売れる×儲かる×季節に合う!AIが導く次世代メニューの戦略

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【繁盛麺店への道】Vol.2

はじめに:「感覚経営」から「五感経営」へ

私も20数年前にはうどん店を経営していました。その頃には、このような考えもなく、自分なりに拘ったさぬきうどんで、珍しいメニュー等で勝負していました。ところが、本場さぬきうどんは値段が安く、その範囲からどうしても抜け出せずに、ビジネスとして成功させることは出来ませんでした。麺にもこだわりましたが、一番こだわったのが出汁で、ぶっかけ出汁、ざる出汁には、赤ワイン、白ワインで甘味を取っていました。従って、砂糖のべたっとした甘さではなく、すっきりした甘さが特徴でした。

最も大きな障害だったのが、立地と駐車場の問題でした。従って、麺学校の経営講義では商圏分析により、最適な駐車場台数を常に分析していました。日本の郊外型の麺ビジネスのほとんどの大きな課題は、駐車場が十分ではないということです。都心以外のほとんどの立地は、自動車商圏になり、駐車場がないと勝負出来ない場所ばかりです。

ところで、現在の日本では、原材料費・人件費・光熱費の高騰が止まりません。「値上げか我慢か?」という二択に迫られがちな現代の麺ビジネスの経営ですが、実は“第三の道”があります。

それが、【AIによる可視化と最適化】。

本号では、原価・調理時間・人気度・時間帯別傾向・季節要因といった複雑に絡む要素を、AIを活用して見える化し、「本当に儲かるメニュー」を設計する戦略を紹介します。麺ビジネスを長く成功させるには、利益確保は必須です。利益は単なるコストダウンだけでは最大化出来ません。コストダウンも絶対ですが、同様に、ビジネスの中身を利益構造に変革することが最も重要です。これはどんなビジネスにおいても、全く同様です。AIが当たりまえになった今、あなたのビジネスをお客さまを最高にハッピーにしながら、最高の利益構造にする方法について、一緒に考えてみたいと思います。

物価高、人件費高騰、光熱費増――

これらにどう対応するか?と問われれば、多くの店主がまず思い浮かべるのは「値上げ or 我慢」です。

しかし、そこに第3の道があります。
それが、**「AIによる可視化と最適化」**です。

本号では、以下の5つの視点から、麺ビジネスの“利益構造”を再設計する方法をお届けします:

  1. 原価と粗利の分析
  2. 調理時間と作業負荷の見える化
  3. 売れ筋と人気順の客層・時間帯別分析
  4. 値上げの許容ラインと戦略的価格設計
  5. 季節変動を織り込んだ年間メニュー最適化

「儲かってるつもり」から抜け出す利益の再定義

よく出るメニューが儲かっているとは限りません。

たとえば:

  • 天丼うどんセット:注文は多いが原価高+調理4分
  • 替え玉:原価低いが回転しないと利益にならない
  • 人気の肉うどん:ランチでは注文されるが夜は失速

👉 人気・回転率・原価・作業負荷を掛け合わせて見る必要があります。

効果

  • ピークの集中緩和(並ばない、待たない店へ)
  • 午後の売上が劇的に伸びる
  • “混んでるから行かない”層を再獲得

調理時間=“隠れた原価”をAIでスコア化

「儲からない理由」の多くは、調理の工数が利益を喰っていることにあります。

メニュー 粗利 調理時間 1分あたり粗利 評価
ざるうどん 210円 1分 210円
天ぷら定食 350円 4分 87.5円
肉ぶっかけ 250円 2分 125円

AIなら、このように“1分単位の生産性”まで分析して、回転率と連動した利益設計が可能になります。

時間帯・曜日・客層の違いが“売れ筋”を変える

麺ビジネスでは、「いつ、誰が来るか」が極めて重要です。客筋により、客単価と滞留時間が大きく変わります。

曜日・時間帯 客層 注文傾向 注目点
平日ランチ サラリーマン 単品、早い、安い 提供1分以内、原価50%以下
土日昼 家族連れ セット、多品目 客単価UP、準備性がカギ
常連・若年層 アルコール・つまみ系 原価高でも粗利率は良い

AIは、POSデータや会員属性、天気予報といった情報を組み合わせ、時間帯別・曜日別・気温別の売上構造を可視化できます。

値上げは“悪”ではない。戦略的価格設計のススメ

AIの分析により、人気商品の価格弾力性(=値上げしても客が離れにくい度合い)が分かります。

  • 人気メニューは+50円しても注文数がほぼ変わらないことが多い
  • 値上げによって「特別感」が生まれ、満足度がむしろ上がることも

ただし、価格弾力性分析には過去の価格変更履歴と販売数のデータが必要です。 まだ履歴がない場合でも、AIは以下のような推定分析を行うことが可能です:

  • 現在の価格と売上構成比(出数)
  • メニューの原価率・粗利率・調理時間
  • 類似店舗・類似商品での販売実績との相関
  • SNSやレビューでの「支持率」や満足度スコア

これにより、AIは**「この商品は価格を10〜30円上げても支持される可能性が高い」**などの仮説を立てることができます。

気温によって“売れるうどん”は変わる!AIが教える温度別メニュー戦略

夏の気温上昇にともない、“軽くて涼しい”うどんメニューの需要が高まります。
特に最近の猛暑傾向では、以下のような「気温による明確な嗜好の変化」が起きています:

外気温 人気傾向 メニュー例 味/構成の特徴 提供戦略
20℃未満 温かい・出汁重視 かけうどん、鍋焼きうどん 出汁濃いめ、湯気と香り 湯気写真・“温まる”訴求
20~25℃ 徐々に冷たい麺も登場 肉うどん、温玉ぶっかけ 温冷ミックス構成 「選べる温度」で表示強調
26~29℃ 冷たいぶっかけ系が優位 ぶっかけうどん、冷やしとろろ 大根おろし、すだち、柑橘風味 清涼感ビジュアル/氷仕立て訴求
30℃以上 とにかく“涼感・軽さ”重視 氷水ざるうどん、ミニぶっかけ 麺少なめ+香味野菜+冷水〆 小盛対応・スピード提供徹底

✅ これらの傾向は、AIが気温と売上データをクロス分析することで即時に分かります。

✅ 同じうどんでも、「構成」や「見せ方」「名前」ひとつで売れ行きが変わります。

例えば:

  • 「氷水仕立てレモンざる」:7月~8月に売上が通常ざるの1.6倍
  • 「温玉おろしぶっかけ」:25℃前後の平日にサラリーマン層に人気
  • 「小盛りぶっかけ+麦茶サービス」:猛暑日での回転率+25%

👉 気温ごとのベストメニュー”を自動で表示・提案することが、AIの真骨頂です。

これらを元に、季節別に構成・表示・価格を調整すれば、客単価と満足度を同時に高められます。

ケーススタディ:AI導入で変わった3つの店舗

  1. 郊外型うどん店:
    1. 夏場は“氷ざるうどん”を券売機トップに表示 → 客単価+90円、提供時間−25%
  2. 駅前型立ち食いラーメン店:
    1. 人気メニューをAI分析で+30円値上げ → 粗利+年間45万円、離脱ゼロ
  3. 商業施設内:
    1. 冬季に“温出汁+ご飯小盛”セットを自動提案 → 滞在時間+20%、再来率向上

実践ステップ:今からできる5つのこと

ステップ 内容
メニューごとの原価と調理時間をExcel等で棚卸し
POSデータを曜日・時間帯・季節で分析
AIツールを使って価格・人気・利益の相関を見える化
メニュー表示(券売機・タブレット)を客層・時間帯別に最適化
とにかくSNS・LINE連携で“気温に合ったオススメ”をパーソナライズ配信

編集後記|「経験」を「経営力」に変える時代

AIは、職人の勘に代わるものではなく、それを裏付け、進化させる“第二の目利き”です。

  • 味は変えずに、利益を上げる
  • 値上げしても、お客様が満足してくれる
  • 季節に応じて、食べたくなるメニューが自然に提供出来る仕組み作り

こうした経営感覚が、今日から“数字”と“ロジック”で身につく時代。

以上のように、麺ビジネスも丼勘定ではなく、デジタル化は必須の時代になりました。

デジタル化を推進し、儲かり続け、長く生き残れるビジネスを目指していきましょう。

尚、麺に関するご相談は、いつでも最寄りのドリームスタジオのメンバーが承ります。


次回Vol.3では、スタッフ不足や急な欠員でも回る「AI厨房×効率オペレーション」の最前線をお届けします。

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藤井 薫(ロッキー藤井)

株式会社大和製作所、株式会社讃匠を創業。
令和5年 秋の叙勲にて「旭日単光章」受章。

1948年5月、香川県坂出市生まれ。国立高松工業高等専門学校機械工学科卒業。川崎重工株式会社に入社し、航空機事業部機体設計課に配属。その後、独立し、1975年に大和製作所を創業。

過去48年以上にわたり、麺ビジネスを一筋に研究し麺ビジネスの最前線で繁盛店を指導。麺専門店の繁盛法則について全国各地で公演を行う。小型製麺機はベストセラーとなり、業界トップシェアを誇る。
「麺店の影の指南役」「行列の仕掛け人」として「カンブリア宮殿」「ありえへん∞世界」「スーパーJチャンネル」等、人気TV番組に出演するほか、メディアにも多数取り上げられる。
また、2000年4月にうどん学校、2004年1月にラーメン学校とそば学校を開校し、校長に就任。

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