当社の拠点の立地戦略を通じて、立地の大切さをたくさん学んできました。 立地戦略の成功事例と、失敗事例が学ぶ商圏分析の重要性とは?

第三章 これから成功する麺ビジネスの立地の本質の続きです。

私は自分のビジネスにおいても、当社の拠点の立地戦略を通して、立地の大切さをたくさん学んできました。
当社の各拠点のドリーム・スタジオは、機械の単価も高いので、うどん、そば店、ラーメン店ほど、毎日たくさんのお客さまが来社されるビジネスではありません。
それでも、各ドリーム・スタジオの立地については、絶対に妥協せずに決めてきたのです。
国内で8カ所ありますが、いずれも分かり易く、お客さまが来社されるのに、それほど不便な場所はありません。

例えば東京の拠点は現在の品川の東京支店で3カ所目ですが、最初は森下、2番目は清澄白河でした。ところが2番目の清澄白河が一番分かりにくく、建物も古く、倉庫だったので、3番目の現在の東京支店はお客さまにとって便利な場所に決めたのです。

それが現在の東京支店ですがこれはお客さまからの評判もよく、われわれにとっても、大変使いやすい場所となりましたが、これも過去のたくさんの経験の結果なのです。

当社の場合の選定基準は、駅から近いこと、駐車場が周りにたくさんあることですが東京ではこの両立はなかなか難しいのです。しかし妥協せずにたくさんの物件を視察してやっと決めたのが今の場所なのです。

ところが当社の場合は、大きな電気容量の広いキッチンを設けなければいけないので、やっと探し当てたこの今の物件も電気容量の問題を解決しなければなりませんでした。

それらの電気容量の改善工事・改装工事や転居費用、敷金礼金など多額の費用を投資しなければなりませんでした。それに比べると2番目の清澄白河は物件を借りる費用は安かったのですが、その後の不便さに伴う費用等を計算すると、お金には代えられないものがあると思います。

立地は、長く使うのでこのように金銭的な問題だけでなく、効率や利便性・お客様の印象・時間など長期の視点も重要だと思います。
要するに、長期的に見て、どちらに利益が出るかということです。
それでは次に、実際の当社麺学校の生徒さん、あるいはお客さまの立地獲得に関する成功事例と失敗事例について述べていきます。

1.立地において絶対に妥協しなかった、都内のうどん店「讃岐饂飩 元喜」さん

元喜のご主人、岩崎さんは当社のうどん学校を卒業した後、2006年に文京区千石で開店したのですが、私は岩崎さんと物件調査に何軒も一緒に見に行ったので、岩崎さんの物件については特別に思い入れがあるのです。

岩崎さんも最初不動産屋に情報の提供を求め、合計400件程度の物件情報をもらったそうです。
そして400件を物件情報で判断し残った100件をくまなく見て回ったそうです。
その100件の中から最終的に4件に絞り、4件について徹底的に長所、短所の比較をして現在の物件を決めたのです。

従って、現在の物件を得るために、一切の妥協をせずに、多くの時間とエネルギーを割いたのです。
まさに命懸けで物件を決めた貴重な事例で、営業状態も卒業生の中で模範生だと言えます。

2.次はさまざまな失敗事例の当社のスタッフたちからの報告です。

1.駅前のロータリーに面した細いビルで麺店開店

駅前によくある古い細いビルに1階・2階で開業されました。

1階に厨房と客席、2階は客席のみ。細いビルで、レイアウトが難しく、席数をおおくとろうとした結果、通路幅がとても狭く、大柄な方だとかなり窮屈な通路幅になってしまいました。2階も特別広いわけでなく、壁と窓に向かってカウンター席があるのみで、通路も人がひとりやっと通れる程度の広さでした。

こちらは麺学校の卒業生さんではなく、他で修行をされた方で、当社に開業相談に来られた時は、すでにこの物件を契約されており、後戻りができない状態でした。

隣接する飲食店は立ち食いの店や、もっと広い店内の店ばかりで入りやすいため、こちらのお店は、苦戦されています。
駅前=好立地と考えられ、決められてしまった物件でした。
物件契約前に大和と接点があれば全力で止めていた物件だったと思います。

経営講義やイベントのセミナーで物件選びの大切さについてお話しされていますし、われわれも商圏分析の結果や、それに基づくご相談の際には必ずお話ししているのですが、それに接することがない方もいるのだとあらためて感じました。
そして物件選びの大切さを再認識しました。(当社、スタッフ談)

2.当社のユーザーではなく、自家製麺体験教室に来られた元麺店店主のご夫婦

関東のローカル都市でラーメン店を開業し、それなりに流行って、繁盛したそうですが、駐車場が4~5台しか止められず、席数はそれよりも多かったため、来店される方が公道に迷惑駐車するようになってしまい、近隣住人とトラブルになり、通報され、退店を余儀なくされたそうです。(当社スタッフ談)

3.オープン後、8カ月で閉店した店舗

当社で何度か商圏分析をさせていただいていましたが、審査に落ちることが続き、焦りが出たのか、ご契約された物件は当社に相談なく、商圏分析もされずに駅近くのビルの2階に決めてしまっていました。
2階は良くないとお話ししても、「もう契約が済んでしまったので」と、ご開業されましたが、オープンして8カ月後に閉店しました。
立地も良く、人通りも良いとおっしゃっていましたが、通勤通学時以外はあまり人通りのない駅で、夜は安価な居酒屋が人気のようでした。

お店は高めの価格設定で、「その地域に同じような店がないので、2階でもきっと成功する」とおっしゃっていましたが、ニーズがなかったのだと思います。
2階というデメリット以外にも、地域性も合っていませんでした。
特に商圏分析の重要性を感じました。(当社スタッフ談)

4.パチンコ屋さんに隣接していた物件。

当社で行った商圏分析では、商圏内に人口が足りず、駐車場もパチンコ店と共同でした。
商圏は片道2車線の大きな幹線道路沿いで、幹線道路が商圏を分断していただけでなく、店舗は道路から少し入ってわかりづらい場所でした。

パチンコ店に来られる客に来てもらうと言われ、始めました。
パチンコ店に来る客層とターゲットがあっておらず、商圏的にも悪かったのです。
反対を押し切ってお店をされましたが、ほどなく閉店されてしまいました。

5.駐車場が足りないのに、無理やり開店した事例

自動車商圏がメインでありながら、駐車場が2台しか用意できず、オープンした。
開店してから、駐車場の重要さを痛感し、周りの空き地の所有者に声をかけたが、貸してもらえず、やむなく移転されました。

道路沿いの物件で、車速も早い場所だったため、認知していただくにも時間がかかる場所でした。
移転場所は、銀行などや商社などが周りに多くある市街地で、平日は食数が出るが、土日はほとんど出ないという場所となりました。(当社スタッフ談)


以上は、ほんの少しの事例です。

このような駐車場の問題、広さ、席数の問題等、商圏分析で得られたデータを無視して開店される方は、残念ながら後を絶たないのです。

次の「第五章 商圏分析の説明、良い立地の見分け方」では、当社の商圏分析ではどのような結果が得られるのか、明確にしていきます。

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プレゼンター

藤井 薫(ロッキー藤井)

藤井 薫(ロッキー藤井)

株式会社大和製作所、株式会社讃匠 代表取締役。
令和5年 秋の叙勲にて「旭日単光章」受章。

1948年5月、香川県坂出市生まれ。国立高松工業高等専門学校機械工学科卒業。川崎重工株式会社に入社し、航空機事業部機体設計課に配属。その後、独立し、1975年に大和製作所を創業。

過去48年以上にわたり、麺ビジネスを一筋に研究し麺ビジネスの最前線で繁盛店を指導。麺専門店の繁盛法則について全国各地で公演を行う。小型製麺機はベストセラーとなり、業界トップシェアを誇る。
「麺店の影の指南役」「行列の仕掛け人」として「カンブリア宮殿」「ありえへん∞世界」「スーパーJチャンネル」等、人気TV番組に出演するほか、メディアにも多数取り上げられる。
また、2000年4月にうどん学校、2004年1月にラーメン学校とそば学校を開校し、校長に就任。

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