さて、木曜は、金曜、土曜で使うスープベースを炊く日です。何時もたくさんの寸胴に囲まれてスープを作るので、今月のように暑い日は本当に大変です。「夏に来るもんじゃない。」と、弱音も聞こえてきながらも、せわしなくスープどりは続いていきます。今回は博多とんこつを希望される生徒さんが多いと言うことで、いつもよりも多めに博多のスープをとりました。その他にも、いつものスープに加えて、牛すじのスープもとりました。毎回どんなスープを取るかは要望に合わせて当然変わっていくんです。
そしてこの日も、順調にスープは炊き上がっていくかのように見えました。
しかし。
何時もにこにこと優しい講師の顔が、博多のスープの臭いをかいで険しくなります。スープの味見をして、一言。「焦げてますね。」そう、順調にいっていたかと思っていた博多スープは、底で焦げ付いてしまっていました。慌てて火を止めても時すでに遅し。嗅ぎ違えることもない焦げの臭いと味で、スープが台無しになってしまっていたのです。
慌てて何時もお願いしているお肉屋さんに連絡を取りましたが、「ちょっと豚の頭は明日お届けは難しいですね……。」と言う言葉が返ってきてしまいました。こればかりはどうお願いしてもどうにもなりません。焦げ付いたスープを捨てるため、ひとまず漉しながら、担当していた生徒さんは、暗い顔で「悔しいな……。」と呟きます。香川県のどのつてをあたっても、豚の頭は置いていないと断られます。たまたま今日から参加していた生徒さんがお肉屋さんにつてがあり、そこにも連絡をとっていただいたのですが、結局首を振られてしまったとのこと。
もう、駄目なんだろうか。博多スープを希望していた生徒さんは、このスープが出来上がらない事にはどうしようもありません。折角香川まで来て頂いたのに、自分の希望のスープが出来ないなんて……。と、暗い気持ちで皆が諦めかけていたその時、松原講師が電話を取り出し、どこかに連絡し始めました。電話は暫く続き、電話を終えた松原講師は、頼もしい讃岐弁でこういいました。「まだ連絡待ちやけど、いけそうやで。」でも、もう知っているお肉屋さんは全員断られてしまったはずなのに。一体誰に連絡したのか聞いてみると、「福岡営業所の岩坂さん。」と、九州の営業担当の名前が出てきました。そう、講師が連絡を取っていたのは、香川ではなく、博多ラーメンの本場九州だったのです。流石に今日は無理でしたが、明日の朝一番に届けるように手配してくれたのです。これで博多ラーメンはなんとかなりそうです。結局この日博多スープが完成する事はありませんでしたが、松原講師の機転と、福岡営業所の岩坂さんの素早い行動で、どうにか明日スープを完成させることができそうです。
そして次の日。豚の頭が届くとすぐに、博多スープどりが再開されました。2回目ともなると、担当していた生徒さんも手際よく灰汁をとり、濃度を測り、と、忙しく動いていました。いつも以上に慎重に作り上げられた博多スープ。無事濃度が達成した時の喜びもまた、何時も以上でした。漉すのも大変な博多スープですが、生徒さんのほっとした顔が印象的な4日目でした。味も、「何時もより美味しいな。」と、講師も褒めるほどのスープの出来。
全ては良いスープを作って帰ってもらいたいという講師とスタッフと生徒さんの心があってなせる事。松原講師から無事完成したスープの話を聞いた営業の岩坂も、わが事のように喜んでいました。 |