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はじめに

前回の記事では、世界の成功店を参考にしながら、これからの麺店は「店内売上だけで戦う時代ではない」という話をしました。

今回は、その前提となる最も大切なテーマを考えます。

それは、自店の強い商品をどう作るかです。

売上の入口を増やす。
テイクアウトを始める。
デリバリーに対応する。
デジタル注文を導入する。
法人需要を開拓する。
家庭用商品を作る。

これらは、どれも大切です。

しかし、その前に必要なものがあります。
それは、お客様が「この店なら、これを食べたい」と思える中心商品です。

Fast Casualの本質は「一段上の商品」にある

世界のFast Casualを見ると、このことがよく分かります。

Fast Casualとは、単なるファストフードではありません。
早く提供できる。
気軽に利用できる。
それでいて、商品レベルは一般的なファストフードより一段上にある。

ここに、成功の本質があります。

Chipotleは、メキシカン料理を日常的に、早く、しかし素材感のある商品として提供しました。注文を受けながら、お客様の目の前で商品を組み立てるスタイルにより、早さと鮮度感を両立しています。

単なる安い食事ではなく、自分で選べる、満足度の高い食事にしたことが強みです。

Shake Shackは、ハンバーガーをただのファストフードとして扱いませんでした。上質な素材、注文後調理、できたて感、店の雰囲気を組み合わせ、ハンバーガーを一段上の商品体験に高めました。

早く食べられる。
しかし、安っぽくない。

ここに、強い商品づくりのヒントがあります。

CAVAは、地中海料理をボウル形式にし、現代のお客様が選びやすい商品にしました。野菜、タンパク質、ソース、トッピングを自由に組み合わせることで、健康感、満足感、カスタマイズ性を一つの商品設計にまとめています。

Sweetgreenは、サラダを単なる副菜ではなく、主食として成立する商品へ高めました。品質の高い素材、健康感、デジタル注文、都市型ライフスタイルを結びつけ、サラダを日常の食事として選ばれる商品にしています。

Raising Cane’sは、メニューを広げすぎません。チキンフィンガー、ソース、ポテト、トーストという非常に絞り込んだ商品構成で勝負しています。

商品を絞ることで、品質、スピード、オペレーションを磨き込んでいるのです。

Five Guysも同じです。ハンバーガーとポテトを中心に、できたて、ボリューム、素材感を大切にしています。複雑なメニューではなく、中心商品の完成度を高めることで支持を得ています。

麺店にとって参考になる視点

日本のうどん店で考えると、参考になるのは単なる低価格うどん店だけではありません。

むしろ、つるとんたんのように、うどんそのものを一段上の商品体験に高めた店から学べることがあります。

つるとんたんは、うどんを「早く安く食べる日常食」だけで終わらせていません。

大きな器。
印象に残る盛り付け。
上質感のある空間。
多彩な創作うどん。
会食にも使える雰囲気。
女性客や都市型客層にも響く商品設計。

つまり、うどんという身近な商品を、わざわざ行きたい食体験へ高めています。

これは、麺店にとって非常に重要な学びです。

安いだけのうどんではない。
早いだけのうどんでもない。
量が多いだけのうどんでもない。

お客様が写真を撮りたくなる。
人に話したくなる。
少し高くても納得する。
また別の商品も試したくなる。

このレベルまで商品を磨くことが、これからの麺店には求められます。

強い店には「あの店といえば、これ」がある

世界のFast Casualも、つるとんたんのような成功店も、共通しているのは、商品レベルを一段上げていることです。

早く出す。
便利にする。
店数を増やす。
デジタル化する。

これらは大切です。
しかし、その前に、商品そのものが「普通より一段上」でなければなりません。

強い店ほど、中心商品がはっきりしています。

Chipotleといえば、ブリトーやボウル。
Shake Shackといえば、上質なバーガー。
CAVAといえば、地中海ボウル。
Sweetgreenといえば、主食になるサラダ。
Raising Cane’sといえば、チキンフィンガー。
Five Guysといえば、できたてのバーガーとポテト。
つるとんたんといえば、印象に残る大きな器と創作うどん。

お客様の頭の中に、**「あの店といえば、これ」**があるのです。

これは、麺店にとっても同じです。

うどん店なら、何が一番強いのか。
ラーメン店なら、何で記憶されているのか。
そば店なら、どの商品が一番選ばれているのか。
パスタ店なら、どの一皿が看板になるのか。

売上を伸ばすために、商品数を増やすことがあります。
しかし、商品数を増やしすぎると、かえって店の印象がぼやけることがあります。

お客様は、すべての商品を覚えてくれるわけではありません。
覚えてくれるのは、多くの場合、一つです。

あの店の肉うどん。
あの店の釜揚げうどん。
あの店のカレーうどん。
あの店の鶏白湯ラーメン。
あの店の十割そば。
あの店のつけ麺。

この一つを作れるかどうかが、店の未来を変えます。

強い商品に必要な5つの条件

強い商品づくりには、いくつかの条件があります。

第一に、分かりやすいこと。
お客様が一言で説明できる商品であることです。

第二に、記憶に残ること。
味、香り、食感、見た目、器、空間、体験のどこかに印象があることです。

第三に、繰り返し食べたくなること。
一度だけ驚かせる商品ではなく、日常的に戻ってきたくなる商品であることです。

第四に、オペレーションに乗ること。
どれだけおいしくても、現場で安定して提供できなければ、強い商品にはなりません。

第五に、展開できること。
店内だけでなく、持ち帰り、家庭用、法人需要、事前注文にも広げられる可能性があることです。

麺店が磨くべき商品価値

麺店の場合、特に大切なのは、麺そのものの完成度です。

麺の食感。
茹で上がり。
出汁やスープとの相性。
香り。
器。
盛り付け。
商品名。
食べた時の満足感。
時間が経った時の状態。
持ち帰りにした時の品質。
家庭で再加熱した時の再現性。

これらを一つひとつ研究することで、商品は一段上に上がります。

Fast Casualの成功店は、ただ速いだけではありません。
商品レベルを落とさずに、速く、分かりやすく、繰り返し利用できる形にしたのです。

つるとんたんのような成功店も、ただうどんを出しているだけではありません。
うどんに、見た目、空間、選ぶ楽しさ、特別感を加え、商品体験そのものを高めています。

これは、麺店にもそのまま当てはまります。

ただ早く出すだけでは不十分です。
ただ安くするだけでは、価格競争になります。
ただメニューを増やすだけでは、厨房が複雑になります。

大切なのは、自店の中心商品を一段上のレベルに磨き込むことです。

一段上の麺。
一段上の出汁。
一段上の食感。
一段上の香り。
一段上の器。
一段上の盛り付け。
一段上の商品名。
一段上の店内体験。

この「一段上」がお客様に伝わった時、店は強くなります。

高AUV店への第一歩は、強い商品づくりから

高AUV、つまり1店舗あたりの売上が高い店を目指すうえで、最初に取り組むべきことはデジタル化ではありません。

テイクアウトでもありません。
デリバリーでもありません。

まず必要なのは、お客様が思い出してくれる強い商品を作ることです。

その強い商品があるから、店内売上が伸びる。
その強い商品があるから、テイクアウトにも広がる。
その強い商品があるから、法人需要にも展開できる。
その強い商品があるから、デジタル注文でも選ばれる。
その強い商品があるから、ブランドになる。

商品が弱いまま売上の入口を増やしても、成果は続きません。
しかし、商品が強ければ、入口を増やすたびに売上の可能性は広がります。

大和製作所が考える、これからの商品づくり

大和製作所は、製麺機を作る会社であると同時に、麺づくりそのものを研究する会社です。

麺の品質。
食感。
加水。
熟成。
茹で時間。
出汁やスープとの相性。
器とのバランス。
見た目の印象。
少人数でも安定して作れる仕組み。
持ち帰りや家庭用への展開可能性。

これらを研究し、皆さまの商品づくり、店舗づくり、売上づくりに役立つ情報をお届けしてまいります。

まずは今週、自店の商品を一つ見直してみてください。

お客様は、その商品を一言で説明できるでしょうか。
人にすすめたくなるでしょうか。
もう一度食べたくなるでしょうか。
写真を撮りたくなるでしょうか。
店内以外にも展開できるでしょうか。
他店より一段上だと感じてもらえるでしょうか。

世界のFast Casualと、つるとんたんのような成功店が教えてくれることは明確です。

強い店は、強い商品から始まる。
強い商品は、店の未来を変える。

これが、この記事のテーマです。

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Picture of 藤井 薫(ロッキー藤井)
藤井 薫(ロッキー藤井)

株式会社大和製作所、株式会社讃匠を創業。
令和5年 秋の叙勲にて「旭日単光章」受章。

1948年5月、香川県坂出市生まれ。国立高松工業高等専門学校機械工学科卒業。川崎重工株式会社に入社し、航空機事業部機体設計課に配属。その後、独立し、1975年に大和製作所を創業。

過去48年以上にわたり、麺ビジネスを一筋に研究し麺ビジネスの最前線で繁盛店を指導。麺専門店の繁盛法則について全国各地で公演を行う。小型製麺機はベストセラーとなり、業界トップシェアを誇る。
「麺店の影の指南役」「行列の仕掛け人」として「カンブリア宮殿」「ありえへん∞世界」「スーパーJチャンネル」等、人気TV番組に出演するほか、メディアにも多数取り上げられる。
また、2000年4月にうどん学校、2004年1月にラーメン学校とそば学校を開校し、校長に就任。

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