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世界麺未来戦略研究所

皆様、こんにちは。大和製作所創業者、ロッキー藤井です。

ラーメンのスープ濃度を確認するとき、多くの店では、完成直後の状態を測ります。丼にスープを入れ、茹で上がった麺を合わせ、厨房で最初の一口を味見します。もちろん、この確認は大切です。

しかし、お客様が食べている間にも、スープの状態は変わり続けています。特に食事時間の長い海外では、最初の一口だけを基準にスープを設計すると、食べ終わる頃には店が目指した味から大きく離れてしまうことがあります。

日本人と海外では食べる速さが違う

日本人は、一般的にラーメンを食べるのが速い傾向があります。

日本の一般的なラーメン店では、ランチ時間に一時間で三回転する店もあります。

一人のお客様が入店し、注文し、食べ終わり、会計を済ませるまでの時間が短いのです。

ところが、海外では食事をしながら会話を楽しむ文化があります。

ラーメンであっても、日本人のように短時間で食べ終わるとは限りません。

一時間に一回転程度の店もあります。

すると、お客様がラーメンを食べている時間が長くなります。

その間に、麺はスープを吸います。

麺の表面から、でんぷんや、かん水に由来する成分などがスープへ移ります。

麺は次第に軟らかくなり、スープの濃度や舌触り、味の感じ方も変わっていきます。

ニュージーランドで驚いた一杯

以前、ニュージーランドを訪問したとき、とんこつラーメン店に入りました。

運ばれてきたラーメンのスープは、とんこつとしては非常に濃度が低く、私の感覚ではBrix2~3度程度でした。

最初は、「なぜ、これほど薄いスープを出すのだろうか」と驚きました。

ところが、現地のお客様と同じように、時間をかけて食べ進めると、スープの状態が変わってきました。

麺からでんぷんやその他の成分がスープへ溶け出し、30分ほどたつ頃には、私の感覚ではBrix5~6度程度に相当する濃さになっていたのです。

ここで私は、この店は提供直後のスープだけでなく、お客様が時間をかけて食べる間の濃度変化まで考えているのではないか、と気づきました。

最初から濃度を高くすると、30分後には濃すぎて、最後までおいしく食べられない可能性があります。

だから、食べ始めは薄く感じても、食べ終わる頃にちょうどよくなるように設計していたのかもしれません。

商品の完成は提供した瞬間ではない

多くの店は、ラーメンをお客様へ提供した時点で、商品が完成したと考えます。

しかし、本当の商品は、お客様が食べ終わるまで続いています。

  • 最初の一口はおいしい
  • 10分後には塩味が強く感じられる
  • 20分後には麺が伸び、スープに粘りが出る
  • 30分後には最初とは全く違う一杯になっている

これでは、店が設計した味を最後まで届けたことにはなりません。

特に海外でラーメン店を開く場合は、日本の食事速度を基準にしてはいけません。現地のお客様が実際に何分かけて食べるのかを確かめ、その時間に合わせて麺とスープを一緒に設計する必要があります。

Brix値だけでおいしさは決まらない

スープ濃度を確認する方法の一つに、糖度計・濃度計で測るBrix値があります。

ただし、Brix値は、スープのおいしさそのものを表す数字ではありません。

スープに溶けている成分量の変化を見るための、一つの目安です。

同じBrix値でも、塩分、脂、うま味、香り、温度、口当たりが違えば、感じるおいしさは変わります。

また、測定時の温度や、スープを採る場所によっても数値が変わる可能性があります。

したがって、測定条件を揃えたうえで、数字と実際の味を一緒に確認することが大切です。

30分間の時間軸試食を行う

今週、自店の代表的なラーメンを一杯つくり、時間をかけて食べてみてください。

厨房で立ったまま、急いで味見をしてはいけません。

お客様と同じ客席に座り、次の時点で確認します。

  • 提供直後
  • 5分後
  • 10分後
  • 20分後
  • 30分後

それぞれの時点で、次の五つを記録します。

  • スープのBrix値
  • スープの温度
  • 塩味、うま味、香りの感じ方
  • 麺の硬さ、弾力、表面の状態
  • スープと麺の一体感

重要なのは、最初と最後だけを比べることではありません。

  • どの時点から急に味が変わるのか
  • 麺が軟らかくなる前に、スープが濃くなっていないか
  • 10分後に最もおいしいのか、20分後なのか

時間による変化を一本の線として捉えることです。

最初の濃度ではなく濃度変化を設計する

これからのラーメン店は、提供時のスープ濃度だけでなく、お客様が食べ進める間の濃度変化まで設計する必要があります。

特に、ミシュランの星を目指すような、繊細なスープを扱う店では、小さな変化が一杯全体の印象を左右します。

  • どの麺を使うか
  • 麺の太さ、加水率、かん水、茹で時間をどうするか
  • スープの初期濃度をどこに置くか
  • 丼の形や温度をどうするか

これらは、別々の問題ではありません。

お客様が一杯を食べ終わるまでの時間を基準に、すべてを一つの商品として設計する必要があります。

本日の問い

あなたの店では、スープ濃度を提供直後にしか測っていないでしょうか。

お客様が10分、20分、30分かけて食べたとき、スープと麺がどのように変化するかを確認しているでしょうか。

日本人が短時間で食べることを前提につくられたラーメンが、海外でも同じようにおいしいとは限りません。

そして日本国内でも、食事をゆっくり楽しむお客様や高付加価値の一杯を味わうお客様が増えれば、同じ問題が起こります。

最初の一口だけを完成させるのではありません。

最後の一口まで、おいしく食べられる一杯を完成させる。

これが、これからのラーメン設計です。

    • 海外向けラーメンの麺とスープを見直したい
    • 時間がたつと、麺が伸び、スープが重くなる
    • 最初から最後までおいしい一杯を設計したい

    このような課題をお持ちの場合は、大和麺学校をご検討ください。

    麺の太さ、加水率、かん水、茹で時間、スープ濃度、現地のお客様の食事時間まで、一杯全体の時間変化を一緒に確認します。

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藤井 薫(ロッキー藤井)

株式会社大和製作所、株式会社讃匠を創業。
令和5年 秋の叙勲にて「旭日単光章」受章。

1948年5月、香川県坂出市生まれ。国立高松工業高等専門学校機械工学科卒業。川崎重工株式会社に入社し、航空機事業部機体設計課に配属。その後、独立し、1975年に大和製作所を創業。

過去48年以上にわたり、麺ビジネスを一筋に研究し麺ビジネスの最前線で繁盛店を指導。麺専門店の繁盛法則について全国各地で公演を行う。小型製麺機はベストセラーとなり、業界トップシェアを誇る。
「麺店の影の指南役」「行列の仕掛け人」として「カンブリア宮殿」「ありえへん∞世界」「スーパーJチャンネル」等、人気TV番組に出演するほか、メディアにも多数取り上げられる。
また、2000年4月にうどん学校、2004年1月にラーメン学校とそば学校を開校し、校長に就任。

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