値上げする前に確認する5つの数字。売上が増えても、利益が減るのはなぜか|世界麵未来研究所

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世界麺未来戦略研究所

おはようございます。大和製作所の創業者、ロッキー藤井です。

「原材料費や人件費は上がり続けています。しかし、すでに周辺のお店より価格が高いため、いつ、どのように値上げすればよいのか分かりません」

これは、欧州のお客さまから寄せられた質問です。

今、この問題に直面しているのは、欧州だけではありません。

日本でも、米、小麦、油、肉、魚、野菜、光熱費、人件費など、ほとんどの経費が上がっています。

そこで、多くの経営者が最初に考えるのが値上げです。しかし、本当に値上げから始めてよいのでしょうか。

値上げの前に、必ず確認しなければいけないことがあります。

それは、「どの商品が、いくらの利益を生み出しているのか」「スタッフの1時間が、いくらの利益を生み出しているのか」という、店の利益構造です。

売上が増えても利益が増えるとは限らない

売上が増え、客数も減っていない。それでも、利益が減ることがあります。

原因は簡単です。売上の増加以上に、原材料費や人件費が増えているからです。

例えば、ある商品の販売価格が1,000円、原材料費が350円だったとします。

この商品の一杯当たり粗利益は、1,000円-350円=650円です。

ところが、原材料費が400円に上がると、粗利益は600円になります。

1杯当たりでは、わずか50円の減少です。

しかし、1日200杯、月25日営業すれば、50円×200杯×25日=25万円。

年間では300万円の利益が消えます。

さらに、人件費や光熱費まで上がれば、売上が前年を上回っていても、最終的な利益は減ってしまいます。

経営者が見るべきなのは、売上高だけではありません。

売上の中に、どれだけ利益が残っているかです。

国内でも起きている増収減益

国内の大手飲食企業でも、同じことが起きています。

トリドールホールディングスの2027年3月期第1四半期において、丸亀製麺部門の売上収益は365億900万円。

前年同期比3.2%増となり、第1四半期として過去最高を記録しました。

ところが、営業利益は56億6,500万円。前年同期比16.0%減少しました。

売上は増えたのに、利益は減ったのです。

会社側は、人件費などの増加を、売上の増加だけでは吸収できなかったと説明しています。

一方、同じトリドールの海外事業は、売上収益が前年同期比3.4%増、営業利益は62.6%増となりました。

香港の米線ブランド「譚仔」では、原材料費と人件費の管理が利益増加に貢献しています。

同じ企業の中でも、売上を増やすだけの事業と、原材料費と人件費を管理しながら売上を増やす事業では、利益に大きな差が出ます。

大切なのは、売上を追うことではありません。

利益を伴った売上をつくることです。

トリドールホールディングスの公式財務情報

米国でも売上増加だけでは原価高を吸収できなかった

米国を中心にステーキレストランを展開するTexas Roadhouseでも、同じことが起きました。

2025年度の既存店売上高は4.9%増加しました。

1店舗当たりの週間平均売上高も、前年の15万5,285ドルから16万1,918ドルへ増えています。

ところが、レストラン利益率は17.1%から15.5%へ低下しました。

食材価格が6.1%上昇し、賃金などの人件費も3.7%上昇したためです。

売上が増えても、原材料費と人件費の上昇を吸収できなければ、利益率は下がります。

これは、規模の大きな企業だけの問題ではありません。

小さな麺専門店では、わずかな原価上昇や、スタッフ1人の配置の違いが、利益を大きく左右します。

Texas Roadhouseの2025年度公式決算資料

値上げの前に確認する5つの数字

私は、値上げを検討する前に、少なくとも次の5つの数字を確認すべきだと考えています。

1.商品ごとの原材料費

店全体の平均原価率だけを見てはいけません。

看板商品、定番商品、セット商品、トッピング、飲み物など、商品ごとに原材料費を計算します。

2.商品ごとの粗利益額

粗利益額は、販売価格-原材料費=一品当たり粗利益額で確認します。

原価率が低くても、販売価格が低すぎれば、残る利益は少なくなります。

反対に、原価率が多少高くても、十分な粗利益額を確保できる商品もあります。

原価率だけで商品を判断してはいけません。

3.人件費率

人件費率は、人件費÷売上高×100で確認します。

人件費率が高い場合、すぐに人数を減らすのではありません。

  • 暇な時間帯に人が多すぎないか
  • 仕込みに時間がかかりすぎていないか
  • メニュー数が多すぎないか
  • 注文、会計、洗い物に無駄がないか

まず、仕事の流れを確認します。

4.原材料費と人件費の合計比率

飲食店では、原材料費と人件費を合わせた数字が、利益を大きく左右します。

原材料費率が下がっても、人件費率が上がれば、利益は残りません。

逆に、人件費を削りすぎて、料理やサービスの品質が落ちれば、客数が減ります。

原材料費と人件費は、別々ではなく、合計で管理する必要があります。

5.人時粗利益

人時粗利益は、スタッフ1人が1時間に生み出した粗利益です。

売上総利益÷総労働時間=人時粗利益で計算します。

例えば、1日の売上総利益が12万円で、総労働時間が40時間なら、人時粗利益は3,000円です。

同じ売上でも、総労働時間が30時間なら、人時粗利益は4,000円になります。

人数を減らすことが目的ではありません。

同じ人数、同じ時間で、より大きな価値と利益を生み出すことが目的です。

経営者が毎週確認すべき管理表

複雑な管理表は必要ありません。

まずは毎週、次の数字を並べてください。

  • 売上高
  • 客数
  • 客単価
  • 原材料費率
  • 人件費率
  • 原材料費と人件費の合計比率
  • 人時売上高
  • 人時粗利益
  • 営業利益額
  • 営業利益率

そして、前週、前月、前年同月と比較します。

数字は、記録するだけでは意味がありません。

数字が変化した理由を、必ず確認します。

  • 売上が増えたのは、客数が増えたからか
  • 値上げによって客単価が上がったからか
  • 高粗利益商品が売れたからか
  • 割引商品が増えたからか
  • 残業が増えていないか
  • 仕込み時間が長くなっていないか
  • 廃棄や食べ残しが増えていないか

原因が分かれば、打ち手も変わります。

人件費を下げるのではなく生産性を上げる

人件費が上がると、すぐにスタッフを減らそうとする店があります。

しかし、必要な人数まで減らせば、提供時間が延びます。

店内が汚れます。接客が雑になります。スタッフが疲弊します。そして、お客さまが離れていきます。

これは、人件費を下げたのではありません。

店の価値を下げただけです。

必要なのは、人を減らすことではなく、人が価値を生み出せる仕組みをつくることです。

売れないメニューを減らす

仕込み工程を標準化する

材料の共通化を進める

作業場の配置を見直す

注文と会計を簡単にする

ピーク時間に人員を集中する

製麺や調理機器を活用する

熟練者しかできない仕事を減らす

このような改善を行えば、品質を落とさずに生産性を高めることができます。

値上げの判断は感覚ではなく数字で行う

「周辺のお店より高いから、これ以上は上げられない」この考え方にも注意が必要です。

周辺店と価格が同じでも、利益が出なければ、事業は続きません。

一方、周辺店より高くても、お客さまが価格以上の価値を感じれば、選ばれ続けます。

しかし、数字を確認しないまま値上げをすると、どの商品を、いくら上げればよいのか分かりません。

すべての商品を一律に値上げする必要はありません。

  • 粗利益額が不足している商品
  • 手間がかかりすぎている商品
  • 原材料価格の影響を強く受けている商品
  • お客さまから高く評価されている商品

値上げは、経営者の不安や感覚で決めるものではありません。

商品の粗利益と、店全体の生産性から決めるものです。

明日からできる利益管理の5段階

1.全商品の販売価格と原材料費を書き出す

まず、一品当たりの粗利益額を計算します。

2. 売上数量を掛ける

粗利益額が大きくても、ほとんど売れていなければ、店全体への貢献は小さくなります。

3.仕込み時間と提供時間を確認する

利益が多く見えても、多くの人手を必要とする商品は、本当の収益性が低い可能性があります。

4. 商品を4つに分類する

よく売れ、利益も多い商品

よく売れるが、利益が少ない商品

売れないが、利益は多い商品

売れず、利益も少ない商品

5.改善後に値上げを検討する

売れない商品を減らし、作業を改善し、高粗利益商品を育てても、必要な利益を確保できない場合に、価格を見直します。

順番が大切です。

世界麺未来戦略研究所 第8理論

「値上げの判断は、売上高や原価率だけではなく、一品当たり粗利益と人時粗利益で行う」

売上高だけを見れば、繁盛しているように見えることがあります。

原価率だけを見れば、利益が出ているように見えることもあります。

しかし、人件費や作業時間を含めて見なければ、本当の収益力は分かりません。

経営者が管理すべきなのは、売上の大きさではありません。

一品からいくら利益が残るのか。スタッフの1時間から、いくら利益が生まれるのか。この2つです。

数字を見えるようにすれば、値上げすべき商品、改善すべき作業、やめるべき商品が明確になります。

経営者への問い

あなたのお店では、商品ごとの原材料費、粗利益額、作業時間まで把握できているでしょうか。

売上が増えていることに安心し、利益が減っていることを見落としていないでしょうか。

大和製作所では、製麺機を導入することだけを目的にしていません。

自家製麺による商品価値の向上、原価の見直し、作業の標準化、生産性の向上まで含め、麺専門店の経営改善を支援しています。

原材料費と人件費が上がる中でも、品質を落とさず、利益を残せる店をつくりたい方は、ぜひご相談ください。

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世界麺未来戦略研究所は、世界の成功事例、AI、商品開発、食感創造、生産性、健康、ブルーゾーン、スーパーアクティブ高齢者、海外展開、人口減少、人手不足、経営戦略を研究し、世界の麺文化を進化させることを目指しています。

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藤井 薫(ロッキー藤井)

株式会社大和製作所、株式会社讃匠を創業。
令和5年 秋の叙勲にて「旭日単光章」受章。

1948年5月、香川県坂出市生まれ。国立高松工業高等専門学校機械工学科卒業。川崎重工株式会社に入社し、航空機事業部機体設計課に配属。その後、独立し、1975年に大和製作所を創業。

過去48年以上にわたり、麺ビジネスを一筋に研究し麺ビジネスの最前線で繁盛店を指導。麺専門店の繁盛法則について全国各地で公演を行う。小型製麺機はベストセラーとなり、業界トップシェアを誇る。
「麺店の影の指南役」「行列の仕掛け人」として「カンブリア宮殿」「ありえへん∞世界」「スーパーJチャンネル」等、人気TV番組に出演するほか、メディアにも多数取り上げられる。
また、2000年4月にうどん学校、2004年1月にラーメン学校とそば学校を開校し、校長に就任。

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