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全員を急がせる前に制約条件を見つけて仕事の流れを変える

おはようございます。大和製作所の創業者、ロッキー藤井です。

  • 「注文が増えたので、人を増やさなければならない」
  • 「生産が間に合わないので、新しい設備を買わなければならない」
  • 「納期を守るには、残業や休日出勤も仕方がない」

多くの経営者は、生産能力が足りなくなると、このように考えます。私も長い間、同じように考えていました。

しかし、大和製作所では、設備も人も増やさず、わずか3か月で生産能力が2倍になりました。しかも、創業以来、工場の恒例行事のようになっていた徹夜作業までなくなりました。

社員が2倍速く働いたのではありません。全員を急がせたのでもありません。工場全体の流れを止めている一か所を見つけ、そこへ集中した結果です。

生産性を上げる第一歩は、人をもっと働かせることではありません。仕事の流れの、どこが止まっているのかを見つけることです。

創業以来納期が迫ると徹夜になった

私は1975年、27歳で大和製作所を創業しました。創業当初から、納期を守ることには苦労しました。

毎月のように、納期が迫ると社員たちが徹夜で機械を完成させる。何とか完成させ、何とか納品する。それが当たり前のようになっていました。

私たちは怠けていたのではありません。社員は皆、一生懸命に働いていました。経営者である私も、誰よりも働いているつもりでした。

ところが、頑張っても、翌月になると同じことが起きます。問題が起きる。納期が迫る。全員で残業する。最後は徹夜で間に合わせる。間に合った瞬間は、皆で達成感を味わいます。

しかし、それは問題を解決したのではありません。社員の頑張りで、問題を一時的に覆い隠しただけだったのです。

船は待ってくれない

創業から約20年が経った頃、大和製作所では海外への輸出が始まりました。輸出する機械は、決められた船へ積まなければなりません。船の出航に間に合わなければ、機械を積んでもらえません。

国内の納品であれば、事情を説明し、日程の調整をお願いできる場合もあります。しかし、船の出航日は、こちらの都合では変わりません。

この経験を通じて、大和製作所には、「納期は絶対に守るもの」という文化が生まれました。

この考え方自体は、間違っていません。お客さまとの約束を守ることは、企業経営の基本です。しかし、納期を守る方法が、社員の残業と徹夜だけであれば、その経営は長く続きません。納期を守る強い意志はあっても、仕事の仕組みは変わっていなかったのです。

創業から33年後 イスラエルで出会ったTOC

転機が訪れたのは、創業から33年後でした。私は、イスラエルのエリヤフ・ゴールドラット博士が提唱したTOC(制約理論)を大和製作所へ導入しました。イスラエルへ2回足を運び、博士から直接教えを受けました。そして、ゴールドラット・コンサルティングから直接指導を受けることにしたのです。

費用は、正直に言って、目玉が飛び出るほど高額でした。それでも、私には、どうしても解決したい問題がありました。「なぜ、これほど社員が頑張っているのに、納期が迫ると徹夜になるのか」その答えを知りたかったのです。

TOCを学び、私は、それまでの管理の常識が間違っていたことに気づきました。全員を急がせても、流れを止めている工程を変えなければ、工場全体の生産能力は上がらないのです。

制約工程を変えなければ生産能力は上がらない

工場には、部品加工、溶接、組立、配線、調整、検査など、多くの工程があります。経営者は、すべての工程を速くしようとします。各部門へ目標を与え、稼働率を上げ、少しでも多く仕事をさせようとします。しかし、工場全体の完成数は、最も能力の低い工程によって決まります。

例えば、前工程が1日に100個つくれても、その後の工程が50個しか処理できなければ、完成できるのは50個です。前工程がさらに頑張って120個つくっても、完成数は増えません。処理できない部品が途中にたまり、置き場所がなくなり、探す時間や運ぶ時間が増えます。全員が忙しくなっても、完成品は増えないのです。

TOCでは、工場全体の能力を制限している工程を「制約条件」「ボトルネック」と呼びます。まず改善すべき場所は、全工程ではありません。この制約条件です。

制約工程の1分は工場全体の1分

制約工程が1分止まると、工場全体が完成品を生み出す時間を1分失います。だから、制約工程を担当する熟練者に、部品を探させてはいけません。工具を取りに行かせてはいけません。材料の到着を待たせてはいけません。前工程の不良を、やり直させてはいけません。制約工程の人にしかできない仕事へ、集中してもらう必要があります。

大和製作所では、現場の仕事を徹底的に観察しました。

部品を探す時間。工具を取りに行く時間。運搬する時間。指示を待つ時間。やり直す時間。作業者本人にとっては必要に見えても、完成品を生み出していない時間が、現場には数多くありました。

そこで、必要な部品と工具が、必要な時に、必要な場所へ届く仕組みへ変えていきました。

熟練者をさらに忙しくしたのではありません。熟練者が本来の仕事だけに集中できるようにしたのです。

3か月後生産能力は2倍になり徹夜が消えた

結果は、私自身も驚くものでした。設備は同じ。人員も同じ。それなのに、わずか3か月で生産能力が2倍になりました。

そして、もっと嬉しかったことがあります。創業以来、工場の恒例行事だった徹夜作業が、なくなったのです。社員がさらに頑張ったからではありません。仕事の仕組みを変えたからです。

私はこの経験から、経営について大きなことを学びました。人をもっと働かせる前に、仕事の流れを見直す。忙しい人を叱咤激励する前に、その人の仕事を止めているものを取り除く。これが、経営者の仕事なのです。

マクドナルドも個人の速さではなく流れを変えた

海外のレストランにも、同じ考え方の成功例があります。マクドナルドの公式史によれば、マクドナルド兄弟は1948年、店舗運営を整理し、Speedee Service Systemを導入しました。メニューを絞り、厨房の作業を分解し、スタッフの役割と流れを整えることで、効率よく商品を提供できる仕組みをつくりました。

1人の料理人が、注文を受け、調理し、盛り付け、会計まで行うのではありません。仕事を流れとして設計し、各工程が次の工程へ正確につなぐようにしました。

同社は現在も、Speedee Labsという施設で、メニュー、設備、厨房工程、店舗レイアウトを組み替えながら、効率と処理能力を高める検証を続けています。世界的な企業になった後も、問題が起きるたびに人の頑張りへ頼るのではなく、仕事の流れを実験し、仕組みを改善しているのです。

生産性の高い店は、動きの速い人だけで成り立っているのではありません。普通の人が、迷わず、待たず、探さず、やり直さずに働ける流れを持っています。

麺店の制約条件はどこにあるのか

この考え方は、うどん店やラーメン店にも、そのまま使えます。昼のピークには、麺を茹でる人、盛り付ける人、天ぷらを揚げる人、注文を受ける人、会計をする人が、それぞれ一生懸命に働きます。しかし、全員を急がせても、提供数が増えるとは限りません。

もし、麺の茹で工程が提供速度を制限しているなら、会計だけを速くしても、1時間に提供できる一杯は増えません。反対に、茹で工程が止まらないように、麺、ざる、丼、スープ、具材、人員配置を整えれば、店全体の提供能力は上がります。

11月2日号でお伝えした、茹で時間の短い高品質な麺も、制約条件を改善する方法の一つです。ただし、茹で釜が速くなれば、次は盛り付けや配膳が新しい制約になることがあります。制約条件は、一度改善すれば終わりではありません。改善によって場所が移るため、次の制約を見つけ、また集中して改善します。

大切なのは、全員を忙しくすることではありません。お客さまへ価値を届ける流れを、止めないことです。

忙しい人を助ける前にその人の仕事を分ける

店内で最も忙しい人を見つけたら、すぐに人を1人付けるのではありません。まず、その人の仕事を二つに分けます。一つは、その人にしかできない仕事です。もう一つは、ほかの人でもできる仕事です。

例えば、茹で加減の判断は熟練者にしかできなくても、麺を運ぶ、ざるをそろえる、丼を準備する、薬味を補充する仕事は、ほかの人でもできます。

熟練者が、1日に30分、探し物や運搬をしているなら、その30分は店全体の能力を失っている可能性があります。補助作業を別の人へ移し、熟練者を本来の仕事へ集中させる。人を増やさなくても、役割を組み替えるだけで、制約工程の稼働時間は増えます。

人手不足の時代に必要なのは、全員へ仕事を足す管理ではありません。最も重要な人から、重要でない仕事を外す管理です。

明日からできる制約条件改善の7段階

1. お客さまの注文から提供までの時間を測る

平均だけでなく、最短、最長、ピーク時を記録します。

2. 注文がたまる場所を見つける

麺茹で、盛り付け、天ぷら、会計、配膳のどこで待ちが発生しているかを確認します。

3. 制約工程の1時間当たり処理数を測る

感覚ではなく、何食、何皿、何件を処理できたかを数字にします。

4. 制約工程を止める作業を書き出す

探す、運ぶ、待つ、確認する、やり直す時間を記録します。

5. ほかの人でもできる仕事を外す

準備、補充、運搬、片付けを、前後の工程や補助担当へ移します。

6. 制約工程に合わせて前後を動かす

前工程はつくり過ぎず、後工程は制約工程から出た仕事を待たせないようにします。

7. 改善後に新しい制約を探す

1週間ごとに処理数と待ち時間を確認し、詰まりが別の場所へ移っていないかを見ます。

改善前後で確認する数字

  • ピーク1時間の注文数
  • ピーク1時間の提供数
  • 注文から提供までの平均時間と最長時間
  • 制約工程の1時間当たり処理数
  • 制約工程が止まっていた時間
  • 仕掛品や注文待ちの数
  • 探す、運ぶ、待つ、やり直す時間
  • 残業時間と休日出勤時間
  • 納期遅れ、提供遅れの件数
  • 不良、作り直し、食べ残しの数

改善前後を同じ条件で比較してください。現場が忙しくなったか、暇になったかではなく、お客さまへ届けた完成品や一杯が増えたかで判断します。

経営者がやってはいけない三つのこと

1. 制約条件が分からないまま人を増やす

人を増やせば、教育、指示、確認、情報共有も増えます。制約が別の場所にあれば、固定費だけが増えます。

2. すべての工程の稼働率を上げる

制約工程より速い前工程をさらに動かせば、仕掛品と在庫が増え、流れが悪くなります。

3. 現場の頑張りを改善と呼ぶ

残業と徹夜で納期を守れても、翌月に同じことが起きるなら、仕組みは改善していません。

経営者が評価すべきなのは、忙しさではありません。同じ人と設備で、流れが安定し、完成数が増え、働く時間が短くなったかです。

世界麺未来戦略研究所

「全員を急がせるのではなく、流れを止めている一か所を速くする。そこから全体が変わる」

生産能力が足りない時、人を増やす。納期が危ない時、残業を増やす。注文がたまった時、全員を急がせる。これでは、問題の原因は残ったままです。

最初にすべきことは、制約条件を見つけることです。次に、制約工程を止めている仕事を取り除くことです。そして、制約工程に合わせて、前後の流れを整えることです。人を増やすのも、設備を買うのも、その後です。

頑張りを増やす前に、流れを変える。これが、人を疲弊させずに生産能力を高める管理です。

経営者への問い

あなたのお店や会社で、今、最も仕事がたまっている場所はどこでしょうか。そこで働く人は、本当にその人にしかできない仕事へ集中できているでしょうか。

材料を探す。道具を取りに行く。誰かの指示を待つ。前工程のミスをやり直す。もし、このような時間があるなら、新しい設備や人材を増やす前に、その時間を取り除いてください。一つの制約工程が流れ始めると、会社や店全体の景色が変わります。

大和製作所では、製麺機や製麺技術だけでなく、生産管理、納期管理、店舗のボトルネック改善についても、実体験を基に支援しています。

設備や人を増やす前に、現在の力を最大限に生かしたい方は、ぜひご相談ください。

世界麺未来戦略研究所からのご提案

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藤井 薫(ロッキー藤井)

株式会社大和製作所、株式会社讃匠を創業。
令和5年 秋の叙勲にて「旭日単光章」受章。

1948年5月、香川県坂出市生まれ。国立高松工業高等専門学校機械工学科卒業。川崎重工株式会社に入社し、航空機事業部機体設計課に配属。その後、独立し、1975年に大和製作所を創業。

過去48年以上にわたり、麺ビジネスを一筋に研究し麺ビジネスの最前線で繁盛店を指導。麺専門店の繁盛法則について全国各地で公演を行う。小型製麺機はベストセラーとなり、業界トップシェアを誇る。
「麺店の影の指南役」「行列の仕掛け人」として「カンブリア宮殿」「ありえへん∞世界」「スーパーJチャンネル」等、人気TV番組に出演するほか、メディアにも多数取り上げられる。
また、2000年4月にうどん学校、2004年1月にラーメン学校とそば学校を開校し、校長に就任。

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