で判断するのか

ここまでを一つのシステムとして複製しなければ、店舗数が増えるほど、店ごとの差が大きくなります。

参考:チポトレの韓国出店発表

すべてを同じにしてはいけない

多店舗化というと、全店舗を完全に同じにしなければいけないと思われがちです。しかし、大切なのは、守るものと、変えてよいものを明確に分けることです。

絶対に守るものは、次のようなものです。

  • 看板商品の味と品質
  • 食品安全の基準
  • お客さまへの約束
  • 店が大切にする理念
  • ブランドの中心となる価値

一方で、地域に合わせて変えてよいものもあります。

  • 一部のメニュー
  • 価格と商品の組み合わせ
  • 座席や店舗の広さ
  • 営業時間
  • 注文方法
  • 地域に合わせた伝え方

中心は変えず、周辺は柔軟に変える。これが、店舗を増やしてもブランドを失わないための原則です。

マニュアルだけでは店は複製できない

作業マニュアルをつくれば、多店舗化できるわけではありません。マニュアルには、通常時の作業は書けます。しかし、実際の店舗では、マニュアルにないことが起きます。

  • 急にスタッフが休んだ
  • 予定以上に商品が売れた
  • 材料が届かない
  • 機械が故障した
  • お客さまから、想定外の要望を受けた

このような時、店主がいなければ判断できないのであれば、まだ経営システムは完成していません。

必要なのは、作業手順だけではありません。「なぜ、その手順なのか」「何を最優先するのか」「どこまで現場で判断してよいのか」まで共有する必要があります。

理念とは、壁に掲げる言葉ではありません。店主がいない時に、スタッフの判断をそろえるための基準です。

2店舗目を出す前に行う7つの複製テスト

2店舗目を考えている方は、出店を決める前に、現在の店で次のテストを行ってください。

1. 店主が7日間現場を離れる

店主がいなくても、味、接客、清掃、売上に大きな変化がないかを確認します。現場で判断できる範囲と、緊急時の連絡方法を決めたうえで試します。

2. 看板商品を複数のスタッフがつくる

誰が担当しても、同じ品質になるかを比較します。

3. 新人を店長以外の教育担当者が指導する

標準作業と教え方を理解したスタッフが担当し、教える人が変わっても、同じ水準まで育てられるかを確認します。

4. 数字に基づいて発注する

店主の勘に頼らず、売上予測と在庫基準から発注できるかを試します。

5. 1日の数字を店長が説明する

売上、原価、人件費、廃棄、客数、客単価の変化を、自分の言葉で説明できるかを確認します。

6. 問題発生時の判断を記録する

何が起き、誰が、どの基準で判断し、どのように解決したのかを残します。

7. スタッフが店の使命を説明する

「この店は、誰に、どのような価値を届ける店なのか」を、スタッフが自分の言葉で話せるかを確認します。

この7つができなければ、2店舗目はまだ早い可能性があります。

出店基準は売上だけではない

1店舗目の売上が好調だからといって、2店舗目を出してよいとは限りません。売上は、出店を判断する基準の一つにすぎません。私は、少なくとも次の3つを確認すべきだと考えています。

  1. 店主がいなくても、品質を維持できる
  2. 店長が日常の問題を自分で判断できる
  3. 異常を数字で発見し、現場で修正できる

この3つができていれば、1店舗目は「店主の店」から「組織の店」へ変わり始めています。そのとき、初めて2店舗目を検討できるのです。

フランチャイズは経営問題の解決策ではない

「自分で店を管理するのが大変だから、フランチャイズにすればよい」。そう考える経営者もいます。しかし、フランチャイズは、経営問題から逃れる方法ではありません。

仕組みの完成度が低い状態で店舗数を増やせば、問題はさらに速く広がります。

味のばらつき、教育不足、ブランドへの不信、加盟店との対立。一店舗で起きていた問題が、全店舗へ広がりかねません。

フランチャイズとは、成功した店の看板を貸すことではありません。成功を再現できる経営システムを提供することです。

複製できないものを、拡大してはいけません。

世界麺未来戦略研究所 第13理論

「多店舗化とは、店舗数を増やすことではなく、店主がいなくても価値が再現される経営システムを増やすことである」

1店舗目では、店主の能力が店を成功させます。しかし、2店舗目からは、仕組みの能力が会社の成長を決めます。

商品を再現する、人を育てる、発注を管理する、品質を確認する、数字を共有する、理念に基づいて判断する。これらを一つのシステムとして整えることが、多店舗化の準備です。

店主の仕事を二倍にするのではありません。店主がいなくても動く仕組みを二つにするのです。

経営者への問い

あなたのお店は、店主が7日間いなくても、同じ味、同じサービス、同じ判断を維持できるでしょうか。

もし維持できないのであれば、次に必要なのは、新しい物件を探すことではありません。1店舗目の中にある、店主にしかできない仕事を見つけることです。

その仕事を数字と手順にし、教育し、確認できるようにする。そして、理念とともに伝える。その積み重ねによって、初めて店舗は複製可能になります。

大和製作所では、自家製麺の技術だけでなく、商品品質の安定、厨房設計、生産性向上、店舗運営についても、実践的な支援を行っています。

店主の技術を、店舗の仕組みへ変えたい方は、ぜひご相談ください。

世界麺未来戦略研究所からのご提案

世界麺未来戦略研究所は、世界の成功事例、AI、商品開発、食感創造、生産性、健康、ブルーゾーン、スーパーアクティブ高齢者、海外展開、人口減少、人手不足、経営戦略を研究し、世界の麺文化を進化させることを目指しています。

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藤井 薫(ロッキー藤井)

株式会社大和製作所、株式会社讃匠を創業。
令和5年 秋の叙勲にて「旭日単光章」受章。

1948年5月、香川県坂出市生まれ。国立高松工業高等専門学校機械工学科卒業。川崎重工株式会社に入社し、航空機事業部機体設計課に配属。その後、独立し、1975年に大和製作所を創業。

過去48年以上にわたり、麺ビジネスを一筋に研究し麺ビジネスの最前線で繁盛店を指導。麺専門店の繁盛法則について全国各地で公演を行う。小型製麺機はベストセラーとなり、業界トップシェアを誇る。
「麺店の影の指南役」「行列の仕掛け人」として「カンブリア宮殿」「ありえへん∞世界」「スーパーJチャンネル」等、人気TV番組に出演するほか、メディアにも多数取り上げられる。
また、2000年4月にうどん学校、2004年1月にラーメン学校とそば学校を開校し、校長に就任。

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