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管理人の山本です。熟成のお話しの前に 川上大先生のお話をおひとつ。大先生は、昔から大先生であったわけでは有りません。(あたりまえですが・・・)実は元々は設計開発の仕事をしていたのです。あのめがねの様子から なあああるほど と思われている方もいらっしゃると思いますが。当然 製麺機を開発設計するのですから ある程度 いや 良く 麺に通じていないと良い製麺機も作る事は出来ませんよね。ですから麺についても色々勉強とか研究していたと思います。(たぶん?)しかし、ある日突然何かが起きたらしいのです。何かがおきて 開発をクビ?じゃなくて 異動? そして ある時は、なぞのセミナー講師、ある時は 麺研究室リーダーある時は製麺アドバイザー しかしてその実態は 大先生 ということになったのです。名付け親は、繁盛店アドバイザーの藤井 薫です。(社長を呼び捨てにしていいのか?)などと行っている内に 『早く講義を始めろ』 の声が聞こえてきましたので 川上大先生のプロフィールのつづきは次回と言う事で・・・


美味しいうどんを製造して行く上で、熟成と言う工程が「大変重要である事」は多くの方が御存知の様です。では、その熟成と言う現象が いったいどの様な変化であるのか、と聞かれた場合 ほとんどの方が御存知無い様です。ここでは この熟成と言う現象について 詳しく説明させて頂きます。この熟成と言う現象を 充分に理解し、適切な熟成、鍛え を行って初めて良いうどんが出来上がります。以下に熟成の本質的な現象について述べます。

熟成という現象には次の3つの事が上げられます。

1. 小麦粉の水和を行い、気泡を抜く。(第一熟成の意味)  
手打ち式製麺の基本的考え方は、「いかに しっかりした グルテン組織を作り上げるか」に集約されます。従って、本来の手打ちの製麺手法では 寝かせ(熟成)と共に 丹念な鍛えとして 足で踏んで 鍛えたり、麺棒で縦、横、斜め と丁寧に延ばしてゆきます。そして上手に作り上げられた麺の中のグルテン組織は、コンクリートの柱にたとえると、鉄筋の様になり、めんの食感に大きな影響を与えます。ところが、この様な 生麺のグルテン組織中に 小さな気泡が多く存在すると、その麺を茹でた時 下記の様な問題が発生します。
■加熱されたグルテンは卵の白身の様に固化し、弾力を失います。一方、その組織に包まれる様に存在した気泡は、熱の作用で何倍もの体積に膨張します。結果として、気泡の周りのグルテン組織を内側から押し広げる様な形で 破断してしまいます。従って、せっかく精魂込めて作り上げた手打ち式うどんの 食感を損なってしまいます。
■グルテンの組織が破壊される為、茹で延びにも少し、弱くなります。
■見た目に 麺は透明感がなく、白く不透明なうどんとなります。例えば透明なガラスの中に小さな気泡がたくさん入っていると、スリガラス状になり透明感が無くなってしまいます。うどんの場合も、麺の中に小さな気泡がたくさん入っていると、透明感が無くなってしまう訳です。
以上で述べた事は、「イカの刺し身の様な透明感の有るうどん」の全く逆となっている事にお気づきと思います。つまり、その気泡が抜けていると本来の透明感が出ます。そしてしっかり残ったグルテン組織が 良い食感を与えてくれる訳です。では、この様な 小さな気泡は どの時点で うどん生地の中に取り込まれるのでしょう。実は、小麦粉を捏ねる時、小麦粉1粒1粒の中に気泡が出来てしまいます。例えば、小麦粉1粒1粒に対して どの様に水が浸透して行くかを考えた場合、その1粒を水が覆い、中心に向かって浸透して行き、中心に気泡が取り残されてしまいます。ここで、生地を捏ねた直後にプレス(足で踏む、手で丸める等)を行った場合、生地の中に この気泡を封じ込める事になります。そうすると 前に述べた様なうどんになってしまいます。第一熟成を行う場合、必ず生地はそぼろ状のまま実施して下さい。足で踏んだり、手で丸めたりした状態では、この気泡は抜けません。そぼろ状のまま熟成を行う事により、毛細管現象や、浸透圧で小麦粉粒の中心まで水が浸透し、気泡を追い出してくれます。この後初めてプレスをおこないます。

電子顕微鏡でみるうどん生地
グルテンの網目状組織が形成されている状態

2.グルテンの緩和をはかる。(第一、第二熟成の意味)
ミキシングされたばかりの生地や、鍛えられたばかりの生地のグルテンは張り詰めた状態で、更に連続して力を加える(鍛える)と グルテンの組織はその力に耐え切れず 破壊、切断されてしまいます。必ず生地を休ませて グルテンの緊張緩和を図る事が大切です。つまり、生地は 鍛えては休め、鍛えては休め、が原則です。グルテンの性質は、チュウインガムの様な物と考えて下さい。チュウインガムを一気に引き延ばした場合、力に耐え切れず、グルテン組織は切れてしまいます。このミキシング、生地の鍛えかた、圧延の仕方は慎むべきです。あくまで 程よく鍛える事。チュウインガムを例に取れば、丸めたガムを引き伸ばす時、切れるまで引き伸ばすのでは無く、切れる直前に引き伸ばす事を止めて(鍛えを終えて)そのまま待っていると、最初は緊張していたチュウインガム(本来はグルテン組織)が緩んできます。この状態を待って、次の力を加えるとさらに上手く引き伸ばす事ができます。うどん生地の場合も一度力を加えた後、熟成時間を取る事で、緊張していたグルテンは緩和し、次の鍛え(組織の変形)に耐えられる様になるわけです。余談として付け加えると、一般的には 『うどんは鍛えれば鍛えるほど 腰が強くなる』と思われがちですが、正確には、『程よく鍛えて、しっかり休ませ、グルテンが緩んだ後、次の加工に掛かる』のが良いわけです。この辺の認識の差が麺作りに大きな誤解を生んでいます。

電子顕微鏡でみるうどん生地
グルテンの網目状組織が形成されていない状態

コラム ● うどん生地を足で踏む。
うどん生地を足で踏んで鍛える場合は小麦粉1kg当たり1〜1.5分で充分です。この間に折り畳みを2回 実施します。これ以上の鍛えは、生地に悪影響を及ぼす事は 想像して頂けると思います。
粉5kg分(=7.5kgの生地)で有れば、5分で良いわけですから、5分=300秒
先ず、100秒間踏む。→左右折りたたみ→100秒間踏む。→前後折りたたみ→100秒間踏む。これ以上踏むのはかえって、生地を傷めます。このあたりも手打ちの職人さんが「うどんは鍛えれば鍛えるほど腰か強くなる」と思われ、無駄な労力をかけ、しかも、かえって生地を悪くしている例をよく見掛けます。あくまで当社のおすすめで 生地を悪くしている例をよく見かけるというお話しでした。
 
機械(製麺機)を使用して生地を圧延する場合は、ロール段数を2段飛ばし等せず、1段づつ丁寧に延ばすのが手打ち式の良いうどんを製造するコツと言えます。本来の手打ちの場合は人の体重、体力で延ばしますから、生地に無理な力はかかりません。従って理想的なグルテン組織が出来上がる訳ですが、機械を使用した場合は、幾らでも無理が利く処に問題があります。極力ソフトに、ソフトに1段づつ丁寧に縦、横、縦、横 と生地を延ばすのが 手打ち式製麺機を上手に使うコツと考えて下さい。
鍛えかたが悪い場合の問題点
■ ミキシング時間が長すぎると、茹で時間が長くなります。ミキシングは5分程度に。
■ 鍛え方を間違えると、硬さばかりが目立ち、粘りに乏しいうどんになります。
3. 酵素の働きを待つ。(主に、第二熟成の意味)
小麦粉の原料である小麦は 元来植物の種子ですから、これが発芽するエネルギー源として 澱粉、蛋白質をその中に貯えています。この澱粉、蛋白質を酵素で分解してエネルギーとして発芽をする訳ですが、小麦粉の中にも この酵素が含まれています。この酵素が 程よく働くと、良い状態のうどん生地となります。古くから、製麺をされている方は、よくお判かりと思いますが、年間で 一番良いうどんが出来る時期は 春、秋と言われます。つまり 春、秋の気温が、「酵素の働き」に一番適しているのです。 夏は 酵素が働きすぎて 生地がダレた状態になります。夏場の暑い時期に 生地がダレやすいのは酵素の働きが活発になる為です。極端な例をあげれば、酵素が蛋白質(グルテン)を分解し、麺が切れ易くなります。熟成をしすぎた時に見られる「茹で切れ」は この様な現象のあらわれです。
これから夏に向け注意が必要です。
逆に冬場、生地が熟成しにくいのは 温度が低くて 酵素の働きが悪くなる為です。
酵素の作用は温度に左右される為、製麺にも適した季節がある訳です。年間安定して、高品質のうどんを生産しようと思った場合、温度をコントロールすれば 熟成の進行もコントロール出来る事になります。この様に年間均一で 高品質の(春、秋と同じ)生地熟成をさせる為 当社の熟成庫「寝太郎」のような機器が必要となるのです。
また、熟成庫の使用により、お店の運営に合わせた熟成の進行が可能になります。例えば18℃で熟成を行う場合、一晩熟成としますし、16℃で熟成を行う場合、二晩熟成とします。

熟成庫 『寝太郎』
RR-17B 1袋用

ところで、昔から製麺をおこなって来た 職人さん達の中に、「うどんは 昔から朝練りをしていた。前日練りをして 一晩寝かす必要は無い。」と言う方がおられます。しかし、ここにも 一つ 落とし穴が有るのです。それは、今と昔では、小麦粉の状態が違う と言う部分です。昔は、食糧事情や製粉技術の関係で、小麦は ほぼ全粒粉に近い 状態に製粉されていました。この様な小麦粉は、酵素含有量が多く、熟成が 早く進行します。これは、小麦の中でも、表皮に近い部分に酵素が多く含まれ、これを全粒粉に近い状態まで製粉する為、小麦粉に含まれた酵素含有量が多くなっていたのです。そして、出来上がるうどんは 色も黒めとなりました。ところが、現在では 「うどんは白いもの」という概念から 色の白いうどんが出来る様な製粉方法、つまり 小麦中心の色の白い部分だけを 上手に挽き取った小麦粉が製造される様になりました。この様な場合、酵素の多い部分は フスマと一緒に選り分けられてしまうので、現在の小麦粉は 酵素濃度の少ない小麦粉となつているのです。従って 昔と同じ熟成時間では 充分な熟成に至らず、もっと時間をかけて じっくり寝かせておく必要がある訳です。
コラム ● 塩の効果
■酵素の働きを調整
食塩には酵素の活性を阻害する作用があります。特に蛋白質分解酵素を抑制する効果が有り、この点でも、気温が高い場合は塩分を多くして生地のダレを防ぐ様にします。→夏は塩度を高めに、冬は塩度を低めにするのはこの為でもあります。
■蛋白質の変性効果
グルテンが引き締められ、グルテン組織が強力になり、製麺性を良くし、麺としての食感を改善します。ただしグルテンの緩和は多少遅くなります。従って、夏場は気温が高く、生地がダレやすくなりますので、塩分を多くし、生地を引き締めます。逆に冬場は気温が低い為、生地は硬くなり易いので塩分を少なくして、生地が しまり過ぎないようにします。
■茹で時間の短縮効果
適度に加えられた塩は 茹でる時に、浸透圧の差を発生させ、茹で水が麺線の中に浸透するのを促進します。従って麺がふっくらと茹で上がります。練り水に塩を使用しないと、茹で麺は芯が固くなり、茹で上がりも遅くなります。いわば 団子状の食感の 麺になってしまいます。
■対比効果として麺に旨みを出す。
茹で後、麺に若干残った塩分は、旨みとして感じられます。しかし、塩分の残り過ぎはいけません。茹で上げた麺が辛く感じる場合によく有りがちなのは茹で釜の湯の交換不良です。目安として、茹でる生うどんの5〜7倍の差し水を行い、オーバーフローさせてやります。
 
 
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