2025年12月香川うどん学校 開催レポート
はじめに
今回の香川うどん学校には、日本から4名、海外から3名、再参加の方1名、計8名の生徒さんにご参加いただきました。
参加者の経験レベルは幅広く、うどん店で働いている方、飲食店を経営されている方まで、さまざまな背景をお持ちでした。生徒さんの中には、10年以上まったく別の仕事を経験したうえで新しい道として挑戦する方や、お二人で力を合わせて開業を目指す方もいました。いずれも「なぜ参加したのか」がはっきりしていて、それぞれの目標を胸に学びに来ている様子が印象的でした。
全体として製麺への関心がとても高いイメージでした。学校では、出汁や天ぷらの内容を熱心にメモを取り、深く納得されている様子が印象的でした。
授業が始まると皆さん真剣な表情で授業に耳を傾けていました。質問も要点を押さえたものが多く、内容をしっかり理解しようとする前向きな姿勢が感じられました。
実際に作ってみたからこそ分かった、「一から作る」大切さ
北海道から参加された、現在うどん店で働いている生徒さんが印象的でした。
10年以上別の職業で働いた後、転職して1年半うどん店に勤務されています。独立を目指して参加されたのですが、うどん店で働いていながら、製麺機を使うのは今回が初めてだったそうです。
うどん店といっても、すべてのお店で製麺から行っているわけではありません。むしろ、仕入れた麺を使っているお店の方が多いのが現状です。だからこそ、実際に製麺機を使って一から麺を作る経験は、とても大きな意味があったようです。
授業の中では、出汁合わせについては「とても難しい」と率直に感じられたとのことでしたが、それだけ真剣に向き合っておられました。
製麺では、最初は加水率50%で統一していましたが、選んだ小麦粉では51%の方が良い食感になることを授業を通して理解されました。こうした微調整は、理論だけでなく、実際に手を動かして生地を触り、茹でて食べてみることで初めて理解できるものです。
デジタルクッキングでも大切にしているように、数値で管理することで再現性が高まり、安定した品質のうどん作りにつながっていきます。
天ぷらの実習も手際よく進められ、講義には終始真剣に耳を傾け、積極的に質問されていました。片付けの場面でも自ら動いてくださり、日頃うどん店で働いているからこそ、あらためて基礎から学ぶことの大切さを感じていただけていれば嬉しく思います。
修了作品では、エビアボぶっかけを作られました。エビとアボカド、カイワレ、トマトを使用し、サラダのようなものをイメージしてタレとの食べ合わせを考えたとのこと。ターゲットは女性を想定されており、「皆さんにとって食べやすい味ではないかと思います」と発表されていました。
自国の食習慣から生まれた一杯
韓国から参加された生徒さんは、控えめな印象でしたが、作業に入ると動きは早く効率的に作業をこなされていました。毎回の授業にとても集中して取り組まれており、真剣さが伝わってきました。
麺と出汁の基本をきちんと学び、いろいろ応用してみたいという目標を持って参加されました。授業では基礎を一つひとつ丁寧に学びながら、最終的には自国の食文化を取り入れたアレンジに挑戦されました。
修了作品では、韓国の食文化とうどんを組み合わせた作品を作られました。韓国では、お酒を飲んだときや飲み会の後などに、胃腸の調子を整えるためにアサリの酒蒸しをよく食べるそうです。その習慣とうどんを組み合わせて、お酒と一緒に食べても美味しいように、少し塩味を強くして仕上げられました。
こうした自国の食文化を取り入れたアレンジは、海外でうどんを広める上で非常に大切な視点だと思います。基礎を学んだ上で、それを自分の文化に応用していく姿勢が印象的でした。
現地で続けられるうどんづくりを目指して
海外から参加されたお二人は、すでに飲食店を経営されており、うどん店の開業を目指して参加されました。
お二人とも非常に熱心で、休憩時間を使って天ぷらや製麺の練習を重ねられていました。特に、ひもかわうどんに興味を持たれていました。修了作品では桜色の生地でうどんを作り、また、日本の醤油にも大変興味を持たれていたのも印象的です。
海外で開業するにあたり、現地で白だしを作れるようにするため、代替品について相談されていました。日本では当たり前に手に入る調味料や食材も、海外では入手が難しいことがあります。そうした課題を一つひとつ解決していくために、何度も質問され、一緒に考えながら授業を進めました。
模擬店では素早い手つきで天ぷらを担当され、いろいろなポジションに興味を持って熱心に取り組まれていました。製麺についてもしっかり理解されていて、開業に向けた確かな技術を身につけられたのではないかと思います。
基礎を大切にしつつ、創作にも挑戦
東京から参加されたご夫婦は、開業を目指して参加されました。
イカ墨麺や抹茶麺など、オリジナルの製麺作りにも挑戦されました。北海道がご出身ということで、昆布は身近な存在だったようで、出汁については特に熱心に質問されていました。
印象的だったのは、開業をご検討されている地域の、水の硬度を事前に調べてこられたことです。水の硬度は、軟水と硬水の境界線ギリギリでしたが、こうした細かいところまで調べて準備されている姿勢に、開業への真剣さが伝わってきました。
すべての作業において慎重に取り組み、作業前には必ず講師に確認を取りながら進められていました。また、かき揚げで上手くいかない時にも、真剣にやり直していました。こうした一つひとつの積み重ねが、確かな技術につながっていくのだと思います。模擬店では主に出汁を担当され、声掛けがはっきりできていたので、他のメンバーとの連携も取れていました。
修了作品では「鉄板うどんナポリタン」を作られていました。コンセプトは、子供から大人まで大好きなナポリタンの味を目指し、制作時期が12月だったこともあり、クリスマスらしい要素も取り入れて仕上げられました。
学び直しから形にした一杯|独立を見据えて
福岡から来た生徒さんは「スパイシー三種キーマぶっかけうどん」を作りました。麺には全粒粉を入れて健康をテーマにし、キーマカレーで仕上げ、スパイスをたくさん使っているため、お腹の中が元気になるような作用を狙ったとのことでした。ターゲットは20代、30代以上の男女とのことです。
すでに飲食店を何店舗か経営している会社に勤めており、うどん店も手掛けているとのこと。今回は独立に向けて自分で学び直したいという想いで参加されました。メモをきっちりと取り、出汁合わせや製麺工程では効率を重視し、製麺を重点的に行われていました。人参を使ったうどんでは綺麗に色が出ていました。
どの作品も、見栄えはもちろんのこと、味の面でも非常に質の高いものに仕上がっていました。
日本で親しまれている親子丼をアイデアに
アメリカからご参加の生徒さんは、デジタルクッキングの考え方に非常に忠実で、細かいところまで数値化しながら進められていました。香川県内で食べた、少し太めのうどんの食感を気に入っており、その味を目指して製麺に取り組まれました。
アメリカも含め、海外で開業する場合、日本と同じ小麦粉が手に入るとは限りません。だからこそ、現地で調達できる小麦粉をどう選ぶか、どう配合するかを考えることが重要です。アメリカでも手に入りやすい小麦粉の成分を考慮しながら、さらに小麦粉を2種類ブレンドして製麺に取り組まれました。模擬店では製麺と茹でを担当され、製麺に積極的で行動も素早かったのが印象的です。
修了作品では「親子丼風うどん」を発表されました。本来は鶏の天ぷらと卵の天ぷらを上に乗せて「親子親子うどん」にしたかったそうですが、時間が足りず、それでも完成度の高い作品になっていました。
学びを力に、これからへ
卒業式では、それぞれが自分の言葉で、5日間を振り返りながら想いを伝えてくださいました。
北海道から参加された生徒さんは、「5日間お疲れ様でした。皆さんはこれから、さまざまな場所でうどん屋を開業されると思いますが、体に気をつけて頑張っていきましょう」と、これから歩んでいく仲間たちへメッセージを送っていました。
韓国から参加された生徒さんからは、「今はとても疲れていますが、頑張りましょう」と率直な言葉があり、学校では自然と笑顔が広がっていました。
海外から参加された生徒さんは、「先生方が熱心にサポートしてくださり、ありがとうございました。また、受講生の皆さんもお互いに助け合い、とても楽しく学ぶことができました」や、「ここで学んだことを、遠い場所で活かし、日本の文化を広げていきたい」などこれからの抱負も含めて述べられていました。
東京から参加された生徒さんは、「本場のさぬきうどんを一から学べたことが、自分たちの大きな自信につながりました。これからも、皆さんと一緒に頑張っていけたらと思います」と、これからに向けた前向きな想いを語られました。
そうした一人ひとりの言葉から、5日間の学びが確かに積み重なっていたことを、あらためて感じる時間となりました。皆さんがそれぞれの場所で、自分らしいうどんを形にしていく日を、私たちも楽しみにしています。
オープンキャンパス(無料見学会)では、試食や個別相談を通して、実際の授業の雰囲気や、生徒さん同士の空気感も感じていただけます。文章だけでは伝えきれない部分を、少しでも身近に感じていただけたら嬉しいです。
皆さまとお会いできることを、心よりお待ちしています。