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根っ子は守る。枝葉は変える。

先日の記事(世界で成功する外食は、商品ではなく文化を売っている)では、世界で成功している外食企業は、単に商品を売っているのではなく、「文化」を売っているという話をしました。

そして、その文化の中心には、企業が決して失ってはいけない「根っ子」がある、という話もしました。

今日は、そこからさらに一歩踏み込みたいと思います。

世界企業は、何を変え、何を変えなかったのか。

このテーマについて考えてみます。

昔のチェーン経営は「一律化」だった

かつてのチェーン経営は、徹底した一律化を目指していました。

どこへ行っても同じ店。
どこへ行っても同じ商品。
どこへ行っても同じ接客。

この仕組みには、大きな強みがあります。

効率は上がります。
品質も安定します。
教育もしやすくなります。
店舗数を増やしやすくなります。

チェーンビジネスが成長するうえで、一律化は非常に重要な考え方でした。

しかし、世界が成熟した現在、それだけでは通用しにくくなっています。

なぜなら、国によって文化が違うからです。
宗教も違います。
ライフスタイルも違います。
食習慣も、価値観も違います。

同じものを、同じ形で、同じように提供すれば成功する。
そういう時代ではなくなってきているのです。

マクドナルドは何を変え、何を変えなかったのか

マクドナルドは、世界中に店舗を展開しています。

しかし、日本、インド、中東では、提供しているメニューが違います。

インドでは宗教や食文化に配慮し、牛肉を使わないメニューがあります。
日本には、てりやきバーガーのような日本独自の商品があります。
国や地域ごとの文化、習慣、味覚に合わせて、メニューを柔軟に変えています。

では、マクドナルドは何でも変えているのでしょうか。

そうではありません。

変えないものがあります。

品質。
サービス。
清潔さ。
そして、早く、安心して食事ができること。

この根っ子は、世界中どこへ行っても変わりません。

商品は変える。
しかし、マクドナルドらしい体験価値は変えない。

ここに、世界企業としての強さがあります。

スターバックスは何を変え、何を変えなかったのか

スターバックスも同じです。

京都の店舗には、京都らしさがあります。
上海の店舗には、上海らしさがあります。
バンコクの店舗には、バンコクらしさがあります。

建物、内装、空間づくり、提供する商品は、地域ごとに変化しています。

しかし、どこへ行っても変わらないものがあります。

それが、「第三の場所」という思想です。

家でもない。
職場でもない。
一人でも、誰かと一緒でも、心地よく過ごせる場所。

この考え方が、スターバックスの根っ子です。

店舗の姿は変わっても、提供している本質は変わりません。
コーヒーを売っているように見えて、実際には「心地よく過ごせる時間と場所」を提供しているのです。

丸亀製麺は何を変え、何を変えなかったのか

私は、丸亀製麺の世界展開は非常に興味深いと思っています。

丸亀製麺は、世界中で展開しながらも、根っ子を大切にしています。

打ち立て。
茹で立て。
でき立て。

この価値は、簡単には変えません。

店舗で製麺し、お客様の目の前ででき立てのうどんを提供する。
この体験こそが、丸亀製麺の根っ子です。

一方で、現地への対応は柔軟です。

宗教。
食習慣。
ライフスタイル。
味覚。
利用シーン。

こうした地域ごとの違いに合わせて、メニューや店舗運営を調整しています。

つまり丸亀製麺は、讃岐うどん文化の根っ子を守りながら、枝葉を現地化しているのです。

一風堂は何を変え、何を変えなかったのか

一風堂も、根っ子を守りながら世界へ適応している企業です。

河原成美創業者の美学。
博多ラーメン文化。
接客へのこだわり。
店舗の空気感。
清潔感。
ブランドとしての完成度。

これらは、一風堂が大切にしてきた本質です。

一方で、国や地域ごとの市場に合わせて、店舗設計やメニューは変えています。

海外では、日本と同じやり方をそのまま持ち込むだけでは通用しません。
現地のお客様が入りやすい店づくり、食べやすい商品設計、受け入れられやすい価格やサービスが必要になります。

しかし、一風堂らしさまで失ってしまえば、それは一風堂ではなくなります。

だからこそ、一風堂は「一風堂文化」という根っ子を守りながら、世界の市場へ適応しているのです。

8番らーめんは何を変え、何を変えなかったのか

タイで多くの店舗を展開する8番らーめんも、同じ考え方で見ることができます。

8番らーめんは、日本のラーメン文化を持ちながら、タイの人たちの日常食として進化しました。

家族で利用する。
買い物の途中に立ち寄る。
安心して食事ができる。
日常の中で無理なく使える。

こうしたタイの生活文化に合わせたことで、8番らーめんは現地に根づいていきました。

しかし、変えなかったものもあります。

品質へのこだわり。
安心して利用できること。
日本のラーメン店としての信頼感。

現地の生活に合わせて枝葉は変える。
しかし、お客様に安心して食べていただくという根っ子は変えない。

ここに、海外で長く支持される理由があると思います。

世界企業に共通する知恵

世界企業を研究していると、成功している企業には共通点があります。

それは、すべてを標準化しているわけではない、ということです。
かといって、すべてを現地化しているわけでもありません。

根っ子は守る。
枝葉は変える。

このバランスが非常に上手なのです。

根っ子とは、その企業が絶対に失ってはいけない本質です。
枝葉とは、時代や地域、お客様に合わせて変えてよい部分です。

この二つを混同すると、経営は難しくなります。

根っ子まで変えてしまえば、企業の個性は失われます。
逆に、枝葉まで変えなければ、市場に適応できません。

世界で成功している企業は、この見極めが非常に優れているのです。

私はこれを「根っ子経営」と呼んでいる

私は、こうした考え方を「根っ子経営」と呼んでいます。

企業が大きくなればなるほど、何が根っ子で、何が枝葉なのかを見極めることが重要になります。

メニューを変えるべきなのか。
価格を変えるべきなのか。
店舗デザインを変えるべきなのか。
接客方法を変えるべきなのか。
それとも、絶対に変えてはいけないのか。

この判断を誤ると、企業は方向性を失います。

根っ子まで変えてしまう企業は、やがて何の会社か分からなくなります。
一方で、枝葉まで変えない企業は、時代や市場に取り残されます。

だからこそ、根っ子は守る。
枝葉は変える。

この考え方が、これからの経営にはますます重要になると思います。

さいごに

昔のチェーン経営は、一律化の経営でした。

同じ商品。
同じ店舗。
同じ接客。
同じ仕組み。

それによって効率を高め、品質を安定させ、規模を拡大してきました。

しかし、これからの世界企業は、それだけでは成長できません。

文化は現地化する。
しかし、本質は変えない。

根っ子は守る。
枝葉は変える。

私は、これこそが世界企業に共通する経営の知恵だと思っています。

そして、麺ビジネスが世界へ広がるためにも、まず自社の根っ子を知ることが必要です。

何を守るのか。
何を変えるのか。
何を変えてはいけないのか。

その見極めが、次の10年の競争力になると思います。

皆さまのお店の根っ子は何でしょうか。
ぜひ一度、考えてみてください。

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Picture of 藤井 薫(ロッキー藤井)
藤井 薫(ロッキー藤井)

株式会社大和製作所、株式会社讃匠を創業。
令和5年 秋の叙勲にて「旭日単光章」受章。

1948年5月、香川県坂出市生まれ。国立高松工業高等専門学校機械工学科卒業。川崎重工株式会社に入社し、航空機事業部機体設計課に配属。その後、独立し、1975年に大和製作所を創業。

過去48年以上にわたり、麺ビジネスを一筋に研究し麺ビジネスの最前線で繁盛店を指導。麺専門店の繁盛法則について全国各地で公演を行う。小型製麺機はベストセラーとなり、業界トップシェアを誇る。
「麺店の影の指南役」「行列の仕掛け人」として「カンブリア宮殿」「ありえへん∞世界」「スーパーJチャンネル」等、人気TV番組に出演するほか、メディアにも多数取り上げられる。
また、2000年4月にうどん学校、2004年1月にラーメン学校とそば学校を開校し、校長に就任。

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